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第52話 地竜退治、デス

体調は回復しました、また今日から2話投稿です。


 




 ベオウルフ、ジークフリート、ギルガメッシュ、インドラ、クリシュナ、聖ゲオルグ、スサノオ、変なところで預言者ダニエル。


 これらはかつて前世の世界の東西各地で出現した竜を倒した英雄たちだ。


 つまり、最低でもこれだけの人数が『竜殺し』を体現出来たという事実がある。


 で、俺はといえば焔竜も目の前の地竜も最低限フルボッコに出来る実力(不意打ち限定)でやれるから、出来ない訳じゃない。


 けどそれは全力ですればの話であって、制限したままで勝てるほど楽観はしていない。


 そんな訳で、現在俺は地竜をブッ倒すべく奮戦してるんだが、さすが地竜、硬すぎます。


「―――こっんのっ!?

 硬いんだよこのデカブツ、少しは痛がれ!!」


『―――■■■■■■■■■■■っ!!』


 クソッタレ、勝利を確信してるのか良い感じに啼き声上げやがって、間近で聞いた所為で頭が痛い。


 まず制限した状態でどこまで戦えるのかを試す為に、全力で身体強化したコブシをお見舞いした。


 いや、正直言って予想以上に痛かった、コブシが。


 なんだろうな、オリハルコンの塊でも殴ってるような感覚だ、殴った方が痛いなんてここ最近じゃなかったからか、思わず意固地になって更に何発も殴っていた、あと蹴りもいれた。


 当然だが地竜は俺の一撃に眉も顰めない、ふざけた防御力だ。


 周りの連中は俺の特攻に声援を送ってくれたが、何の効果も無いと分かると俺を援護する為に魔法で牽制してくれた、お手間かけましたすいません。


 俺は一旦下がって手の治療といってアッキーと作戦会議、どうしようか検討中。


「で、殴ればいけると思ったんだけど、思った以上に硬かった!!

 どうしようアッキー、あの地竜結構強いかも!!」


「強いんだよ、単純な破壊力なら前戦った焔竜なんて目じゃないんだぞ?

 速さを犠牲に攻撃力と防御力の二極性能な竜種、それがあいつだ。

 お前みたいなチート魔王が不意打ちでしか倒せないってのがその証拠だろう?」


「いや、不意打ちが俺の基本スタイルだけど?」


 いや、分け知り顔で言ってくるけどアッキー、俺正々堂々なんてやらないし、めんどいから。


 背後からブスリ、これが俺の常道です。


 手間が省ければそれで良し、騎士道云々も持ち合わせていません。


 それを考えると、隻眼の奴はラザニアの街で再会した時不意打ちかましてくれたが、あいつ本当にエルライドの近衛騎士か?


 俺はといえば魔王だからそんなの気にしない、不意打ち上等、暗殺ラブだ。


「……不意打ちをしないと勝てないと思うのがあの地竜だぞ?」


 あ、少し言い換えてきた、ここはスルーしよう、なんか顔が赤いし。


 こんな状況じゃなかったら小一時間は弄るんだが、まぁ問題は目の前の地竜(アレ)だ。


 あと出来るのは影を使った攻撃なんだが、どこまであの地竜に通用するのやら、疑問である。


 これまでは影狼、影鬼、あとは影の鎧を変形させた刃で魔獣戦っていたが、スケールの違う相手だ、効くか怪しい。


 特に影狼、あれは間違いなく使えない。


 影鬼は…ちょっと難しいかなぁ。


 となると、やはり秘密裏に違う魔法をバレないようにぶっぱするしかないという結論になる。


 幸いこの場には5属性の魔法を使える種族が揃っている、それに紛れ込ませて地竜にダメージを与えるしかないだろう。


 空間魔法もあるし、影を使った刃に纏わせて斬るという手もある、大丈夫だ、問題ない。


「という訳で、まずは小手調べ」


 カマイタチを空間魔法経由で地竜の背中にぶつけてみた。


 やっぱ得意な魔法でどれくらい効くか確認しないとな、プラズマをぶっぱした場合、最悪犯人探しまでされそうだからまずい。


『―――■■■■■■■■■■■っ!!』


「やったか!?」


「アッキー、それフラグだぞ?」


 地竜が俺の魔法を喰らってその動きを止めた。


 さすがにあれ位の魔法を喰らっちまえばどうとでもなるのか、意外とチョロイ…のかも?


 とはいえ、アッキーの発言であんまり地竜にダメージが入ってる様に見えない、むしろ逆上した気がする。


 斬れたがキレてる、そんな状況だった。


「ほら見ろアッキー、お前の所為であの地竜元気じゃん。

 勇者補正舐めすぎだぞ?」


「待て、あれは俺の所為なのか?

