1.1赤のネリネ1
変な感傷に浸りながらこれまでの考えているとキモいおっさんが寄ってきた。人の外見にケチをつけるのはよくないことだ。最低なことだと思う。でもそのおっさんは限度を超えていた。A4サイズはあるでかい山羊か羊みたいな面にフジツボみたいなでかい穴がどーんとあって、その奥はなんとなく色がついてるのかもしれない。俺が色覚異常だからか、真っ黒にしか見えない。顔の下あたりからフジツボのところまで切れ目がついていて、そこを開いてギーギーいっている。体はトンボみたいなガリガリボディだけど身長は2m近くある。手にも足にも指が左右6本ついていて、みな立派なマツタケが奴らの股間で自己主張している。とにかくでかい。ペットボトルを少しだけ細くしたくらいのビッグで立派なマツタケだ。ポークビッツ族としては誠にうらやま妬ましい。少し体が小さめの個体もいるが、股間にはラージサイズのマツタケが自生している。
もちろん変なのは外見だけじゃなく、こいつらは常になんか言っているのか呼吸音なのか、ギーギーギーギー言っている。これが漫画なら確実にギーギー族とかギー族とか言われるんだろうな。残念ながら何言ってるかわからないからこいつらが何なのかわからないが。
最初に気が付いたときは小便を漏らしながらビビったもんだ。虫みたいな鳴き声がすると思って飛び起きたら虫より気持ち悪い生き物がウジャウジャしてんだもんな。相当ビビった。数日で慣れて今はおとなしくペットとしての立場をわきまえているけどな。ペットといっても撫でられるわけでもなく、何か芸を仕込まれることもない。少しは働いてやろうとワンワン鳴けばしつけのつもりなのかぶん殴られるのでなんのためのペットかはわからない。ずっと皆が視線を向けてくるしちょっとした祭壇みたいなのが横にあって気になるがきっとこれは気にしすぎだ。そうに違いない。
こいつらはすごい気持ち悪いがなぜか憎めない。むしろ少し好きなくらいだ。そう感じる俺自身にすごくもやもやする。
最初の一週間くらいはいろいろとコミュニケーションを取ろうと努力した。俺なりに話しかけたり、地面に指で絵をかいたり、手ぶり足ぶり全身で俺の安全性を説明したり。食事についても固形物を要求した。当然その努力むなしくなんの進展もない。関係性はむしろ悪化したくらいだ。何かするたびに奴らは顔を見合わせてまたかって肩をすくめる。実際にすくめているわけじゃなくてその雰囲気だけだが。
夜中に一度暇すぎて俺の美声を披露したことがあった。夜も遅いのにだんだんと俺の周りに人が寄ってきて焚火まで初めたのでリサイタルのごとくだんだんと声量も心もこもってきて、最終的には村全体に俺の美声がとどろいた。途中長なのか装飾品を頭に付けたおっさんが出てきて皆に小声でなんか言っていた。なんかといってもギーギー言ってるだけなのだが。
気づくと俺はかがり火に囲まれていた。完全にステージだなと思って気持ちよく歌っていたら、なんかの蔓をまとめたもので袋叩きにされた。最初こそ奴ら流にほめてくれてるのかと思っていたが、数十発したら頬を腕で殴られた。そっからはリンチだ。それまでいい関係性とまではいえなくともそこまで悪い関係ではないと思っていたのに。その後数日は今までの胴と杭のつなぎに加えて手足も縛られ身動きをとれなくされた。完全うんこ垂れ流し生活だ。最初の方はちょっと興奮したがその後は羞恥心に耐えられず殺してくれと懇願したもんだ。
もう歌うまいと決意し丸一日一言もしゃべらずじっとしていたら手足の拘束は外してくれた。
でも奴らはそれなりに面倒見がいい。毎日毎日変な土器みたいなので白い汁をくれる。これがなかなかうまい。ずっと誰かしら俺の様子をうかがってるし大声で何かを要求したらおろおろしだす。化け物を混乱させるのはなかなか気分がいい。
時々奴ら以外の生き物も見に来る。エルフや河童や巨人みたいな奴らが訪ねてきては俺を見に来る。いや、観察だな。多分。ただ人型の生き物がいて本当に良かった。エルフなんて漫画でよく見るように皆美人だ。しかもやさしい。でもこいつらも俺を見ながらずっとギーギー言ってやがる。正直気味が悪い。
ここまで状況を整理してきて、さすがにもう認めざるをえまい。俺は異世界転生したんだ。しかも化け物に育てられる赤ちゃんとして。ただ疑問は残る。俺は今も昔も人間だ。股間についてるポークビッツも前より控えめなくらいだ。時々エルフなど人間っぽい奴らが訪ねてくるが普通の人間は一人もいない。
つまるところ、これは異種族ハーレムものだな。皆とは違う価値観で人助けをして高感度マシマシでハーレムを築く男のロマン物語だなきっと!




