# 第五話 魔王、会いに行く
# 第五話 魔王、会いに行く
夜。
空には満月が浮かんでいた。
リリアたちは村を出て、次の街へ向かっていた。
焚き火を囲みながら夕食を取る。
久しぶりに穏やかな時間だった。
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「勇者様!」
ミアが肉串を差し出す。
「これ美味しいです!」
「ありがとう」
リリアは笑った。
最近、少しずつ自信がついてきた。
戦う力は弱い。
でも。
自分にも誰かを救える力がある。
そう思えるようになったからだ。
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その時だった。
突然。
空気が変わった。
冷たい風。
静まり返る森。
虫の声すら消える。
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ガルドが立ち上がった。
「来るぞ」
レオンも杖を握る。
バルトが剣を抜く。
シグはすでに姿を消していた。
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そして。
闇の中から一人の男が現れる。
黒い髪。
黒い外套。
整った顔立ち。
年齢は二十代前半ほど。
どこか寂しそうな赤い瞳。
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男は静かに言った。
「久しぶりだな」
リリアは首を傾げる。
「え?」
知らない人だった。
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しかし。
護衛隊は違った。
全員の顔色が変わる。
ガルドが震える声で言う。
「魔王……」
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空気が凍った。
ミアは青ざめる。
リリアも固まった。
目の前の青年。
彼こそ世界最強の存在。
魔王だった。
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だが。
魔王は攻撃しない。
座った。
勝手に焚き火の前に。
「少し話がしたい」
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「帰れぇぇぇ!!」
護衛隊全員が叫んだ。
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魔王は困った顔をした。
「そんなに嫌がらなくても」
「当然です!!」
ガルドが激怒する。
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だが。
リリアは気付いた。
この魔王。
殺気がない。
敵意もない。
どこか不思議な雰囲気だった。
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「何の用?」
リリアが聞く。
魔王は少し黙った。
そして。
静かに言った。
「確認したかった」
「何を?」
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魔王は真っ直ぐリリアを見る。
その瞳には懐かしさがあった。
まるで昔から知っている人を見るような。
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「君が」
小さく呟く。
「本当にあの人の生まれ変わりなのか」
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リリアは意味が分からなかった。
「あの人?」
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魔王は空を見上げた。
満月が照らしている。
その表情はどこか悲しい。
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「千年前」
魔王は語り始めた。
「世界を救った勇者がいた」
リリアも知っている。
伝説の初代勇者。
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「私は彼女を愛していた」
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全員が固まった。
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「え?」
リリア。
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「は?」
ガルド。
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「はぁ!?」
ミア。
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「は?」
護衛隊全員。
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魔王は平然としている。
「愛していた」
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「えええええええええ!?」
森中に叫び声が響いた。
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千年前。
人間と魔族は戦争をしていた。
魔王だった彼と。
勇者だった彼女。
本来なら敵同士。
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しかし。
戦いの中で互いを知り。
やがて惹かれ合った。
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「だが」
魔王は拳を握る。
「彼女は世界を守るために命を使った」
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誰も言葉を出せなかった。
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「最後に約束したんだ」
魔王は微笑む。
「もしまた会えたら」
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その時。
リリアの勇者の証が光った。
眩しい金色。
今までで一番強い光。
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魔王の目が揺れる。
驚き。
喜び。
悲しみ。
様々な感情が混ざっていた。
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そして。
リリアの頭の中に映像が流れ込んだ。
知らない景色。
知らない少女。
白銀の髪。
勇者の剣。
そして――
涙を流しながら微笑む初代勇者。
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『ごめんね』
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その声が聞こえた瞬間。
リリアの頬を涙が流れた。
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「なんで……」
自分でも分からない。
初めて見るはずなのに。
胸が苦しい。
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魔王は優しく言った。
「やはり君なんだな」
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そして。
リリアは知らなかった。
この出会いが。
勇者と魔王。
世界の運命。
その全てを大きく変える始まりだったことを――。
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## 次回予告
**第六話 「千年前の恋」**
初代勇者と魔王の過去が明らかに!
なぜ二人は愛し合ったのか?
なぜ別れなければならなかったのか?
そしてリリアの中で目覚め始める記憶とは――。
笑いと涙の物語が大きく動き出す!




