ねな
※音凪と透真 小学生
桜が散り、暑い日が増えはじめた頃。
小学校にある図書館に、
1年2組の担当教諭と生徒たちが集まっていた。
「このように、学校図書館で本を借りるときは……」
音凪は担当教諭の話を聞きながら、手元を見つめた。
(……このえほん、はやく見たいな)
音凪は両手で持つ一冊の絵本を、ぎゅっと胸に抱えた。
***
学校が終わり養護施設に帰ってきたあと、共有部屋で宿題をしていた音凪。
音凪は最後の一文字を書き終えると、ひらがなでいっぱいになったノートをじっと見つめた。
にこっ。
(しゅくだい、おわった)
これで絵本が読めると、
テーブルの上に広げていたノートや文房具をサッと片付け、手に抱えて立ち上がった。その時、
「音凪ー」
自身の部屋に戻ろうとした音凪を、透真が呼び止めた。
音凪は一拍遅れて、振り向いた。
「……透真、どうしたの?」
「しゅくだい終わったんだろ? 外であそぼー」
満面の笑みで誘う透真に、音凪は困った顔をした。
「わたし、えほんよみたい」
「えほん?」
透真は首を傾げた。
「晴れてるし、かけっこしようよ」
ここ数日、雨が続いていた。
ようやく晴れた今日、
透真は音凪と外で遊びたいと思っていた。
しかし——
「……」
音凪の口が、尖った。
瞬間、透真は目を見開いた。
「あっ……」
(やっちゃった)
咄嗟に透真は謝ろうとしたが、
自分の過ちに気づくのが少し遅かった。
「……ねなは、えほんよむんだもん」
ぱたぱたぱたっ!
音凪はそれだけ言って、
自分の部屋へと駆けて行った。
(音凪をおこらせちゃった……)
透真はすでに見えなくなった音凪の姿を見つめて、大きく肩を落とした。




