表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/91

第28話 岩の鎧

魔物の住む島と聞いていたリュネヴィル。しかし馬車を引いて進んでいると、ここまで1体も魔物と遭遇していない事に気が付いた。


「あのさぁレイアスト」

「あ~分かってる。とりあえずこのスピードを保ったまま走り続けといて」


レイアストも違和感を覚えているようだ。思い返せば出発前、スキルで打ち出すための小石を拾っていた。もうあの時点で察していたのだろう。

とりあえず、今は言われた通りに修行を続けよう。イケネミに走り続けるんだ。



林を抜けて足元がゴツゴツとした岩稜帯に突入。朝日が昇りちょうど光が岩々の間から差し込んだその時、とうとう攻撃が来た。


「チッ気付いてやがったか」

「160でようやく相殺か…なんて蹴りだ」


高い岩場から現れた男の技を、馬車から飛び立ったレイアストが物刺しで止めた。


「シエル、馬車ストップ」


私は言われた通りに馬車を止めてレイアストの近くに寄った。何を言われるのか察して、既に剣に手を触れている。


「あいつと戦ってみて。いざって時は私が出るから」

「なんだ?お前、俺と戦ってくれないのか?こいつよりお前の方が強そうだぞ」


久しぶりの対人戦だ。こいつの言う通り私よりレイアストの方が強いだろうけどやってやる。


「俺はレイ・スノビー!強盗殺人の罪から逃れてこの島にやって来たんだ!」

「シエル・ラングリッター。冒険者として犯罪者は見過ごせないわ」


レイ・スノビーと名乗った男の全身に血管が浮き出ている。明らかにパワー系だ。まともにやり合わない方がいい。


「行くよー!」

「速い!?」


地面を一度蹴っただけでもう目前に迫っている!


「よく避けたねぇ」


だけど攻撃は直線的だ!落ち着いて動きを観察すれば避けられる!


「ならこれはどうだ!」


旋回(ターン)して左拳(さけん)でのパンチ!

私は右前に剣を立てて、流れるように敵とすれ違う。こちらと相手の勢いが重なり、接触した刃が男の皮を剥ぎ取った。


「木の剣なのによくやるねえ!」

「胴体にぶつかる!」


咄嗟に身体を転がして衝突を回避。背後から大きな音がして振り替えると、敵の衝突した岩が粉々に砕けていた。


「強いし可愛いし…殺り甲斐(や がい)ありそうだ………ズドゥム・アムガ!」


な、なんだ?男の全身に砕けた岩の破片が付着し始めた…それに今の呪文は…


「このズドゥムと言う単語。プルヴァトリという遠くにある国では雷を起こす呪文だそうだ。しかし俺は違う。俺にとってのズドゥムは魔術の呪文ではない。大地を持ち上げ纒い鎧とする潜在呪文(ポテンシャルスペル)!鍛練の賜物だ!」


潜在呪文だって!?


宣言した通り、集結した岩の破片が全身を覆う鎧と化した。しかもこれは身を守るための鎧ではない。ニードルやブレードの付いた攻撃向けの攻鎧(こうがい)ってやつだ!

もしも今の状態とさっきまでの勢いで接触したら命はない。


「虐待の時間だ」


目をやるがレイアストが動く気配はない。相手がこんなになってもまだ戦えって言うの?


とりあえず回避に専念しよう。そして少しずつ攻撃を打ち込んで、あの鎧を砕く!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