 どう考えてもお前の魔法が中途半端に効いたからじゃないのか!?」


「勇者補正コワイネー、チョーコワーイ」


「話をきけぃ!!」


 聞こえません。


 まぁ冗談はさておき、すごいなあの地竜。


 俺の魔法であれか、焔竜同様空間魔法でブロックにする気でいかないと間違いなく|判定負け(魔力切れ)するな、竜種の『対魔法防御』は伊達じゃない。


 そろそろ前に出るか、やっぱり影魔法と空間魔法の合わせ技だな、ちょっと位怪しまれても特異魔法だからってゴリ押しするしかない。


「影刃、切り裂け!!」


 高位冒険者たちの魔法の隙間を塗って再度地竜と接敵、両腕に生やした影の刃で地竜に一発入れるとしようか。


 背筋の凍る地竜の乱杭歯がぎらついていて怖いが、そうも言ってられない。


『―――■■■■■■■■■■■っ!!』


 よし、効いてるな、いい感じに血もドバドバ出てる。


 下顎に良いの入れたからな、そりゃ痛いだろう。


 とはいえ、地竜からしたらカッターナイフでブスッと刺さったくらいだろう、もっと深く、骨まで届く一撃を喰らわさないとな、あと啼き声で耳が痛い。


「って、こいつ止まらないぞ!?」


 ていうかこの地竜ジタバタし始めた、おかげで局地型地震を喰らう形になった俺たちはその場に釘付けに。


 突然の地竜の行動に転んでしまう一部の冒険者が続出した。


 幸いなのはあの地竜がロクに動けない俺たちに追加攻撃をしなかった事か、助かった。


「ユーリ、さっさと戻れ、足元にいると潰されるぞ!!」


「分かってる、お土産置いとくんだよ!!」


 もちろんバレない様な魔法だ、地魔法で足場崩してジタバタするその邪魔な足止めてやる。


 落とし穴を喰らった地竜は右足を根元から深々と踏み抜いた、四本足でないと自分を支える事の出来ない地竜からすれば致命的だ。


『―――■■■■■■■■■■■っ!?』


 地竜も驚いてやがる、冒険者の連中も驚いているがまあそれはいい。


 肝心なのは、こいつがこれ以上身動きすることが無いっていう事だ。


 んじゃまあ、本番だ。





 ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■





 突如地面にあった穴を踏み抜いたことに驚いた地竜、そして冒険者たちは当初驚いたものの、これをチャンスと思い一斉に地竜に襲いかかる。


 特に顔面、急所とされる場所に魔法は殺到した。


 個々の魔法は地竜にとっては何ともない小石を投げるようなものだが、それの中に尖った石が入っているというのも、低い確率だがあるだろう。


『―――■■■■■■■■■■■っ!!』


 それにより、地竜が苦悶の表情を次第にし始めたのは、冒険者たちにとって行幸と言えただろう。


 何しろユーリ1人で地竜に大きな傷を残したのに、高位冒険者が束になっても表情一つも変えられないというのは恥以外の何物でもなかったからだ。


「効いてる…効いてるぞ!!」


「もっと魔法を集中させろ!!」


「もう片方の足も落とせ、完全に動きを止めろ!!」


 口々に冒険者たちが全員に指示を張り巡らせる、これがチャンスと分かっている以上真剣さが伝わってくる気迫である。


「はははははっ!!

 ずっと俺のターン、みたいな!?

 んじゃ先輩方、俺はこの地竜を痛めつけとくんで、援護お願いしまーっす!!」


「待てバカユーリ、作戦の邪魔をするな!?」


 とバカ笑いをしながら声を掛けられた方向を冒険者たちが見ると、そこには黒装束の影とガシャガシャ音を立てた鎧姿の青年が一直線に地竜に向かっていた。


 単独で地竜に傷をつけたランク4の冒険者ユーリ、そしてその後を付いていっているのが、|冒険者見習い(ランク0)アキラであった。


「あいつら、また勝手なことを!!」


「どうするダニエル、止めるか?」


 この戦場の中で最もランクの高い冒険者、【疾風】ダニエルに指示を求めたが、ダニエルは首を振って2人を止めなくていいと返した。


 ユーリの実力は既にこの戦場で実証済みだったし、アキラに関しても行動を共にしてただの見習い以上に戦闘能力のあるヒューマンだときづいていたからである。


「武芸大会優勝者は伊達じゃないな、あの膨大な魔力に影を操る特異魔法、あれがあの地竜を倒す唯一の鍵だ。

 アキラ君に関してもただの見習いじゃない、この戦場の最前線でヒドラやバジリスクとも戦える実力者だ、問題ないだろう。

 生憎と私は小手先専門だから行動を共に出来ないが、よほどの事態がない限り心配はいらない」


 ダニエルの専門は盗賊退治といった対人戦闘に特化した戦闘力だ、それ故に彼の戦いには魔獣に対する決め手に欠けていた。


 ヒドラと戦っていた際、魔獣討伐を専門とするエルフの冒険者ならばヒドラ程度30分とかからないだろう戦闘に、ユーリやアキラの援護がなければ倒すことが難しいと言えるほどに、ダニエルには魔獣との戦闘には他の冒険者より劣っていたのである。


