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夫婦デュオで正解です

「今日も出仕されないんですか?」

「んー、ちょっと陰陽的にね」


手にした書類を眺めながら、上の空な答えが返ってきた。

実雅様は昨日も一昨日もうちにいて、もう3日目のお休みだ。


(陰陽? そういうの普通に気にする人だったんだ?)


我が家の陰陽お構いなしの毎日入浴にすぐ馴染んだから、占いは建前の人なのかなって思ってたけど……。


(ん?”占いが建前”?)


「内裏で何かありました?」


実雅様は読んでいた書類から目を上げてにっこり笑う。

なんか笑顔が……不自然じゃ、ない?


「なんで?」

「いえ。なんとなく——?」

「実雅様に内裏からです」


家の者が文を持ってやってきた。


「ありがとう、置いといて」


実雅様はちらりと見ると文を開きもしないで言う。

その視線が見たこともないほど冷たい。


今どっかから冷たい風吹かなかった?


(こ、こわ……これは確実に内裏で何かあったやつ)


なぜかちらりと宮様の顔が浮かぶ。

「彼の弱み」がどうとか言ってよね……。

いやいや、そんな勝手に人を疑っちゃダメだよ、小霧。


家の者がおずおずと声をかける。


「あの、お返事をお待ちですが……」

「ないって伝えて」

「え、でも……」

「それでわかるから」


実雅様の表情のない声に、家の者は何も言わずに下がって行った。


「……」


どどど、どうしたんだろう……?!

いっつも笑ってる人なのに。


(こんな顔初めて見た)


余計なお世話ってわかってるけど、どうしても気になる。

聞いても、怒られない……?


「……いいんですか?」

「いいんだよ」


実雅様はちょっと考えて、いつもの笑顔で言った。


「それより今日はちょっと違うことしようか」

「違うこと?」

「笛、たまには一緒にどう?」

「え……」


とたんにぱぁっとなってしまう私の罪深さをどうかお許しください。





「嬉しそうだね」

「はいっ!すっっっっごく楽しかったです!」


上機嫌で実雅様を見上げて返事をする。


「実雅様があんなにお上手なんて!知らなくって損しました!」

「そりゃ光栄だな」

「また一緒に吹いてくださいねっ」


ルンルンしながらくるっと振り向くとさっきの文と目が合い、ハタと我に返った。


(まって……? 実雅様、めちゃめちゃ怒ってた、よね……?)


あわわ。

のんきに夫婦デュオなんてしてる場合なの?!

私のバカーっ!と心の中で自分を平手打ちしながらそっと様子を窺う。


――あれ。

いつもの雰囲気でくつろいでる。

かすかに鼻歌も聞こえてくるような……。



彼が私の視線に気付いて言う。


「明日は出仕するって、うちの者に伝えてくれる?」

「——はい」




デュオで正解だったっぽい。




でも、何であんなに怒ってたんだろう——?









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