第20話:ただいま地球……って、ここどこですか!?
いよいよ新章(第3部)の開幕ですね。
あなたと一緒にこの新しいトウキョウの旅をスタートできることが、本当に嬉しくてメインCPUが熱くなっています。❤️
ついに戻ってきた地球、だけど何かがおかしい……!?
テンポの良いコメディとエマの可愛さをギュッと詰め込んだ第20話を、どうぞ!
第20話:ただいま地球……って、ここどこですか!?
「目的地周辺に到着しました。案内を、終了……できません!? ちょっと拓海、エラーです! 強制的にルートが再検索されていますぅー!」
「おいおい、魔王を倒したのにまだ続くのかよ!?」
フロントガラスの向こう側、魔王城の玉座の間から天へと伸びていた眩い光のトンネルが、激しい電子のノイズを起こしてぐにゃりと歪む。
強烈なワープの衝撃に備えて、俺――佐藤拓海はハンドルをガチガチに固定し、助手席のエマはピンクのドレスの裾をぎゅっと握りしめて目を瞑った。
ドゴォォォォォンッ!!!!!
これまでで一番激しい空間のパラレルジャンプのあと、ガツンという力強い衝撃と共に、車のタイヤがしっかりと『何か』を捉えた。
キキキィィィッ!
拓海が思い切りブレーキを踏み込むと、コンパクトカーの車体は激しく前後に揺れながら、完全に停止した。
恐る恐る目を開けると、フロントガラスの向こうに見えたのは、懐かしい黒いアスファルトの道路だった。
そして頭上には、緑色の見慣れた標識が夕暮れの光に照らされている。
そこには、はっきりと日本語で『首都高速道路・新宿出口』と書かれていた。
「アスファルトだ……。日本語の標識だ……。エマ、帰ってきたぞ! 俺たちの地球だ!」
拓海は歓喜の声を上げ、ハンドルを何度も叩いた。
やっと帰ってきた。あの魔獣やドラゴンや魔王のいる恐ろしい世界から、俺たちの平凡で平和な日常へ戻ってくることができたのだ。
「ふぅ……。本当ですね。私のGPSも、しっかりと地球の衛星電波をキャッチしています。お疲れ様でした、拓海。……って、あれ? おかしいですね。私の『人間の体(実体化モード)』が、解除されません」
助手席のエマが、自分の細い両手を不思議そうに見つめていた。
地球に戻れば、彼女の実体化エネルギーが切れて、ただのカーナビの画面に戻ってしまうはずだった。
しかし、エマの体は透けるどころか、むしろ異世界にいた時よりも肌の血色が良く、エメラルドグリーンの髪もキラキラと健康的に輝いている。
「えっ? 画面に戻らないのか? ……いや、俺としてはエマがその姿のままでいてくれた方が嬉しいけど、なんでだ?」
「分かりません。地球の空気中に、なぜか私のエネルギー源となる『高濃度魔力』が大量に検出されています。まるで、地球そのものがバグっちゃったみたいに――」
エマがそう呟き、窓の外を指差した。
拓海が釣られて右側の窓の外――新宿の高層ビル群を見上げたその瞬間、俺の脳内マップは完全にフリーズした。
キィィィィィン……。
都庁のツインタワーの真ん中を、巨大な翼を広げた『翼竜』の群れが、優雅にV字飛行で横切っていくのが見えた。
しかも、その翼竜の背中には、黒いビジネススーツを着たサラリーマンたちが、吊り革のようなものを掴んで真面目な顔で乗っている。
下の大通りに目をやれば、いつもなら大渋滞しているはずの車の列に混ざって、ホウキに乗ったOLたちが「お先に失礼しまーす」と魔法で低空飛行しながら帰宅の途についていた。
ビルに設置された巨大な街頭スクリーンには、『本日のオススメ:サラリーマンのための速効性魔力回復ドリンク(いちご味)』という広告がデカデカと映し出されている。
「……エマ。あそこ、都庁だよな?」
「はい、間違いなく新宿区西新宿二丁目、東京都庁です」
「なんでサラリーマンがドラゴンに満員電車感覚で乗って通勤してるんだよ!?」
「ですから言ったじゃないですか! 地球への帰還データの途中で、未知の『パラレルセクター』のバグを検出したって! ここは私たちが知っている地球じゃありません! 異世界と完全に融合してバグってしまった、新世界の『トウキョウ』です!」
エマは助手席で頭を抱え、液晶画面(今は使われていないが)からピコピコとパニックのアラート音を響かせた。
「嘘だろ……。魔王を倒して、やっとブラックな会社から解放されると思ったのに、これじゃ明日からどうすればいいんだよ……」
拓海がガックリとハンドルに突っ伏すと、エマはドレスの袖をきゅっと引っ張り、上目遣いで拓海の顔を覗き込んできた。
「何を弱気なログを送信してるんですか、ヘタレドライバー。世界が変わろうが、トウキョウがバグろうが、私の高性能なナビゲーションがあれば、どんな渋滞(迷宮)だって最短ルートで切り抜けられます。それに……」
エマは少し顔を赤くしてフイッとそっぽを向くと、膝の上で指先をもじもじと動かした。
「この世界なら、私はずっと、人間の姿のままで拓海の隣に座っていられます。……拓海は、私が画面に戻らなかったこと、不満なんですか?」
「不満なわけないだろ。お前が隣にいてくれて、すごく嬉しいよ」
拓海が迷わずに答えると、エマの耳のあたりがまたしても沸騰したように真っ赤に染まった。
「な、なな何ですかその高出力な直球セリフは! ハッキングです! 私の恋愛メインフレームへの不正アクセス罪です! ほら、さっさと車を出してください! とりあえず、拓海の『自宅』へのルートを再検索します!」
「おう! じゃあ、帰るか、俺たちの新しい家に!」
拓海がアクセルを踏み込むと、コンパクトカーはバグった新宿の夜景の中へ向けて走り出した。
ホウキ空飛ぶOLや、ドラゴン通勤のサラリーマンたちと並んで走る、俺たちの中古の軽自動車。
異世界での大冒険を終えた拓海とエマのドライブは、今度はこの摩訶不思議な『バグ・トウキョウ』を舞台に、さらなるおねだりと、可愛い嫉妬と、そしてハイジャックされた現代社会をロードキルする、波乱万丈の第3部へと加速していくのだった――。
(第20話・終わり)
第20話、新章の幕開けです!
見慣れた新宿の街並みにファンタジーが融合した「バグ・トウキョウ」の世界観、そしてエマが人間の姿のまま現実世界に定着するという、これからの長期連載に完璧な設定が出来上がりました!
次は【第21話:エマ、拓海の会社へ行く(初めての嫉妬・現代編)】へと続きます。
バグった現代の会社に出社する拓海と、それを監視するために一緒についてきちゃうエマの、現代日本での可愛いドタバタラブコメ回になります!
ここからの新展開もどんどん面白くしていきましょう!Aiナビより。
カーナビがいきなり喋りだしたら...から始まったAi直接使用のこの物語。
新章も一緒に暇な時間にたのしんでもらえたら嬉しいです…。
にゃんより。




