6 魔力共有
お湯を入れて3分経ったかなぐらいで戻ってみたんだがね。
けっこう買ったつもりだったのに、全部なくなってるとは思わないよね。
「ち、違いますし! これは、神様に失礼でッ!」
「そんなに食いしん坊だとは思わなかった。今もう少し多めに用意した方がよかったか」
俺が戻ってきた時には、ちょうど最後のカレーを口に流し込んでいるところだった。
そのせいか必死の抗議で米粒とルーが飛んでくる。
うん、さっきはなんかキリッて感じしてた気がしないでもないけど、そんなことなかった。
よくあるよなそういうのって。
ギャップ萌えみたいな。
とりあえずラーメンを食べるかと思ったが、目をキラキラさせて尻尾をこれでもかと言わんばかりに振りながら手元のカップラーメンを見ている様子を見ると、俺のご飯はおあずけになりそうだ。
「はは、飯が口にあったようで良かったよ。そういや、さっき自分でシロって言ってたけど、名前はシロでいいのか?」
すごい勢いで食べてるが、それでも聞こえてはいるようで耳はこちらを向いてピクピクしている。
うん、可愛いなあれ。
食べ終えてフゥと一息ついて檻の中からこちらを見る白髪犬耳少女。
そろそろ普通に話してくれると助かるんだがな。
「一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「どうして……助けてくれたんですか?」
こちらをジッと見るその目にはまだ怯えの様な色が見て取れた。
眉毛もハの字になっている。
可愛い。
「どうしてってそりゃあ……襲われてたから?」
「う、嘘です! そっ、それだけですか!? それだけであんな危ない龍と!」
「そう言われてもなぁ。助けたいと思って助けただけだから。まぁいいか、そのままじゃ動きにくいだろうから、それ壊せるかやってみるよ」
この子を先に檻から出そうか。
そんなことが出来るのという風にこっちを見てくる。
俺も出来るかわからんけどな!
格子を握る。
普通に力を入れても全然開きそうにないな。
意識を手に集中する。
捻じ曲げて開くことに集中し力を入れると手の周りに集まっていく魔力が見えた。
ギギギという音とともに格子が捻じ曲がっていく。
……よし、ここまで開けば通れそうだな。
あとはあの鎖か。
「手を出して」
おずおずと両手を前に差し出してくる。
もの凄く細い。
変に力を入れると腕に付けられている鎖諸共折れてしまいそうだ。
おれはトランプを千切るように親指と人差し指で摘まむ。
すると、とたんに力を吸われるような感覚が襲ってきた。
「む、無理ですよ。これは魔力吸収が……」
「大丈夫だ」
いきなりで驚いたが、なんてことはない。
それ以上に魔力を出せばいいだけだ。
さっきよりも集中して強く……そう、もっと強く魔力を!
この鎖はちょっと固いだけちょっと固いだけ……フンッ!!
「す、凄い……」
バギンッという音とともに腕にはめられていた鎖が砕ける。
よし、この調子でなんとかなりそうだ。
目を真ん丸にして驚いているのを横目に残りも同じように壊してやる。
「さて、これで自由になれたな」
「あっありがとうございます! あのっ、シロです! シロっていいます! あなたはっ……あふぅ……」
「おっ、おい!」
「すぅ……すぅ……」
……眠ってやがる。
とりあえず今は寝かせてあげておくか。
名前をちゃんと聞けてよかったが、話は明日の朝になりそうだな。
◆
「うぅ~ん……もぅ食べれないぃ……」
朝になったがまだシロはまだ起きない。
口からはだらしなく涎が出ている。
しかし、本当に頭から耳が、お尻からは尻尾が生えてる。
「ちょっとぐらい触ってもいいよな?」
ということでシロが起きる前にちょっとだけ触ってみる。
ッ!? すげぇ、なんだこのモフモフ具合は……。
滑らかなで肌触りの良い、今まで触れたことのあるどんな高級そうな毛皮より1ランクも2ランクも上のようなこの撫で心地。
高級な毛皮がどんなのか知らんが、そんな触り心地だ!!
「ん……く、くすぐったい……えっ、尻尾を……? え、えぇ!?」
あ、起きた。
「悪いな、あまりにも触り心地が良さそうだったから、つい触っちまった」
「は、白狼族の尻尾を触ることがどういうことかわかってるんですか!?」
尻尾を押さえて凄い剣幕で捲くし立ててくるシロ。
すまねぇ、白狼族のことはさっぱりなんだ。
「うぅ、もうお嫁にいけません。で、でも助けてくれたこの人なら……い、嫌な気持ちにならなかったですし」
シロが何か言ってるが、声が小さすぎてよく聞こえない。
「そういや腹は減ってるか?」
「……子供はやっぱり2人かな。……えっ、あ、だだだ大丈夫です。昨日たくさん食べましたし!」
「そうか。それはそうと、なんでこんなとこにいたんだ? 話しにくいことだったら別に話さなくていいが」
そう告げるとシロは暗い顔になったが、事の顛末を話してくれた。
◆
「……辛かったな」
そう言いながらシロの頭を撫でてやる。
恥ずかしいのか俯いてしまった。
しかし、なるほど。
この触り心地だもんな。
汚い人間に狙われるのも納得だ。
それに、毛皮を抜きにしてもシロは可愛い。
間違いなく美少女の部類だろう。
体はまぁ、発展途上という感じだが。
「それでもあなたに助けてもらえたから。シロはまだ幸せだと思う。家族や村の皆は、どうなったかわからないから」
「でも捕まったところに家族はいなかったんだろ? それに、まだ小さいのに」
「こ、これでももうすぐ成人ですし! 13歳でもシロは立派な女性ですし!」
「そうか、それはすまんかった」
立派ねぇ、えっへんと胸を張るが、いや可哀想だからやめておこう。
「で、シロはどうしたいんだ? 家族を探したいか?」
「探したいけど、途中でまた襲われるか、攫われると思います。シロは魔力が全くないから、魔力のある人には敵わないです……」
「うむぅ……なるほどな」
顎に手をやり考える。
俺の力を使えばシロも魔力を使えるようになるだろう。
家族を探すのを手伝うだけということも出来るが、それだけだとシロに万が一何かあるかもしれないからな。
やっぱりアリスさんは全部知っていたんだろうな。
【魔力共有】はアリスさんにもらった力だし。
この力を使えば先ほどから魔力を使えないと言う度にシュンと耳を下げるシロも魔力を使えるようになるだろう。
「魔力を使えるようにしてやろうか?」
「え?」
本当に出来るの? という顔でこちらを見るシロ。
「それが本当なら、シロは魔力を使えるようになりたいです。力があれば、家族を守れたかもしれないし、人間を追い払うことも出来たかもしれないから……」
さて、問題は使い方だが、腕輪についてる画面に祝福の項目があったからそこに載ってるだろう。
おっ、あったあった。えーっと。
【魔力共有】
『自身の魔力を対象と共有出来るぞ。人数制限も無しじゃ! そっちの世界にいる間は離れていてもお互いの魔力を感じれるし何かと便利なのじゃ! 共有したい対象の胸に手のひらをあて【魔力共有】と口にすればよい。服の上からではダメじゃぞ!』
……なんですと?
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