第37話 勇者役は終わり、冒険者に
日常パートちょーたのしーです。
ブックマーク70件越え、ありがとうゴザイマス。
次のお話は…今日中という事で。
「もしもーし、ボク魔王様、勇者様聞こえるー?」
『聞こえるぞ残念ショタ、さっさと回収しろ』
なんとも酷い返しがやってきた、ショタって言わないでくれないかなもう。
アッキーを呑みこんだ魔獣の波から予め付けていた座標を検索して回収した。
成功するとアッキーが勇者の証である剣と鎧を脱ぎ始めた。
「ほれ、じゃあこれをあの波に放り込んでくれ」
「あいあいさー」
アマリア教国がいう所の聖剣と聖鎧を俺はさっきまでアッキーのいた魔獣達の波にと転移させた。
てっきりオリハルコン製の武具かと思ったけど、造りが良いだけで無駄に金ピカで人目のつくだけだった。
「さて、魔獣大侵攻を人為的にやってみたけど、どうだったアッキー。
魔獣たちは期待通り公爵領に破壊を撒き散らしてくれるかな?」
「さぁな、俺は元々この世界の住人じゃないから別段この世界の住人がどれだけ死のうと知った事じゃない。
まぁ、お前らの言うところの貴族勢力を中心に戦力が削いでくれるのを祈るのみだ。
さすがに無関係の連中が死ぬのは目覚めが悪過ぎるからな」
「あはは、勇者らしからぬコメントどうもありがとう。
で、どうするの、早速顔を変える?
服も用意してあるよ。
なんと俺とお揃いの黒しょうぞぐっ!!」
何故か殴られた。
最近俺拳骨されまくりだな形の良い俺の頭蓋骨が歪んだらどうしてくれるんだまったく。
「なんでお前の服とお揃いにならんといかんのだ、他の服を出せ他のを」
「いやだって俺基本これしか着てないし。
けどこれすごいんだよ?
このしっとりとした肌触り、音を立てない素敵設計、防水加工もされているなんて素晴らしいとしか言えないだろ?
時間が無かったから仕立て直してアッキーの身長体格に合うようにしているんだぞ?」
俺の手作りじゃなくて暗殺者どもの装備品だが、相変わらずこれはお気に入りだ。
ちなみにハロルドさんから貰った服も、1ヶ月に2回は着ているぞ。
「…まったく、この1週間何をしていたんだか」
呆れたような目で見てくるアッキーだが、それにはさすがに物申したい。
これでも忙しかったんですよ?
「だって当初の計画じゃランク5以上の魔獣を1ダースほど集めればよかったのに、王子様の計画の所為で魔獣大侵攻を人為的に作り出す為に国中の強い魔獣集めまくって洗脳しまくってたんだよ?
いくら集団のボスだけを洗脳して一ヶ所に集めて共食いさせながらアッキー達のいる方向にぶつけるのすっごく苦労したんです!!
ちょっとは労わっても良いくらいだ。
という訳で労われ、アッキーの為に粉骨砕身している俺に感謝の念を捧げろ!!」
「あーはいはい、ごくろうさままおうさまー」
なんていい加減な感謝の言葉だ、しかもご苦労様ってやっぱり上から目線じゃないかよおい。
物理的に上から目線なのはともかく、精神的にも上から目線とは…頑張ったのに。
「ふん、いいよもう。
アッキーがその服着ないならハダカ鎖帷子パンツ一丁で過ごしなよ止めないから。
あーあ、写メ出来たら絶対に保存ロックしてたのに」
素早く黒装束を隠して写メを取る仕草をして笑ってみせるとアッキーが苦々しそうな表情をした、ざまぁ。
「ちっ、仕方ないな、ほら寄越せ着てやる」
渋々手を出してくるアッキーだが、そうは問屋がおろしません。
これでも頑張ったんだから少しは労わってくれってんだ。
「いやですーアッキーはその姿で不審者として捕まってくださいー」
「ぐっ……分かった、分かった。
撫でてやるから服寄越せ、この格好で撫でるのは不審過ぎる」
何故俺の頭は殴るか撫でるかの二択しかないんだ。
いや、別に撫でられるのは嫌いじゃないが、俺は別に撫でられて水に流せるほど安い男じゃないぞ。
「……お、俺が頭撫でられて満足するとでも?
