第41話 まさかの竜退治
本日3話目です、間に合いました。
ブックマーク90件、まことにありがとうゴザイマス。
そしてお知らせです。
明日のお話は事情により1話のみとなります。
現れたのは俺が少し前にズタボロにした災害指定魔獣、焔竜クンがいた。
洗脳したはいいけど、半殺し以上の状態まで追い込んだ所為かな、俺の指揮下にいる筈なんだがものすっごい殺気を向けられてます。
なんで?
「……それでユーリ、あのドラゴンはお前の命令を聞くのか?
どうもお前を殺したくて仕方なさそうな殺気が向けられているんだが」
「やっぱそう思うアッキー?
うーん、やっぱりブロックみたいに空間魔法でブツ切りにしたのを洗脳した後も恨んでいるのか?
洗脳する時にその辺り完全に記憶抹消したんだけど……そっち方面失敗したのかなぁ」
それなりに上手くやれた感触があったんだが、気の所為だったようだ、やっぱりその辺りの才能は俺には無いみたいだ。
あっても困るが。
「…むしろその記憶抹消で完全にイカれたんじゃないか?」
なるほど、アッキーの意見に同感だな、やり過ぎて壊れちゃったのか、それならあのドスの利いた唸り声にも納得だ。
となると、俺の焼き付けた命令も更新は出来なさそうだな。
「……でも、こいつ今回の魔獣大侵攻でボスキャラになってもらう予定だったんだけど。
今更ボスキャラの補充は難しいんだよなぁ」
「そうも言ってられんぞユーリ、あの焔竜から凄まじい力を感じる!!」
おっと、焔竜クンがなにやら臨戦態勢に、本格的に殺し合う気満々ですな。
「……仕方ない、役に立たない道具はここで破棄しよう。
アッキー、援護よろしく。
元々ランク8の災害指定魔獣だけど、壊れてるから見境無くなってると思う」
「面倒ばかりかけやがって、加減というものを覚えろ!!」
その点については小なりとも反省してます、申し訳ない。
とはいえ、勇者&魔王VS狂った焔竜なんて中々に良い竜退治の演目じゃないか?
魔獣大侵攻もここまでくれば統率役のこいつも不要だし、ここいらで邪魔な奴はご退場願おうか。
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竜のブレスは魔法ではない。
竜の体に備わっている『竜胆』と呼ばれる器官を通して吐き出すのだ。
属性竜によって吐き出すブレスも違い、魔力を使わないのに魔法以上の威力を誇るその力はまさに怒る災厄だ。
「…鉄壁の空間魔法でもビリビリ響くし、前より威力上がってる気がするんだけど!!」
「壊れているからペース配分が分かっていないんだろうっ、というより魔法適正値100の俺の魔法が効かないぞ、どうなってる!?」
壁役をしているユーリは焔竜のブレスにぼやきながらも空間魔法による防御を維持していた。
焔竜はユーリやアキラ以外にも魔獣達がいるのに巻き込む形でブレスを放ち、月が照らす光以上に地上は一気に明るくなった。
そしてアキラは魔力回復のポーションを飲みながら強力な魔法を焔竜に放ち続けているが、その魔法が焔竜に届く前に見えない壁によって阻まれていたのだ。
既にポーションを10本近く空けてしまっているのだが、効果はまるで見られない。
「竜が持っている『対魔法防御』だね。
竜鱗が特殊な妨害電波みたいなのを発して魔法を無効化…というか魔力を分解してるんだよ。
アッキーの持ってるオリハルコン製の武具の親戚みたいな?」
「それで、どうやってお前はその竜をバラしたんだ!?」
「防御力を上回る魔法で強引にブチ抜いた」
「何たるゴリ押し!!
見た目に反してその筋肉思考どうにかしろ!!」
「今そんな事言ってる場合?
いいからとっとと竜退治してよ勇者様」
焔竜との膠着状態をまるで気にしていないユーリだったが、一つ危惧している事があった。
この燃え盛る森がどれほどの距離から見えるのかである。
魔獣大侵攻の中でも最後尾ともいえるこの森に襲撃したユーリ達だが、危険を犯してまで冒険者が斥候が出張ってきている恐れがあったのだ。
公爵領を山2つほど越えた森とはいえ、半日あれば公爵領から辿り着ける距離である。
となれば、山という遮蔽物がなくなってしまえる距離にまでいれば、斥候に特化した冒険者ならば必ず異変に気付くだろう。
何しろ現在進行形で火は燃え広がっている、ユーリが空間魔法と平行して水魔法で火消しを行っているが、消した箇所からまた燃えていくのである、イタチごっこであった。
「さすがにこれ以上魔法の同時起動となると魔力的にきつくて無理なんだよ。
防御に使っている空間魔法の比率が強くてさ、あと火消しの水魔法で手一杯。
いやー、勇者のアッキーがいてくれて助かった。
という訳でアッキー、勇者補正でも何でもいいからパワーアップでもしてあの竜退治して」
「ご都合主義を現実に持ってくるなこの残念ショタめ!!
称号に【勇者】とあるが、光魔法と5属性の魔法適正値上昇以外何の役にも立っていないわ!!
さっさとアドバイス寄越せこのお助けキャラめ、降板させるぞ!!」
「ナニその物騒な響きは!?
しかもお助けキャラとか魔王にあるまじき配役、みんな誰しも自分という物語の主人公なんだよ!?
