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第38話 いつか必ず一緒に


 クリスマスの夜。

 ケーキを食べ終え、シャンメリーの泡が静かに消えていったあと、部屋には穏やかな静けさが訪れていた。

 窓の外では冬の風が木々を揺らし、街のイルミネーションの灯りが遠くに瞬いている。

 時折、近所の子どもたちのはしゃぐ声が聞こえ、どこかの教会から微かに鐘の音が流れてきた。


 僕と美玲さんはソファに寄り添い、自然と手を重ね合わせていた。

 彼女の指先は少し冷えていたけれど、その冷たささえ愛おしく思えた。

 指を絡めると、彼女が小さく微笑む。

 その笑顔に、胸が熱くなった。



「……あなたと過ごせて、ほんとに幸せ」

 美玲さんがぽつりと呟いた。

「でも、こうして一緒にいられるのは限られた時間だけ。舞台に戻れば、また会えない日が続く」


 その言葉に、胸が締めつけられる。

 僕は理解しているはずだった。

 彼女は花組の娘役トップ候補として、多忙を極める日々を生きている。

 それでも、やはり寂しさに心が揺れてしまう。


「……僕は、待つしかできないから」

 思わず本音が漏れる。

「でも、いつか……堂々と隣にいられる日が来たらいいなって」


 その一言に、彼女はゆっくりと顔を上げた。

 瞳は真剣で、舞台で見せるどんな演技よりも強い光を宿していた。



「……必ず来るわ」

「え……?」

「いつか必ず、一緒にいられる日が来る。私はそう信じてる。だから、あなたも信じて」


 彼女の言葉は、静かな夜に深く響いた。

 僕の不安や迷いを打ち消すように、真っ直ぐで力強い。


「舞台は私にとって生きる場所。でも、それと同じくらい……あなたも大事。どちらかなんて選べない。だから、未来で必ず、ふたつを結びつける」


 その決意の言葉に、胸が震えた。

 彼女はタカラジェンヌとしての誇りを抱きながら、ひとりの女性として僕を想っている。

 その矛盾を抱えたまま、必死に生きている姿が、何よりも愛おしかった。



 僕は堪えきれず、彼女の手を強く握り返した。

「……信じます。美玲さんの言葉を」

「うん……ありがとう」


 静寂の中で、彼女がゆっくりと顔を寄せる。

 触れ合った唇は、誓いを閉じ込めるかのように甘く、熱を帯びていた。

 長く、深い口付け。

 吐息が混じり合い、心臓の鼓動がひとつになるような感覚。


 唇を離したあと、彼女は小さく囁いた。

「……必ずね」


 ――クリスマスの夜。

 「いつか必ず一緒に」。

 その言葉は僕の胸に深く刻まれ、未来を信じる灯火となった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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