第7話 俺様の誘拐事件と白猫の価値
銀色のリングを転がして飛びつく。
今日は夜ごはんを食べた後で、リングを転がして遊んでいるのだ。ハンターギルドのホールにはまだ何人か臭い人達が居て酒を飲んでいる。時々邪魔をしてくる臭い人のズボンに飛びついて爪を研いでやるのだ。今日も臭いぞこのやろう。
さてと、準備運動も終わったし、今日はネズミ退治に行くのだ。
リングをポイッと収納に入れたら、ハンターギルドを出てギヨム商会の倉庫までお散歩なのだ。
今夜は、曇り空で月明かりもないけれど、俺様達は夜でもよく見えるのだ。だから、通りを歩いている臭い人も屋根の上からはっきり見えているのだ。隠れているつもりなのか?
それから、倉庫でネズミ狩をしたけれど、今日は一匹だけしか狩れなかったのだ。最近ちょっと数が減ってきたかもな。朝になって店の入口にネズミを置いたらネズミ狩り終了なのだ。
すんすんすん、臭いニオイがするな。臭い人はまだ居るのか?
帰り道で、また今日も「チっ チっ チっ」のおじさん達が居た。さて今日は何をくれるのかな?
今日はお肉かぁ。美味しいお肉だから許してやるのだ。いつものように、さっと咥えてパッと逃げる。
あれ? 今日は追いかけてくるぞ? 面倒だから臭い人に押し付けるのだ。通りの角を曲がって臭い人の肩に飛び乗る。今日は背中の荷物が無いからな、ちょっと臭いけど肩でガマンだ。
「よぉ、みーちゃん偶然だな」
ふふん、こんな所に隠れても臭いから無駄なのだ。
「で、あいつらは何もんだ?」
臭い人が「チっ チっ チっ」のおじさん達を見ながら聞いてきた。けど、俺様も知らないのだから無視。
「おい、おまえら、どこのモンだ? ハンターに喧嘩売ろうってか?」
「チっ チっ チっ」のおじさん達は、臭い人がちょっと睨むと逃げていった。臭い人は、まあまあ強いから当然だな。
でも、もうごはんくれないかもしれない。そう考えると、ちょっと腹が立ってきたから、臭い人の頭を猫パンチしておいた。
「イッてえ!! みーちゃん、なんでオレを叩く?!」
ふーんだ、ごはん返せ! さっさと帰るから歩くのだ!
今日の帰り道は臭い人の肩に乗って、楽ちんで帰って来たのだ。
「おかえり、みーちゃん。ガイルさん、どうでした?」
茶色の女の人が、ちょっと心配そうに出迎えてくれた。
「ああ、盗んじゃいねえ。ただ、妙な連中が居てな。エサで釣って みーちゃんを捕まえようとしてやがった」
「誘拐?! みーちゃんを狙って?」
「みたいだな。でもまあ今までも失敗してたんだろうよ。なんせ、みーちゃんを捕まえられるのは、あんたしか居ないからな」
俺様は、受付の机の上でお肉をもぐもぐ食べる。茶色の女の人と臭い人が心配そうに見ているけれど、俺様何かしたっけ?
「みーちゃん、しばらくネズミ退治は行っちゃダメ。ギヨムさんには連絡しておくから」
なんだなんだ? 人はいつも俺様達の遊びを邪魔するんだな。「フゥーゥ」と抗議の声をあげる。
「怒ってもダメです。危ないから禁止です」
「しかし、所属ハンターを誘拐されそうになったとなると、ギルドとしてはどうなんだ?」
「もちろん、事案として対処します! ギルマスにねじ込んで来ますから!!」
茶色の女の人が足早に2階へ上がっていった。
◇◇◇◇◇◇
次の日の午後、俺様が受付の机で昼寝をしていると商人さんがやって来た。
「こんにちは、お嬢さん。ヌコ様が厄介事に巻き込まれたそうですね」
「ギヨムさん、お越し頂いて有難うございます。みーちゃんが狙われているようでして」
「ネズミ退治の件は了解しました。そういう事情ですからね。
ふーむ、ヌコ様を狙うとしたら、動物商か、それとも、商人でしょうか。白いヌコは貴重ですが、商人でない人にはただのヌコです。
しかし、誘拐までしますかね? 金を出せば買えますし。相場で金貨10枚程度かと」
「つまり、目の前に金貨10枚が寝転んでいると?」
茶色の女の人と目が合ったので、小さくあくびをしておいた。ちょっと退屈って事だ。
「そう見る人も居るでしょうね。しかし、西の商人は、ヌコ様を無理に手に入れたりしませんし、ハンターに喧嘩を売る動物商は考えられません。
ですので東の商人でしょうか。やつらは白ヌコ様をアイテムのように考えてますからね。
しかし、そこまでして手に入れるとは・・・・・・」
「そうなんですね。この町で東の商人というと・・・・・・ワラント商会、ステハン商会、エヌロク商会と言ったところですか」
「さすがお嬢さん、把握してらっしゃる。悪評が高いのはワラントですが、他の商会も裏ではね。まあ、私も人のことは・・・・・・ですが」
「ふふ、ギヨム商会とは良い関係でありたいと思っていますよ?」
「もちろん! ヌコ様と敵対するなんてあり得ませんよ。ああ、ハンターの方々もです、もちろん。
なにせ、ヌコ様がネズミ退治してくれるだけで、売上が少し伸びたのですよ。少しだけですけど」
俺様には退屈な話で、ちょっとうるさくなってきたのだ。
商人さんをちょっと見て、シッポの先で小さくフリフリ。
「おっと、これはお邪魔でしたかね。では、お嬢さん、私の方でも調べてみますよ。
ヌコ様、また来ますね」
商人さんが帰った後で、茶色の女の人が俺様の頭をそっと撫でた。
「金貨10枚かあ、みーちゃんは大変ね」
ちょっと溜息。それから紙にペンを動かし始めたから、前足でちょいちょいして邪魔してやった。
「みーちゃん、ちょうどいいわ。ここに肉球スタンプを押してもらおうかしら」
そう言って、俺様の前足をちょいと摘むと、インクを付けて紙に押し付けた。
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