 だがその判断力や洞察力は他の追随を許さず、ランク8という最高位一歩手前という一握りの冒険者としての実力を示していた。


 その彼が良しとしたのである、経験の浅いハーフエルの子供とぽっと出の新参冒険者に不安は感じつつも、その言葉を皆が受け入れた。


 現にあの2人はダニエルたちの心配を余所に楽しそうに、怒りながら地竜を痛めつけていたのだから。


「よっし、これで8ケ所目だ!!

 そういえばアッキー、8っていえば…」


「黙って斬ってろ戦闘狂ショタ!!」


 ―――実に楽しそうである、怒っているアキラが若干気疲れしていたが。


 だが、楽しんでいるだけあって地竜には遠くからでも分かるほどの切り傷が次々と出来ていて、それを補佐するアキラも傷口に火玉や、巨岩をぶつけたりと着実に地竜に地味ではあるが嫌がらせを実行していた。


 地竜も2人が鬱陶しくて堪らないのか、何とか暴れて振りほどきたいようだが、身動きがロクに取れない上に、頭を上下させて吹き飛ばそうにも2人の絶妙なバランス感覚が見事にアトラクションと化していてまるで意に介されてもいないのだ。


 攻撃が一度止まる程度の付け焼刃にしかなっておらず、まるで抵抗にもなっていなかった。


「あははははっ!!

 ヤバイ、ヤバイよアッキー、この地竜バカだ!!

 ふっ飛ばしても戻ってくるのに、まだ俺たちを吹っ飛ばせるって気でいやがる!!」


「バカはお前だっ、いいから戦闘に集中しろ、油断するな!!」


 仲の良い掛け声を聞きながら、冒険者たちはようやく地竜のもう片方の前足を地面に踏み抜かせる事に成功した。


 地面を程よく水分を混ぜ合わせて沼にしたのである。


 アキラがその実力を示す為にランディと戦った時に見せた魔法に瓜二つであった。


 ユーリとアキラが他の冒険者たちの活躍に気付き手を上げて喜びながら綺麗に地面に着地していたりと、注意を2人に集中させた事による結果だと理解しているのだろう。


『―――■■■■■■■■■■■っ!?』


 地竜がまたも自分の前足が動かせなくなった事に驚き、たまらず啼き声を上げる。


 後ろ足だけでは自重を支える事も出来ず、地竜は地面に這い蹲る事となった。


「よし、作戦は成功したぞ!!」


「ここからが正念場だ、ユーリ君と協力して、あの地竜に少しでも大きな―――っ!!」


 と、ダニエルの声が突然に止まった。


 地竜の動きに変化があったのに気付いたからだ。


『―――■■■■■■■■■■■っ!!』


 地竜の巨大な口が大きく開かれた。


 そして、誰もが予想だにしていなかった事態が起きる事となる。


「はっ、なにこれ、まさかすいこまれてっ!?」


「ちぃっ、地竜の攻撃か、浮いた状態じゃ移動がっ!?」


 すぐ目の前にいたユーリ、そしてアキラがその異常事態を最も早くでその身に感じる事となった。


 突如身体が浮き、抵抗もロクに出来ずされるがままとなったのである。


 そしてされるがままとなった2人が向かわされた先が、地竜の口となればさすがに先程のユーリの様に笑っていられる事態ではない。


 しかし、誰もが地竜の起こす行動に手を出す事が出来ずにいた。


 ダニエル達も、地竜の影響下にあったからである。


 辛うじてダニエル達に出来たのは、その場に留まり自分に降り掛かろうとする被害を抑える事だけだった。


「い、いや、まずいっ、まずいからねっ!?

 あんなトカゲの臭い口の中に入るとか絶対にヤダーーーーーッ!?」


「だったら全力でどうにかしろバカユーリ、そのチート振りを今こそ発揮しろっ!?」


「ユーリ君、アキラ君っ!?」


 激しく抵抗を試みるユーリとアキラだが、地竜の大きく息を吸い込んだだけの行動に為す術もなく、その姿を完全に見失ってしまった。


 2人は、地竜に呑み込まれてしまったのである。


読んで頂き、ありがとうございました。

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