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救い主達が静かにやって来る  作者: 五島伊織庵
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第六話 カルマ 三

 朝を迎え、体力を回復した三人は老人に礼を述べてから森を抜けると、再び荒野に出た。メキシコ国境へはあと少しとなり、三人ははやる心を抑えて警戒しながら走っていた。

 昼を過ぎてから山道に入り、草木が生い茂る中を進んだ。

 ライアンとリアにも気を配りながら、ヘススは草むらを見回している。何処かにアウト・ローやインディアンに、化け物が潜んでいるかも知れない。一瞬たりとも、気を抜けない。

 更に進んで行った時だった。

 三人の目の前に、木の枝がトンネルみたいになっている道が現れたのだ。

「何でここに、こうした道があるんだ?」

 ライアンが怪しみながらその道を見る。

「だけど、意外と隠れられる所に行けるかも知れないわよ?」

 リアが自身の勘で答えると、ヘススも彼女の言っている事に可能性を見出し、

「よし、行ってみよう」

 三人はトンネルの中へと入っていったのである。半分は人間の本能にもよるものだった。

 薄暗い中を慎重に進み、何か出てきやしないかという不安と緊張とが三人を襲う。そうなるほど、不気味だったのだ。

 やがて出口へと差し掛かり、外へ出た三人が見たのは、かなり広くひなびた村だった。馬を進めながら周りを見回すも、人の姿はない。生活感はあるものの、人がいるのかどうかさえも判らない。

 例えようのない不気味さにゾッとする三人に異変が起こったのはこの時で、突如、後ろから誰かが叫ぶ声がした。

「我らの聖域に立ち入るのは誰だ?」

 三人が反射的に後ろを振り向いたら、一人の男がマチェットという大型のなたの一種を手に仁王立ちになっている。

「村の人か? なら、ちょっと助けて欲しいんだ」

 ヘススが答えると、同じくマチェットや刃物で武装した男性や女性が続々と現れ、如何にも敵意に満ちた目で三人を睨み付けている。

「あいつら、どう見てもおかしいぞ?」

 ライアンが異常なる気を察し、

「聖域って、何の事なのよ?」

 リアも向こうの言葉の意味が解らない。

 そうしている間にも、相手は少しずつ迫ってきている。

「待て! 俺達は怪しい奴じゃない! 少しでいいから、物資を分けて欲しいだけなんだ」

 改めてヘススが叫ぶものの、向こうは聞こうともせず、どんどん近づいて来る!

「奴らは本気だ! こうなったら、こっちから迎撃するぞ!」

 ライアンが馬から降りて銃を抜くのに続き、ヘススとリアも飛び降りて銃を構えた。

 すると、向こうの群衆から一人のローブを着た男性が現れ、

「遂にこの村を見つけてしまったな。迷い込んで助かった者は一人もいない。お前達もその一人になるのだ」

 不気味に笑いながら手を振って合図し、群衆が一気に駆け出す。

 五十人はいるであろう男女が襲い掛かって来るのに対し、三人は銃を撃って対抗する。但し、狙っているのは人ではなく、向こうが振り上げているマチェット等の刃物である。

 武器を折られたり弾き飛ばされたりした男女はそのまま立ち止まり、他の群衆も思わず後退する。

「何をしているのか! さっさと奴らを殺ってしまえ!」

 ローブの男が諫めるも、群衆はマチェットを狙えるほどの手練れたる三人に恐れをなし、そこから進もうとしない。

 見かねたローブの男性が何やら呪文を唱えると、瞬きの間に化け物共が出現し、群衆をなぎ倒しながら三人目がけて走ってきた。

 三人も撃ち返すが、敵の数が多過ぎてとてもではないが対処出来ない。

 そこで、ローブの男を狙えないかと思い、ヘススとライアンは荷物の中からピースメーカーの7・5インチとダブルアクション・フロンティアの7-1/2インチを急いで取り出し、リアが化け物を始末している間に二人はローブの男を狙い、当たってくれと願いつつトリガーを絞る。

 ほぼ同時に放たれた二発は化け物の間を飛び抜け、二発は見事、ローブの男に命中。男は血まみれとなって倒れ、その直後に化け物共も煙となって消え失せた。残された群衆はローブの男の遺体にすがり、号泣した後、隠していたナイフで次々と自殺したのであった。

 生々しい光景を目にした三人は思わず顔を背けそうになり、気分も悪くなってしまう。

 その時である。

 村の家々から一人、また一人と村人達が出て来て、いつの間にか大勢の人々で埋め尽くされ、彼らは三人をまるで助け人が来たと言わんばかりので見て、

「あんた達こそが、わしらがずっと待ち望んでいた人達じゃ!」

 一人の老人が声を上げたのである。

 

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