第39話 火消しに向かって出発進行
今日は頑張って3話更新…してみようかと。
あと、感想にもあったんですが、『BLっぽい』とありましたが、キーワードにはありません。
主人公の対人距離がおかしいだけです、本人は友情としか感じていません。
という訳です。
アッキーの引き篭もりを素晴らしいお説教で解決した次の日、冒険者ギルドに王国から正式な依頼が来た。
魔獣大侵攻を討滅する為の義勇軍編成の依頼だ。
総指揮は決まりきった事だが俺のご主人エルライド王子様。
側妃の実家だからとアボリスも自ら声を上げたが、原因不明の腹痛に襲われて辞退する事に。
悪魔的な確率だな、無能王子は運もなかったと見える。
構成はランク1は後方支援、ランク2から中衛から前衛、ランク3以上は前衛となった。
魔法使いは後方からの砲撃で前衛の支援を、治療院にも依頼が行っているようでケアは万全だ。
ランク0は物の役にも立たないから必要ない予定だったが、俺依頼の超新星がいるからな、アッキーには俺専属の小間使いになってもらった。
義勇軍は午前中には編成された。
正式発表されるより前に情報が既に出回っていたらしい、誰が流したんだろうな?
冒険者は全部で700人ほど集まった、王族からは近衛騎士300追加されて人員は約1000人となった。
周辺の領地にいる冒険者も含めれば余裕で2000人は超えるだろう。
今回洗脳した魔獣のランクとか数とか諸々を考えればこの3倍は欲しいんだが、そこはほれ、貴族勢力に頑張ってもらおう。
そして現在、あれよあれよとしている内に午後になると早速出発した。
食料とかは冒険者ギルドが魔獣大侵攻に備える為の保存食を提供してもらっている。
伊達に儲けていない訳だな、しかも無料だから恐れ入る。
そして俺はアッキーの乗馬訓練に相乗りさせてもらっている、グラグラ揺れて座り難い、2人乗りは少しきついな。
「アッキー、あとどれくらいでサウザー公爵領に着くのかな?
腰…というよりケツ痛い」
具体的に言うと尾てい骨が痛い、ジンジンするんです。
水魔法でこっそり治してもすぐ痛くなるから我慢していた。
「鞍にちゃんと座らないからだろう。
あと操縦の邪魔だ、大人しくしろ」
「暇なんだよ、なんか面白い話提供よろし。
具体的に言うとアッキーの恋愛関係の失敗談がいいな、爆笑してやるからさあ話せ、喋れ、娯楽を寄越せ」
「どこの暴君だお前は…乗馬の訓練が忙しいんだ、雲でも数えてろ」
素気無くあしらわれたので、俺はアッキーの馬から降りてハロルドさんのいる馬車に行く事にした。
ギルドからも人員は送られてきている、治療院の連中と一緒にいる所悪いが、暇なんで混ぜさせてもらおう。
と思っていたんだが、なにやら治療院の人員配置をしていたので、入る事は出来なかった。
仕方なしに暇だからフラフラしていたら、哨戒に出ていたサムズさんに人員が足りないとか言われて捕まってしまった。
遅くまで哨戒させられて、俺用のテントに帰った時にはどっぷり夜が更けていた。
暇じゃなくなったけど、ここまで時間を潰すつもりなんてなかったのに…解せぬ。
何故かアッキーが先に寝ているし、氷漬けにしてやろうかこの野郎。
その日は特に何の問題なく行軍は進んでいく。
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王都を出発して3日目、乗馬もそこそこ上手くなったアッキーの背に揺られて今度こそ俺は暇を持て余していた。
とはいえ、ここ2日の経験で俺は動こうとはしない。
フラフラしていたら知らない内にとっ捕まって便利屋扱いはもう嫌だからな。
何で前線担当の俺が後方支援の料理番しないといけないんだよ、鍋振るの疲れるんだよ。
どうでもいい連中の為に鍋を振るとか怖気が走る、なのに俺の料理は噂が噂を呼んで長蛇の列に。
元凶どこだと思ったら本来鍋を振るってる筈のアッキーだった、なに女とイチャイチャしてんだ仕事しろ、あと爆発しろ盛大に。
さすがに片付けはしなかった、腹いせとばかりにアッキーの端正な顔を何発か殴っていい加減仕事させた、仕事しろ小間使い。
