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プロローグ 記録室より
私は、特異事象調査課の記録分析官である。
現場には出ない。
私の仕事は、各地から上がってくる報告書を読み、照合し、分類し、一つの事案としてまとめることだ。
机の上には、毎朝、誰かが置いていった書類が積まれている。
差出人の名がないものも、少なくない。
その大半は、退屈な誤報だ。
見間違い、聞き違い、あるいは悪戯。
私は淡々と「異常なし」の判を押し、書庫の奥へ送る。
それで、たいていの事案は終わる。
だが、ごくまれに――読み終えたあとも、消えない報告書がある。
夜、目を閉じると文面が浮かぶ。
書いた人間の指の震えが、こちらの指先にまで伝わってくるような。
そういう数件を、私はここに書き写しておくことにした。
なぜそんなことをするのか、自分でもうまく説明できない。
最初の一件は、四通の報告書だった。
ある廃トンネルをめぐる、記録。
断っておく。
これを最後まで読んだところで、あなたに得るものは何もない。
むしろ――読み終える頃には、なぜ私がわざわざこれを書き残したのか、その理由の方が、わかってしまうはずだ。
では、始めよう。
事案番号は、便宜上、〇〇一とする。




