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魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。  作者: iBuKi


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25/25

第25話 プレ夜会開始。

 大国であるインフェリア皇国が運営している皇立学園で毎年開催される“プレ夜会”の正式名称は“プレリュード夜会”である。

「前奏曲、導入部、序章」などに使用されるプレリュードから名付けられていて、あくまで学園卒業後の本格的な夜会に出る前のリハーサルみたいなものだ。

 とはいえ、皇国がガッツリ運営しているので、並の貴族主催の夜会よりは使用される調度品や食器やグラス類、提供される食べ物に至るまで豪華絢爛で本格的であり、かなりの開催費用を使用しているのが分かる。

 このクラスの夜会を一年に一度開催出来る学園に在籍していることも、ステータスであるのだ。


 プレ夜会に使用される大広間はシャンデリアの光が煌めき壮麗な会場にはドレスコードに則った装いを守りつつ、それぞれ家門の個性を出した正装を身に纏った生徒たちで溢れかえっている。

 生徒たちの談笑する声、時折盛り上がりを知らせるようにワッとした歓声がアチラコチラであがっていた。


 豪奢な装飾、楽隊の軽やかな旋律、香り高い果実酒に似せた果実水。

 爵位も年次も交ざり合うその場は、狙いを隠すにはうってつけの喧騒だった。


 麗しい美少年、または美青年に仕立てた魔法師団五人の面々は、整った外見とさりげない振る舞いで人波に溶け込んでいるようでいて目立つ。

 所作は勿論見目に関することの何もかもがプロデュースされた五人を見つめる令嬢たちの視線は熱が籠もっており、素材は良くてもここまで徹底的に磨いた記憶がない五人は特段モテの人生を歩んできた訳ではない。

 子爵令嬢という推定悪人を相手にするという任務さえなければ、五人だってお近づきになりたい令嬢を探したいところだ。

 だが本日は「麗しい男」を演じ子爵令嬢に特別傍に寄らせたいと思わせなければならない。しかも、五人全員で。

 というわけで、今は何が何でも本来の自分を忘れ、女が夢見る男を演じる時である。

 まずはこのプレ夜会の会場で「どの令嬢からも熱視線を受ける男」として目立ち、子爵令嬢に見つけて貰わねば。


 カイはバリトンの優しい声で令嬢たちに気さくに話しかけ、ユクスは淑やかに手を差し伸べ甘い笑みを浮かべる。

 他三人、アルベルト、マックス、ロイドも劇団員仕込みの華やかな笑みを浮かべた。


 彼らの胸元には、クロードが命じて用意させた「魅了耐性強化の装身具」が見えないように自然に隠されている。


 クロードは客席の群れから全体を見渡しながら、この会場のどの令息よりも美しい端正な面持ちで様子を追う。

 マルセルは彼の隣で報告のやり取りを控え、影の者たちが学園の周囲を静かに固めている。


「五人で囲むには一度に全員では目立つ。彼女が気に入りそうな順番に一人ずつ接触させろ。外への離席を促す流れは――」


 禁忌ではあるが魅了の魔道具があるように、この世界には市民の生活や国家の運営に至るまで便利な魔道具が開発されている。

 時には武器開発にも使用されるが、大量殺傷能力が高すぎるものは世界協定で制限されている。

 情報戦においては盗聴魔道具や通信の傍受に長けた魔道具も使用されているので、それを防ぐための防衛の魔道具も発展している。

 現在、通信系の魔道具をそれぞれ五人に配られており、それはイヤーカフスとして耳を飾るものと、袖にあるカフスボタンで通信による遣り取りの対応がされていた。


 クロードの指示は小声だが明確だった。

 ――計画は単純だ。

 クシャナ子爵令嬢を誘導して興味を持たせる。一人ずつ好みの男を近づかせ、最終的には五人が子爵令嬢に侍る。

 学園の大広間であるため、通常の夜会のように「休憩室」や「待機室」なるものは存在しない。

 送迎をさせて欲しいと乞い、外へと連れ出すこと。

 連れて行く高級宿の最上フロアをすべて押さえているから、その宿に連れていって暴くのも、子爵令嬢が馬車で盛るようであれば、馬車内で済ませてもいい。

 装身具の有無を確かめ、可能なら奪取する。

 成功率は外への誘導次第だ。

 五人以外に子爵令嬢に侍っている男たちは少しずつ間引くつもりだが、そいつらが誘導前に戻ってきた場合は難しくなる。

 最終的には影達を使って全員で外に出たところで邪魔な男たちを昏倒させるか。


 夜会の中央、クシャナ子爵令嬢は婀娜っぽい笑みを浮かべながら群れの中心にいる。隣の令息に品垂れ掛かる姿は、令嬢というよりも男を転がすことに長けた娼婦のようだ。

 それも、高級娼婦のような品も学も洗練された立ち居振る舞いもない、ただ男に身体を開き金銭を要求することが仕事の娼婦のほうである。


 そんな分かりやすい下品な色香に惑わされた若者たちが寄り添っており、その人数からも彼女の存在感は確かに危険なほど強い。


 クロードは吐息一つ漏らさず、表向きは優雅な佇まいで見守っていた。

 サフィリーンは少し遅れての入場ということもあって、今のところ美しく優秀な皇太子の仮面は外れていない。


「サフィが到着するまでに片付けたいが、成功させるには慎重に行動しないとな」

 小声で囁かれた声は全員の通信に乗って、それを訊かされた五人とマルセルと影たちはピリピリした緊張感を忘れそうになる。

 どんな場であってもサフィを忘れないクロードらしい独り言まで強制的に訊かされながら、美しい男を演じるのだった。


誤字脱字報告有難うございます。


ご覧頂きましてありがとうございました。

ストック溜まるまではということでしたが、書けたので投稿。

もしかしたらちょこちょこ修正するかもです。すみませんm(_ _)m

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