や、安く見るなよアッキー、俺はお高いんだぞ?」
「そうか?
良い事をした子供にはご褒美の飴をやって頭を撫でてやれば満足すると思ったんだが」
ニヤつきやがって、嫌な奴だなまったく。
見た目はこの形だが、アッキーより人生経験豊富なんだぞこのやろう。
「飴がダメなら食い物か?
金を貯めたら朝食から夕食まで奢ってやるからそれで勘弁しろ、一日限定だからな?」
「いいねそれ、それで手を打とうか。
うんうん、粘った甲斐があったもんだな。
それじゃあアッキーはこの服を着て。
予備の剣と鎧はこれね、オリハルコン製の装備でこの世界でも最強クラスの装備だぞ」
沢山あるから出し惜しみはしない。
魔法だけじゃなく物理防御にも優れているからなオリハルコンは。
「ゲームじゃ最高クラスの鉱物で出来た装備だったか?
なんでそんな物持ってるんだ」
「エルミナ神樹国と少し前戦争してさ、その時の戦利品。
けどオリハルコンは元々初代魔王バアルの研究成果だから、回収品ってところかな?
よかったじゃんアッキー、初期装備が最強装備って超安心設計だぜ?」
「……何やってるんだお前?」
予備の装備じゃねえだろと突っ込みを入れられたが、アッキーは武具は気に入ってくれたのか黒装束の上から鎧を付けて剣を装備した。
俺じゃ鎧付けられないから有効活用してほしい。
「さて、準備も出来たことだし、王都に戻ろうか?
魔獣大侵攻の報告が王都に来てから出発するから、まだ時間はあるよ。
それまでにアッキーの冒険者ランク上げて見習い期間をすぐに終わらせよう」
「冒険者ねぇ…ちなみに、お前のランクは?」
「確か…ランク4だな。
これでも至上最速でなっているから、アッキーはそれ以上の速度で更新してみる?」
「そうか、じゃあお前の半分くらいの速度でやれば普通ってことだな。
いい参考になった」
何それ酷い、道連れに出来ると思ったのに、残念。
「それじゃあこれからよろしくユーリ。
何から何まで世話になる、この恩は必ず返すから利子が貯まるのを楽しみにしておけ」
何から何までというのは、晴れて勇者から解放されたアッキーは当面の間俺の家に住まわせる事になる。
ハロルドさんに続き更に住人が増えるとは、予想していなかった訳じゃないが賑やかになりそうだ。
殊勝にも頭を下げたアッキーは不敵に笑って見せる。
顔を上げたら既に整形は完了していた。
うわ、髪色もヒューマン特有の金髪蒼眼だ、ゲルマン系の彫りの深い美形でアッキーの面影が…欠片も残っていないが、まぁ中身がアレだし、モテたりしないだろう。
あっと驚く美形なのに中身が残念とは、アッキー可哀想に。
心の傷製造機の今後が楽しみである。
「楽しみに待ってるよアッキー。
毎日楽しく利子が貯まっていくのを待ってるよ」
「言ってろ」
俺はアッキーの手を取ると、王都に転移した。
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王都に帰ってきてすぐ、俺はアッキーと一緒に冒険者ギルドに来ていた。
身分証を発行しておかないと危ないからなハロルドさんに受付してもらって登録をお願いした。
俺が普段ハロルドさん以外と一緒にいないからか、珍しいと思われてジロジロと見られているが気にしないことにする。
「ハロルドさん、この人が新しく冒険者なりたいって言うから連れてきたんだ。
登録お願いしてもいい?」
「いいぞ、今はちょうど仕事も少ないからな。
で…こちらはなんて呼べばいいんだ?」
ハロルドさんは今回の計画に反対していたが何も妨害したりしない事を約束してくれた。
まぁ人為的に魔獣大侵攻を起こすなんて胸糞悪いにも程があるよな、自分でやっておいてなんだが。
冒険者ギルドも被害を受けるだろうし、いくら公爵家周辺の貴族が大部分が当たるんだろうが、その辺りは納得してもらえなかった。
