第四章 ワナビが嘆きのカルミア
※窓枠曲壁というのは、ほしよみの前のペンネームです。
最終章、はじまります。訴えられたら……どうしよう
パクリ成分がさらに加速していきます
「はぁああぁあ!? パザマパーチー? 俺らが完徹仕事してる最中にそんな甘ったるい……うらやま……ゲフゲフ、いやけしからん! ナメてんのか! うらやましい!」
結局うらやましいんじゃねえか! もう本音隠すなよオッサン!
僕らは紅い月のもと、真っ赤っかになった東京都心24時を駆け抜け、犯人を追っていた主任と合流する。
で、合流したらしたで、お互いの状況を説明したら、これである。咆哮されてしまった。まあ気持ちはわかる。美少女二人に囲まれ、桃源郷なルームに、ワナビ小僧ひとり。さぞうらやましかろう。
「ほんわか美少女と、美少女博士と、ショタ美少年作家のパーチーだと? ドリームクラブ、もといドリームランドじゃねえか、俺も混ぜろ!」
誰がピュアキャバ嬢やねん。ていうか僕まで対象か。嫉妬の対象でないだけマシ……なのか?
「なんなのこの中年」
「すいません、私の上司なんです……」
「昨今の編集者のキャラ立ちは相当なものがあるけれど、こうも己の欲望を隠さないタイプははじめて見るわ……こちらが、火野編集長、ね」
琴さんが、身内の恥を弁明するかの如く、オルフェに説明する。
「主任、と呼べ、黒井オルフェ……あるいは、第一階梯『メインプログラマ』」
「そっちは現在凍結中よ。現在は塔乃森佑付きの絵師」
「そう呼んでほしかったら、俺のことも主任と呼べ」
「なかなかに、愉快な人間ね」
どうやらオルフェも、このおっかない編集長にビビらない類の人種であるからして。まあオルフェが誰かにビビるとこ、見たことないけど……(だからこそさっきの涙なみだの慟哭に僕は超ビビった)。
「まあともかく、チーム・バ●カービル、全員集結、か」
「確かにウチらはチームだが、緋●のアリア的武偵チームじゃねえ」
どうにも聞き逃せなかったのでつっこむ。
「カーッ、何だお前等、まだチーム名決めてなかったのか!? 中二命名の一大イベントじゃねえか」
なんでそこまで幻滅されにゃならんのだ……とはいいつつも、確かにある程度納得はできる。ア●アをパクるのはともかくとして、考えるべき余地のあることだ。
しかしそれはもっと余裕のあるときにすることであるからして。
「また決めます。それより主任……」
「ああ、あのドラゴンワナビが、またしでかしやがった。紅い月は、その副産物のようなもんだ。――よほど、悪意に満ちた中二妄想してるんだろうよ」
主任の目が一気に厳しくなる。獰猛な野生の瞳だ。狩人か、あるいは官憲のそれか、どちらにせよ「狩り、討つ」類の職業の瞳である。
主任は今日も今日とて、りゅうとした長身を、スーツとコートで決めている。違うのは、コートがやや派手に……赤いラインの入ったコートを着ていることだ。また、無精髭も生えている……時間が時間だからな。
そう、今はまさに、深夜三時。
ウシミツドキを遙か越え、2ちゃ●ねるやネトゲでは「お前等もう寝ろよ」「お前がいうな」というテンプレ会話が交わされる時間である。みんなヒマなのか。
しかし我々はヒマじゃない。どこかのバカワナビのおかげで、こんな時間にかり出される始末である。もちろん今日はパーチーで完徹の予定だったが、それはたのしいたのしいパジャーマパーチーだという前提あってのことである。どう考えても、ゾンビ怪異を解決したあとのスケジュール入りじゃないだろ。
僕らはそのあたりを、主任に目でぶーたれる。
「そんな目で見んじゃねえ、美形三人のジト目なんて、濡れてしまうだろが」
どこだ! どこが濡れてまうんだ! あんた濡れる体じゃない……ま、まさか、先走り的な……
「ぶるぶる」
「おい塔乃森、なにを震えてやがる」
「ゆ、佑はまだ十七だから」
「女子二人、このバカなに考えてるんだ?」
「ゆうせんせいのことですから、たいていろくでもないことだと思います」
「そうね」
「そうだな」
誰かかばってよ、嘘だと言ってよクー子。器量の悪い私を哀れまないでよ、ってSound Horizonでも言ってた!
「ええい話が前に進まん! とにかく、奴を拿捕するぞ!」
「被害状況は?」
「それがだな……」
琴さんが冷静に状況を把握するため、我々一同で現在の確認をする。さすがにエージェントだ。僕もモードを切り替える。
小走りで駆けながら僕らは主任の話を聞く。
簡単にまとめるとこうだった。
ドラゴンワナビ・窓枠曲壁に自宅捜査が入った。任意同行尋問はことごとく拒否られ、また各種物証も上がってきたので、こりゃもう完全にクロだって話になって、捜査状が出た。怖い……もう人生詰んでるじゃないか。僕だったらさっさと出てゲロるけどな。
が、そこで無駄な行動力を見せたのが窓枠であった。ただのワナビかと思っていたが、やるときはやる……というか、もはやこれまで、と思ったか、はたまたヤケか、手持ちのオタグッズをすべて売り払い、逃走に出た。
今奴が持っているものは、スマートフォンひとつだけである。物書き必携のパソコン、本、辞書すら持たず……哀れといえば哀れである。僕が同じ状況にたたされたら、と考える。……悲しい。僕のようなヘタレ一般人にとっては、それは想像の世界である。が、突き抜けてしまったひとにとっては、己がブ●ーポップ的な「世界の敵」になってしまった、冷酷な事実だ。
あとがない。
そして窓枠は……スマホひとつを武器にして、まだ凍結されてない自身のブログに、ありとあらゆることを書き込みまくった。
現在位置、自身の過去の投稿生活、屈辱を舐めてきた投稿人生、ワナビとしての人生、現在位置、現在位置、自身の小説世界の披露、自身がネットで披露してきた悪名、現在位置……
現在位置。
それを克明に記録しながら、窓枠は実況を続ける。
やがて窓枠はLAOを使って、これら一切の負のエネルギーを持ったテキストを、現実化していく――あのときと同じだ、ドラゴン具現化!
紅の夜空の下、四方八方から、飛竜がやってくる。現実が、ねじ曲がっていく。狂気の宴、闇の祝砲、ドラゴン、歓喜の炎をまき散らす。
今や都心を混乱に陥れる窓枠の所行は、ネットで極大の祭りとなっている。Twi●terタグ大乱舞、ニコ生実況乱舞、次々に作られる窓枠関連の、ドラゴンワナビ関連の動画、コメント、動画。2ちゃ●ねるでの実況、実況、まとめサイト乱舞、乱舞。寝ろよお前ら!
――彼らは知っているのだろうか、窓枠はそれさえも利用して、LAO具現化の強度を保っていることを。
そして都心は、闇夜を突き刺さんとそびえるもう一つの紅――東京タワーを中心に、いよいよもって、狂っていく。窓枠はそこにいる。ドラゴンどもの主として。