ていうか意外な一面を発見、友人を殴ったというのに何故か笑いが止まらない。
こんな一面があったとは…自重しよう、癖になったら困る。
頬を腫らしているアッキーを眺めながら夕食をとっていると、騎士の1人に声をかけられた。
というより隻眼だった、食後の紅茶が不味くなったぞ。
何でもエルライドが呼んでいるらしいのでこいとの事だ、魔道具使えばお前と会わずに済んだのに、察しろよ。
アッキーを残して俺は王族のいるテントへと向かった。
もちろん俺は特に持ち物検査はされずにテントにと入った、事情を知らない近衛騎士からは睨まれた、信用の違いというものだよきみー。
テントの中にいたのはエルライドに隻眼、そして見慣れない老騎士がいた。
貴族…だよな、この場にいるとすれば。
「よくきたねユーリ、はじめての行軍の感想はどう?」
「やらなくてもいい事させられて精神的に疲れてます。
それ以外には何も、体力的には何の問題はありません、冒険者ギルドのハロルドさんにお聞きしたかもしれませんが、哨戒している冒険者のおかげで行軍している冒険者や近衛騎士のみんなが怪我無く進めているのは良い事だと思いますね。
それくらいでしょうか?」
サムズさんが張り切っているおかげで哨戒してる冒険者にも脱落組みはいない、最近彼女が出来たらしく、今回の魔獣大侵攻で活躍して結婚を申し込みたいらしい。
…申し込んでいないのならいい、していたらなんとしてでも今回の魔獣大侵攻は止めていただろうからな。
エルライドは満足して頷いていると、老騎士が口を開いた。
年に似合わず背筋が伸びていて鎧越しでも鍛えていると分かる。
老いてなおこの気迫か…隻眼よりも強かったかもなこの爺さん。
「王子、このハーフエルフの少年がそうなので?」
「そう、彼がユーリ・ミツミネ。
紹介するよユーリ、こちらはフラウ・フォン・ミュンハウゼン子爵。
近衛騎士団総団長をしている生ける伝説だよ、僕の協力者でもある」
という事は、この老騎士は味方と考えてもいいんだな。
何ていうだろう、歴戦の勇士とでも言えばいいのかな、実力は間違いなく俺が上だけど、一筋縄ではいかない佇まいと言うか…心がざわつく感じだ。
対する老騎士―――フラウ爺さんは飄々とした表情を崩さずに俺に笑いかけてみせた。
人生経験の違いを見せ付けられた気がしてならない、エルライドの周りには優秀な人材が揃っていて良い事だな。
「はじめましてユーリ殿、某はフラウと申す。
かつてラインハルト第一王子の護衛を務めさせて頂いていた者じゃ。
……ふむ、そのふてぶてしい目つきはお父上に似ておるのう」
なんと、この爺さんは父さんの護衛だったのか。
これはこれは、嬉しい出会いだな、小さい頃の父さんの話を肴に…まだ酒は飲めないが、食事を一緒にしたいな。
クソ、こんな事なら先に来ればよかったのに…隻眼め、気の利かない奴だ!!
「……王子様、こちらのフラウ子爵は事情を全部知ってるんで?」
「知ってるというか…気付かれた?」
何でも学院に護衛をしてきていた際に王宮に迎えに来ていた頃、俺とエルライドが一緒の馬車に入っていくのを遠目から偶然見たフラウ爺さんが俺を見て直感で気付いたらしい。
予想外過ぎるだろいくらなんでも…第六感が大変優れているようで、ちょっとドン引きした。
元々エルライドの味方だったけど、さらに腰を入れて協力してくれるようになったらしい。
色々と思う所があり過ぎるが、さすが父さんの護衛だなと思っておこう、感謝感謝。
「フラウ爺さんでいいぞユーリ殿、こんな年寄りに堅苦しい言葉は不要じゃからな」
「じゃあ…フラウ爺さん、父さんと俺って似てるの?」
「カリュラリシア様にも似ておるな、お2人の良いところを受け継いだようじゃ、将来はさぞ美男子になるじゃろうて。
まぁ、わしぐらいしか気付かぬじゃろうし、気にする事はないぞ?」
だろうね、さすがに直感で気付くとか超能力としか思えないよ。
何だろう、もしかして俺戦ったら負けるんじゃないかこの爺さんに?
