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プロローグ
「三人、か……」
男は手にしていた報告書の束をばさりと机に投げ、天井を仰いだ。
男の体重を受け止めた椅子が、ぎしりと鈍い音をたてる。
その音すら苛立つ自分に、重いため息をつき、明るい室内から逃げるように片手で顔を覆う。
——三人目、だ。
心で数えてしまった男は、小さな呻き声をあげてしまった。
三人目。
それはその町最後の被害者である可能性が、これまでのケースから考えて非常に高い。
次の被害がどの町になるか、まだ規則がわからない自分たちだ。
また初めからの調査になる。
無力だった自分に、知らずため息を重ねてしまう。
——コンコン
しばらく茫然自失になっていた男だが、規則正しく響いたック音に我に返った。
ゆっくりと瞼を開き、手を机に戻す。
——コンコン
急ぐ調子もなく再度響くノック音に、男は姿勢を正し椅子に深く座りなおした。
机に肘をつき、顎の下で手を組み大きく息をはく。
「入りなさい」
この日。
とある小さな組織が立ち上げられた。