晴海音凪②
※音凪 小学生
「Aちゃん、その髪かわいい〜!」
「いいでしょ? ママがやってくれたの! あっ」
Aは隣の席に座る音凪を見て、にんまり笑った。
「ごっめーん! 晴海さんの前でママの話ししちゃった」
音凪はそっと振り向いた。
「晴海さん、かわいそ〜」
「わざとじゃないって。かわいくしてもらったから、つい言っちゃっただけ」
にやけた顔で話すふたりを、きょとんと見つめる音凪。
「あ……」
高い位置で結ばれたAの団子を連ねたようなツインテールに気づいて、音凪は声を漏らした。
「ほら、かわいいでしょ? ママにしてもらった髪型」
「Aちゃん、またママって言ってるよ〜」
「あっ、ごめーん!」
くすくす笑うAをじっと見つめ、音凪はゆっくりと口を開いた。
「うん。イモムシみたいでかわいいね」
にこにこと、悪びれなく放った音凪の一言。
辺りの空気が一瞬で凍りついた。
三人の様子を見ていた他の子たちも、あり得ないものを見る目で音凪を見ている。
「い……イモムシ?」
「うん。ぷくぷくして、かわいい」
一切の迷いもなく頷いた音凪に、Aの口がひくひくと引き攣った。
「イモムシと同じ黄緑のリボン、すごく似合ってる」
極めつけの一言に、Aの顔が真っ赤に染まった。
「ほんとアンタ嫌い!!」
「!?」
Aはリボンを解きながら、廊下へと飛び出した。
「あっ! Aちゃん待ってよー!」
すぐにBも、Aの後を追って教室を飛び出していった。
「……」
音凪はふたりの後ろ姿を呆然と眺めながら、ぽつり。
「イモムシ、かわいいのに……」
(きらいって、言われちゃった)
しょんぼりと、肩を落とした。