ステータスは見てみたいが…やめておこう、見たら更にドン引きする気がしてならない。
俺がステータスを覗きたいのを我慢しているのに気付いたのか、フラウ爺さんがまた笑った、もうヤダこの爺さんマジ怖いんだけど。
「……それで、俺を呼んだのってフラウ爺さんと会わせる為だったの?
だったらこんな時じゃなくてもよかったんじゃ…?」
「まあ、こっちはついでだね。
本題の前に片付けておこうと思ってね」
「というと?」
「サウザー公爵家の間諜が入り込んでいてね、今回の僕の遠征を失敗させようと動いているんだ」
ほほう、つまり俺にケンカ売ってると。
よろしい、ならば戦争だ。
ミンチじゃ生ぬるいほどの絶望をたっぷりと味合わせてやろう。
「そいつらを全員秘密裏に処理するのが俺の仕事って事で良いのか?」
さすがエルライド、本来の俺の使い方がよく分かった仕事を振ってくれるな。
そうそう、俺は本来こういった後ろぐらーい仕事がお似合いの男なんです。
何せ黒装束、とっても暗殺者っぽいじゃん?
「ユーリ殿のような本来高貴な生まれの方にお願いするのは大変無礼であるのは承知じゃが…お願い申し上げる」
深々と頭を下げて来るフラウ爺さんに俺は無理やり頭を上げさせた。
俺の心の隅っこにある敬老精神が疼く、この人は天敵だな。
「ああ、いいよフラウ爺さん、そんな頭下げなくたって。
こういうのが一番性に合ってるんだから。
最近はなんか表舞台に出まくっていたけど、俺の目的は帝国連中への復讐なんだからさ。
で、その間諜ってやっぱり帝国の奴らだったりするの?」
「十中八九、帝国だろうね。
しかも性質の悪い事に、ソラージュ王国から赤子を奪って帝国の為に働く間諜を育成しているらしくて…正直腸が煮えくり返っている所」
ほんっと、帝国って碌な事しないな。
面倒極まり不愉快絶頂といった所か、なるほど、やる事為す事えげつないな。
この借りは10倍返しでいこう、そういう組織があるのなら、復讐する時に最優先で潰していこう。
「…ちなみに、寝返らせる事とかは可能か?」
「強力な洗脳を施されていて無理でな、わしらにしてやれる事は…」
なるべく痛みを感じる事無く息の根を止めてやるしかないか。
…あれ、随分前殺した間諜もソラージュ王国の人間だったのかもしれないのか。
「……了解だ。
それじゃあ明日から行動に移るわ。
魔獣大侵攻に備えながら帝国の間諜も対処すると…なかなか高度な任務じゃん、燃えてきた」
「魔獣大侵攻に関しては完全に自作自演だろう。
詳細な規模を見て呆れたぞ、1週間であれほど…公爵領が荒野になってもおかしくない規模だぞ?」
隻眼の奴が残念な物を見る目で俺を見てくる…というか、ここにいる全員が俺の事を生易しい感じの、生温かい目で見てきていた。
何だよ、せっかく頑張ってきたのにそんな目で見やがって…そんな悪い事したか?
「「「悪いだ(じゃ)ろう」」」
なんて息の合った三重奏、気持ち悪い。
「まぁ、計画を立てたのは僕だし、将来の功績で埋め合わせるとするよ」
なんていうエルライドはもう次期王としての風格が漂ってまいりましたよ。
うーむ、なんていうか直視出来ない。
可愛いし頭良いし言う事無しだな、頼もしい限りだよ俺のご主人様は。
まぁその期待に応えて、俺は俺の仕事をするとしようか。
「それじゃあ俺はこれで。
何かあったら魔道具で連絡してくれ、今回みたいなのはもう無しにしてくれよ?」
そう何度も呼ばれたら間諜共も怪しく思って逃げるかもしれないからな。
「うん、よろしくね。
このシナリオが終わったら…ユーリの事情も楽しみにしているからね?」
念押しするなってエルライド、分かってるから。
言質取られているんだから、ちゃんと話すって。
その後、またもや先に寝ているアッキーをテントから追い出してゆっくり寝る事にした。
読んで頂き、ありがとうございました。
感想など、お待ちしています。




