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第29話 相手の隙を突け!

潜在呪文を唱えたことで岩の鎧を纏った敵。少しぐらい動きが鈍るかと思ったけどそんなことはなく、これまで通りのスピードで私に突進してきた。


武器で受け流そうとすれば木製の剣は簡単に折れてしまう。私は後方に跳ねてなるべく勢いを殺すようにして、相手の鎧に手を乗せては攻撃の走る直線上から身体を逸らした。


「どんどん行くよ~」

「レイアスト!助けて!」

「どうすれば良いか分かってるでしょ!だったら余計な事に気を取られてないで集中して!」


これでもアドバイスしかくれないのか!厳しいなぁ!

一点に攻撃を集中させて鎧を砕く。そのためにはまず、攻撃後に隙を見つけなければ。


大きな岩を見つけた。それを背中にして私は身構えて、走って来る敵を避けようと跳躍した。しかしタイミングが少し早かった。


「しまった!うがっ!!」


敵は勢いが乗った状態で私の元まで跳ねて、そのまま大岩に体を打ち付けた。 

ブレードが肉を斬り込み、ニードルが体を貫いて大岩に突き刺さる。目の前には狂喜の笑みがあった。


「良い顔だぁ」


視界と空気を得るために顔は覆ってないぞこいつ!だったらブレイズから教わったアレの出番だ!

忍法!鰒身針千本(ふぐみばりせんぼん)!


「ブブブブブブ!」

「WoW!?」


鼻から空気を吸って鰒のように頬を膨らませた直後、口に隠していた針を連射する。これが忍法、鰒身針千本だ。

流石にビックリしたのか敵は驚いて離れていく。その間にも針の連射を続けて、なるべく距離を置くように追い払った。


「ブブブ…針切れか」

「まるで忍者みたい。ビックリしたよ」


1本も刺さらなかったみたいだ。木の板を割るくらいの威力はあるけど、当たらなければ意味はない。



しかしあいつはミスをした。私は大岩を離れて、昇り始めたばかりの太陽を背にした。そして自分の影が、敵の後ろまで伸びているのを確認した。


影に攻撃させる剣技カラメソード・ウカタミユの射程圏内に捉えた!



「おや?剣を鞘に戻して…居合か?」

「スゥ…」

「だったら俺も…ズドゥム・ブレンザック」


相手が私に合わせて装いを変える。鎧となっていた岩は利き手と思われる右腕に集中。刃とは言うには無骨過ぎる岩の刃が完成した。


あいつ、体に纏える岩の量は決まっているんだ!そうじゃなければわざわざ鎧を解く必要がないもん!


そして向こうも居合の構えを取り、こちらに意識が集中した。背後に伸びている私の影は攻撃の準備が完了している!


「…」

「好きなタイミングで来なよ。反応してあげるから」


その油断が命取りだ!私の影よ!その男の心臓を貫け!


「…ぐふっ!?」


影の剣が男を貫いた。死角からの刺撃(しげき)を喰らった相手は口から血を吐き出し、有り得ないといった感じの戸惑った表情でその場に倒れた。

岩を攻撃に回したのは失敗だったわね。


「そんな技あったんだ…」

「えっへん!搦め手だって当たるところ当たれば会心の一撃よ!」

「よく分かんないけど…まあ良く勝利したね。お疲れ様」



ウカタミユを使わせたのは昔戦った魔絵師(まかいし)エツトモと勇者セスタ様、そしてあんたで三人目よ。光栄に思いなさい…


「さぁ、休んでる暇はない。出発するよ」

「えぇ~もう?少し休ませてよー」

「文句言わない。もう馬車引かなくていいんだからさ」


レイアストが親指で指した先には全壊してしまった悲惨な姿の馬車が…

頭の片隅で傷付けないように考えて戦ってたはずなんだけど、いつ壊れちゃったんだろう?


「食糧も潰れちゃってる!」

「さあしゅっぱ~つ!しゅっぱぁぁぁつ!!」


なんでこんなハイテンションなのこの人!?まあもう馬車引かなくていいって言うならそれでいいけど…

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