↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第二章・神域攻略
86/86

84.(;-_-Aエラい目に遭った…

 2時間後、CBB団幹部は三手に別れて行動していた。


 アーサーとカールはアレンと一足先にベイバード砦に帰還してユウと合流し、ビアンカはレオンとセイスを連れて神域の表層に赴き、イェンは残された隊員達と一緒に騎士団の補助に努めていた。


「少し顔を見ない間にものすごい勢いで活躍しますねぇ〜? 主として鼻が高いですよ」

「出来過ぎな気もするけどなー、ま、これから忙しくなるのは間違い無いだろうぜ」


 ガラガラガラ……


 アレンの所有する巨大驢馬ガレオンゴールドの牽く荷車に乗って揺られながらある場所へ向かうユウ一行。ユウの指示でアーサーとカールは服を着替え、御者のアレンが手綱を捌いて到着したのは、鉄道用資材が積まれる工事現場。

 駅舎の土台と最低限の仮設住宅は設置されているものの、肝心のレールはまだ敷設されていない。ユウを先頭に事務所である仮設住宅へ入る。


「ごめん下さい」

「うん? ああ、お待ちしてましたよ」


 室内は机や椅子を始めとしたあらゆる調度品が丸い物で統一されていて、そこで出迎えてくれたのは長身痩躯の男性。身長だけならカールに引けを取らない上に、言葉とは裏腹に眉間に皺が寄って威圧感たっぷりである。


「とりあえずコチラにどうぞ掛けて下さい……私に合わせて用意しているので大きいですが……」

「ええ構いません、では早速ですが単刀直入に言いましょう。鉄道網建設に協力させて下さい」


 ユウが座りながら言い切る間に彼の視線は男の両目から離さなかった。


「性急が過ぎますよ。お互いに自己紹介もしていません」

「これは申し訳ありません。私は医師見習いの"ユウ・ブーム"です。こちらの2人は私の父から相続した傭兵団の……」

「"アーサー・リッパースター"だ。団長をしている」

「"カール・ヌァラ"、団長(コイツ)に何かあった時の代行権を持っている」


『素直に"副団長"って名乗らないのか?』

『それだとお前の下って明確になるだろ』

『しろよ』

『嫌だね』


 チャット上で喧嘩を始める2人だが、見た目にはお互いに視線も合わさず寡黙にしているだけだ。ユウだけは同じ親(プレイヤー)を持つ血縁者として内容を閲覧出来る。


「(兄弟しているなぁ〜)アーサーは自分の武器を自ら作る鍛冶師でもあります。金属に関して深い知識を有します。カールも構造物についての知識を持ち、土木作業が得意です」

「ほぉ〜それは頼もしい。ああ、私の名前は"ノーヴ"と言います。神域鉄道部のベイバード支部・支部長です」


 神域鉄道部とはその名の通り国内に点在する神域の外周に鉄道を敷設する部署であり、その所属は日本で言う所の国土交通省に相当する。

 つまり場合によっては一地方砦のベイバード砦以上の権力を有し、故にベイバード砦の傭兵という肩書きは効果が薄いので知識教養を前面にアピールしたのだ。


「それで? 何をするつもりですか? 既に作業員が大勢こちらを目指して移動している。そちらお二方なら千人分の仕事も可能でしょうが、その千人の仕事を奪えば暴動になります。その鎮圧すら受け持つのなら、話をどうぞ」


 眉間の皺から声を発するかのような喋りだ。座高が高いようで座るとカールよりも目線が高いのでやはり威圧感が尋常じゃない。

 そんなノーヴに合わせた屋内設計なので空間を含めたすべてが大きく、ユウとアーサーは小人になった気分で話を聞いていた。ただカールは逆に居心地良さそうにしており、丸い窓から外に見えるアレンはのん気にガレオンゴールドの世話をしている。


「暴動にはなりません。しかし奪うと言うのは穏やかではないですね。ただし悲しいことに遠からぬ言葉でもありまして……そちらの募集人員を神域の開拓事業に回して頂きたいのです。神域の門番が討伐されたので神域の都市化が急がれる状況なんです。それで鉄道の……」

「ちちちょちょちょ待て!!? 今何て言った?!」

「"神域"の、"門番"が、"討伐"されました! ついさっきです。数十年単位の事業計画が数日に短縮されてしまったんです」


 ガタァーーン!! バシィ!


「なんの冗談だ貴様ぁ!!」ビシィ!


