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王子様は究極の陽の者です

「笛、私も持ってきたんだ。あまり得意じゃないんだけど」


王子様はほんの少し恥ずかしそうにして、次の瞬間明るく言う。


「一緒に吹きたいと思って。教えてくれる?」

「え……はい」


意外な流れにびっくりする。


宮様や女房たちが見守る中、彼は笛を構えた。

見られることに慣れてる人だなぁ。初めて会うタイプだ。

不思議に思いながら、私も笛を取り出した。



(わ……すごい、楽しい)


彼の笛は、確かに上手くはなかった。けど、私の考えを素早く読んでついてくる。


短時間でぐんぐん腕を上げ、見違えるほど上手くなった。

横に控えた女房たちはうっとり聞き入ってるし、隣にいる宮様も驚いてる。


「すごいな!笛がこんなに楽しいと思ったの初めてだ」


彼はあっという間に変身して見せ、私もすっかりそのペースに飲まれていた。

笛を片手に、人懐こく笑って言う。


「今日はこの辺にしておこうか。また来て」

「――はい」


また来るの?

一回顔を出したら終わりって思ってたんだけど。


(これで良かったのかな)


疑問に思いながらも、一仕事終えた満足感を抱えて内裏を後にした。





「どうだった?」


やってくるなり実雅様が尋ねる。

気のせいか表情がちょっと硬い。心配かけちゃったかな。


「あ、はい。よく存じ上げない方が、笛を教えてくれって言うんで手ほどきを……」

「よく存じ上げない方……?」


彼は私の言葉をオウム返しし、あっけにとられた顔をした。

うん残念ながら名前も官職もわかんないんだよね。えーっと特徴は――。


「すっごくキラキラした方で——、ってあれ?」


気付けば実雅様がお腹を抱えて笑い崩れている。


(今のどこが笑うとこだった?)


目尻の涙を拭いながら言う。


「小霧ちゃん無敵だね」

「なにが?」

「師匠って呼んでいい?」

「ダメです」


何の笑いか、何のお礼か、さっぱりわからない。

でも彼が嬉しそうだから、まぁいいのかな?




次の参内はまだまだ先だろうとのんきにしてたら、文はすぐ届いた。

今日も王子様に笛レッスンだ。


「すごいです……!あっという間に上手くなりましたね」


私は感動に打ち震えていた。


だってほんとに上手くなって別人のようだ。

王子様は少し照れたように笑った。


「姫の教え方がいいからね」

「いえ――」

「筋がいいんですよ。教え方ではなく」


横からすかさず宮様が口を挟んできた。

すご。入りがプロ芸人みたい。しかも前振りなしで……!


(でもそんなこと言われなくたってわかってるよ?)


私、そんな勘違いキャラに見えるのかな。


モヤモヤしてると、王子様は笛を片手に真剣な顔で言う。


「いや……姫は特別だと思う」

「へ……」


勘違いをしてるのはこの王子様なのでは――。


「姫と吹くと、目指すべき場所がはっきりするんだ」


まって。何か壮大な笛物語が始まってない?


「そう、ですか?」

「うん、今までにない感覚なんだ」

「……」


宮様の空気が冷たくなってる気がする。


(あんまり持ち上げられるとまたツッコミが……!)


御簾越しにちらっと見ると、薄く笑ってるけど目は冷ややかだ。


いや、この状況私のせい?


「これまでの教わり方が合わなかっただけでは……」


控えめに言ってみると、王子様は大きく首をふる。


「自分にとっての”笛”が何か、初めてわかったんだ」

「さようで……」


もうむりー!


(そんなつもりじゃないんです!決して王子様をたぶらかすつもりなんて……)


助けを求めるつもりで宮様を見ると、なんか冷気漂ってきてない?

逃げなきゃ……!


「そっ、そろそろ終わりの時間でしょうか!」

「そうだね。姫、またすぐ来てくれるかな」


一瞬キラキラを陰らせて、心底残念そうに王子様が言う。


「……はい」


とてもじゃないけど断れない。

だってこの人、なんとなく「断られる」概念がないっぽい。

ごり押ししないのに有無を言わせない圧がある。何か新種のチートの持ち主だ。



なぜか突然実雅様を思い出した。

一気に不安が押し寄せてくる。



この王子様が誰かもわからないのに、どんどん何かに巻き込まれて行ってることだけは確かで。

逃げたいのにどこにも道はなくって……。





重苦しいような気持ちで牛車に乗り、息を詰めて邸へ帰った。


この先、私どうなっていくんだろう――。











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