勝手に降板とかマジふざけんな!!
あとアドバイスってさっきから言ってるじゃん、ブチ抜けって!!
もっと魔力練って詠唱使ってイメージ固めてぶっぱしろっての!!」
空間魔法における安全圏内にいる所為なのか、口ゲンカのヒートアップが絶え間なく続いていた。
しかし、消費されるのはポーションばかりでアキラの魔法はやはり焔竜には届かないでいる。
お助けキャラからのアドバイスといえども、実戦経験の足りないアキラではこの状況下における機転というものが発揮されずにいた。
「だから、具体的なアドバイスと言っている!!
その図書館みたいな知識量を駆使して俺でも行使出来る魔法を考えろ!!
何かあるだろう、神話系の神が使っていた武具や道具、それに魔法が!!
とっとと発揮しろこの中二!!」
「だから俺をそんな目で見るなって言ってるだろ、なに言っちゃってるのこのダメ勇者!?
………って、何真面目に考えてるんだよ俺!?
…あーもう、時間が無いから具体的なアドバイスあげる、だから今度こそやってよね!?」
ついに焔竜がブレスをやめて強引に空間魔法の防御を破ろうと体当たりしてきた。
超重量からくる焔竜の体当たりは今度こそユーリの空間魔法による防御を揺るがした。
アキラにアドバイスをしていたユーリは完全に予想外な焔竜の一撃に、重ねていた10枚の防御壁を一気に半分以下にまで減らされて驚愕した。
すぐに防御壁を10枚に戻したが、焔竜が体当たりを続けている限り対魔法防御による魔力阻害を利用した一撃で防御壁は減り続けた。
「…これでどうよアッキー、詠唱まで全部考えて上げたんだ、これでダメならマジ置いて逃げるからね!?」
「よくやったユーリ、褒めてやろう。
あとでご褒美のアメをくれてやる」
「……軽口はいいから、冗談抜きで防御壁がゴリゴリ削れてるんだって!!
早く竜退治してってば!!」
ユーリが焔竜と1人で戦った時はここまで時間などかけなかった。
完全な不意打ちを焔竜に勝利した事もあり、正面からの戦闘を想定していなかったのである。
魔力量には余裕はあっても信頼していた防御壁を何度も削ろうとする焔竜を目の前に心は平静ではいられなかった。
「―――戦場を制する大いなる神の槍よ」
アキラの詠唱が始まる、ユーリは自らの知識から汲み出した独自のイメージを詠唱にしてアキラに全て解説までしてアドバイスしたのである。
詠唱は長いものの、それだけイメージと魔力を練る事でその威力を以ってして焔竜の鱗を貫こうとしたのだ。
「我が手に勝利を、此の槍に貫けぬ物は無く、逃れるものは何も無し!!」
アキラの詠唱がその終わりを見せ、右手に超圧縮された魔力が顕現する。
間違いなく焔竜の強靭な鱗を貫けるだけの魔力を持っていた。
「戦場を駆けよ、射殺せ―――グングニル!!」
―――北欧神話における主神オーディンのもつ投槍。
戦と死を司る神の持つ必中必殺の神器であった。
放たれた光の槍が一直線に焔竜に向かって放たれる。
「■■■■■■■■■■―――っ!!」
対魔法防御をも上回る必殺の槍は焔竜の心臓を確かに貫いた。
強靭な鱗を貫き、心臓を破壊し、断末魔を上げて地響きを鳴らしながら倒れた焔竜はピクリとも動かない。
災害と呼ばれた魔獣は、もはや永遠に物言わぬ死骸と化した。
防御壁を展開したままユーリは焔竜に近付いていき、その反応を確認し始める。
「……ミッションコンプリートだね、焔竜クンは死んだよ。
お疲れ様アッキー、さすが勇者様、土壇場でよくやったよ。
さて、さっさと帰ろうか。
さすがにこれだけの状況だ、間違いなく斥候が偵察しにこの場に来るよ」
労いの声をかけたのも束の間、ユーリはこの場から即座に離脱することを決めた。
捨てた小瓶を回収すると、異次元バックに焔竜を詰め込む。
焼け野原になった森を治す事は出来ないが、せめて証拠物件である焔竜は回収したのだ。
「ユーリ、この後はどうする?」
「どうもしないよ、魔獣達が魔獣大侵攻の途中で食糧不足で仲間割れを起こして結果的に魔獣は減った。
斥候はこう判断するしかないでしょ?」
「そうか…まぁ、お前が言うならそうなんだろう。
先輩冒険者の判断に従うとするさ」
一気に普段使わない以上の魔力を使った所為か、肩で息をしているアキラはユーリの言葉に素直に従った。
ユーリも思わぬ苦戦にもはや悪態も皮肉も言える気分ではなく、早く帰って少しでもいいから眠りたかったのである。
「んじゃ帰るとしようか。
ああ、この焔竜は俺の異次元バックに入れたけど仕留めたのはアッキーだからまた折を見て返すな。
勇者の活躍に、感謝感謝」
「具体的なアドバイスに感謝だ魔王陛下。
早く帰って寝るぞ、目が重くて敵わん」
普段ならここまで素直に感謝の言葉など口にしなかったが、お互いの疲労がピークとあり、自分たちがどれだけ素直になっているのか気付きもしなかった。
魔王と勇者の竜退治は、誰にも知られずに為されたのであった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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