 椅子を蹴飛ばし机を叩いて指を突きつけて問いただす。至極当然な反応に、それでもユウは平然と返答する。


「やはり知りませんでしたか。討伐者はベイバード騎士団長様とこちらのアーサーで成し遂げました。後日に砦に問い合わせするか、砦の担当者がこちらに伺って情報共有するでしょう。しかしそちらはベイバードとは言え別組織、今はあちこちバタバタしているので神殿のシド司教に聞くのが早いでしょう」

「神殿も似たようなもんだろう……しかしシド司教様か……(チッ、あの野郎、派閥のクセに知らなかったのか?)お三方が来るのを連絡して来たのは神殿の者、それもシド様の派閥だ。あの方が声を発せばすぐに数千人の人員を派遣するのも可能だろう。だが命令を出して募集を掛け集結するのは時間が掛かる。そうか、そういう事か。だったら人員を譲るのは良いとしよう、代わりにシド司教様が派遣する人員をいくらか譲って貰いたい」


 ノーヴはシド司教についてある程度知っているようで、名前を聞いて彼の意図を予測し、あっさりと要求を承諾した。


「良いんじゃないですか? 僕が言うのも何ですが、無理を通して頂きますから……。何なら給料の支払いも神殿に移譲してしまいましょう」

「無論そのつもりだが……貴様らどういう立場でここに来たんだ?」


 ユウの他人事のような物言いに違和感を感じたノーヴがまた問いただす。ユウも視線を一瞬だけアーサーに向けるがすぐに戻して回答する。


「まずはシド司教様の伝言係、次いで外部からの雇われ人として何かお手伝い出来ないかと伺った次第です。……不安を覚えたのならば書類でも用意しましょうか? 所詮、偉い人の口約束なんて……」

「皆まで言うな、それ以上は怖い。が、書類は作っておくに越した事は無い。保証人は君とそこの団長殿の2人で十分だ」


 それから丸いテーブルの上で2枚の羊皮紙に文書を作成する。その間にアーサーとカールは許可を得て鉄道の計画書や設計図を物色していた。

 そんな光景を見たノーヴが嫌味たっぷりに口を開いた。


「………騎士でもない戦士がそんな物を見て面白いのか?」

「ンー? じゃなきゃここにゃ来ないよ。所でノーヴさんよ、設計図によれば将来的に東西南北すべての砦と繋がる鉄道が完成する予定ですよね」


 ぺらっとアーサーがノーヴに見せたのは鉄道路線の概略図、完全な円の中に四砦と中間地点の予定地の名前が描かれたもの。


「そうだ。主要な鉄道は美しい真円で繋がる」

「鉄道レールはパーツで別れていてどこにパーツを置いても互換性がある、素晴らしい精度で揃えてらっしゃるんですねー」

「当然だ。鉄道部の冶金士は選りすぐりの専門家の集団だからな」

「こっちにはパーツの実寸と必要な数、この紙はメモか…うん計算式についてだな、色々書いてあるが天気についての資料は無いのか?」

「天気? 何故だ?」

「この膨大な量のレールパーツは設計上隙間(アソビ)が無い、鍛冶師として忠告するがこれじゃあ一年と持たずにガタガタになっちまうぞ」


 アーサーの発言を聞きながらノーヴの眉間の皺が一層深く、そしてこめかみには青筋が浮き出ていく。


「何だ貴様、鉄道部をコケにしているのか? この設計は、都で敷設されているものと同等の精度で作成されている。歪みも無ければ間違いも無い」

「火山の神域が有った都だろー? あそこは一年を通して気温と地熱が安定している、温度の変化がほぼ無いって訳よ」

「それがどうした」

「一方でこの土地は水田で穀物を栽培可能な環境だ、極端ではないが寒暖差の有る土地だな」


 アーサーの説明にノーヴは腕を組んで黙って耳を傾けるも未だ鼻息は荒い。


「温度変化で物質は変形する。冷たいと縮むし温かいと膨らむ、季節の移り変わり程度の温度変化が及ぼす影響は、肌で感じるよりも鉄への影響は少ない、微々たるものだ」

「…………だがこれ程巨大な塊となると多少も多大になる……か」ピクピク


 とうとう口を開いて同意したノーヴの眉間がピクピクと痙攣して腹話術のようだ。


「鉄の巨大建造物を見たこと無いのか? 門番を封じる防壁は……一般人には縁遠いか、んー巨獣の神域は? あそこにも鉄道は有るんじゃないのか?」

「あそこは元は獣の国だぞ、野蛮な連中が暇潰しにちょっかいを出すんだ。参考にはならん」


 ベイバードと似た環境のサンプルは有ったらしい、しかし「元は」と強調するぐらい見下して原因究明を疎かにし、果ては現地民の所為にしてしまっている。温度変化で変形するという基礎を知っていたのにである。


「あっそう。ま、表に置いてある分のレールの片端だけを研磨して余裕を作るのは可能だ。これでアンタの担当する区間だけは、一年と言わずずっと真円の弧を描き続けるだろう」

「フンッなるほど、知識は有るのは分かったよ。だが技術はどうかな? そこまで言ったんならついでに見せてもらおうか」ガタッ


 そう言って立ち上がったノーヴは出入り口に向かう。だがアーサーは待ったを掛けた。


「馬鹿言っちゃいけねーよ。そんなイレギュラーな対応こそ設計っつか書面に残さないと全体でおかしくなるだろーが! まずは砦の農業課に問い合わせて今までの最高と最低の気温の調査、それから計算して研磨幅を割り出し、作業はそれからだろ」

「………グゥ」プルプル


 そして何も言い返せなくなったノーヴの姿を見て、ユウはもうカケラも威圧感を感じなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。