ある研究家の考察 2
私は研究に長年心血を注いだ、ゴブリンの巣を前に絶望した。
村と言ってもいい程に拡張していたはずのそれは、今や見る影もなかった。
住居らしき物は壊され、生き物の気配がない。所々濡れた地面はゴブリンの血だろうか。屍は無いが、丸ごと素材として持って行ったのだろう。買い手は幾らでもいる。とは言え生きたままの方が高値がつくので、密猟者も無駄に命は取らないだろう。
取り戻すのは不可能だろうが。
長年の研究が、結果を目前に無に帰した。これを絶望せずにはいられない。私も助手もやるせなさに打ち拉がれていた。
そんな時、護衛の一人が小さく声をあげた。促され目を向けた先には。
なんと!!
希望がいた!!
小さな個体。幼体に違いない。無事に産まれたのだ。なんという僥倖だろうか。このような惨状の中、私の、我々の研究は実を結んだのだ。
まだ終わりではない。あの幼体を研究し、成果を確立しなければ。
しかし、他の個体は見つからない。まさかあの幼体一体だけなのだろうか。とても独りで生きていけるようには思えないのだが……ハイハイしてるし。人間でいうところの赤ン坊だろ。いうなればベビーゴブリンというところか。
……心配だ。
我々は幼体―――ベビーゴブリンを定期的に観察する事にした。影ながら手助けしようということで。