ハロルドさんはアッキーにも気付いている、ステータスを誤魔化そうと俺がこんな知らない相手に優しさを見せるなんて、勇者シャイン以外考えられないからだろう。
「アキラ・ミドウといいます。
よろしくお願いする」
西洋系の顔なのにアジア系の名前とはこれいかに…まぁ誰も知らない名前だしいいか。
「分かりました、こちらが登録用紙になります」
懐かしい、ハロルドさんの営業スマイルからの怒涛の説明が始まった。
しかもいつもより倍速だ、地味な嫌がらせをしているな。
チラッと俺の方をアッキーが見てきたが、俺は首を横に振っておいた、甘んじて受けてくれ、俺には止められん。
5分後、口から白いものが見えた気がするが、幻視だろう。
俺は早速アッキーのはじめての依頼を勧めていった。
ランク0の依頼は基本街の中が中心となっている。
ゴミ拾いに始まり教会の炊き出しなんてものもあったりで様々である。
別にランク1の依頼を混ぜてもよかったが、本人たっての願いだし2つほど依頼用紙を渡した。
これなら時間的にもどうにかなるし、身体強化で頑張ればどうにかなるだろう。
「それじゃ初のお仕事頑張って。
終わるまで冒険者ギルドで待っておくから、終わったら一緒に帰ろう」
「分かった、それじゃあ行ってくる」
場所は俺に聞こうとはせず、王都にいる人間に聞くことにしたらしい。
王都で活動するのなら積極的に場所を覚えていきたんだそうだ、ヒューマンの姿って羨ましいな、俺なんてハーフエルフだったから話掛けても気味悪がられたのに。
あれ、そういえばアッキーの種族って『ハイヒューマン』だった気が。
ヒューマンの上位種みたいなもの…なんだろうか。
…まぁ変化でどうにでも出来たが、しなかった俺が悪いんだがな。
ぼんやりしているとハロルドさんとノエルに呼ばれた、さっきのアッキーの件だろうか。
「……で、あれが例の奴なのか?」
「完全に別人ですね、お肌がツルツルで羨ましいです。
金額次第で美容の秘訣をお聞きしてもいいですか?」
やめておいた方がいいと思うぞ守銭奴、あれ魔法で整形しているだけだから何とでもなるから。
「好きにすれば?
俺は止めないし…まぁ、ハロルドさんのいう通り、あれが…今の勇者だよ」
勇者の部分は小さく返すと、ハロルドさんの表情がグルグルと回り始めた。
「そうか、あいつが…」
悩んでる悩んでる、ハロルドさんが困った目で俺を見てくるが、俺は知らないとばかりに両手を上げた。
「王子様が言うんだから仕方ないじゃん、別に心配しなくてもアッキーは強いから大丈夫だし」
「心配しているのはお前だユーリ」
「え、何が?」
心配される心当たりがどこを探してみても無い気がするんだけど、何かあったっけ?
「…あの計画では、魔獣大侵攻を対処するのは王族から代表してエルライド王子がするとなっている筈だ。
だが、お前はエルライド王子とは別で魔獣大侵攻に対抗する為の冒険者の義勇軍に参加する事になる筈だ。
王子の側にいなくてもいいのか?」
そう、ハロルドさんのいう通り、この魔獣大侵攻はエルライドの書いた脚本、出来レースになっているからな。
第一王子の支持しているサウザー公爵家ならアボリスの無能を指名するだろうけど、たとえ公爵といえど王族を指名するなんて事はまず無理だ、例え母親が側妃だろうとな。
けど俺はこの魔獣大侵攻を人為的に起こした責任を取る為にあの魔獣の波を処理しなければならない。
正直こんな大量虐殺になりかねない事を仕出かしたんだから、火消しをしないといけないからな。
まぁエルライドは陣の一番奥にいるから隻眼がいればどうにかなるだろう。
いざとなれば魔道具も渡してあるし、どうとでもなる。
「いざとなれば王子様だけ連れて逃げればいいから大丈夫だよハロルドさん。
あ、隻眼は別ね、あいつは1人でも大丈夫だから連れて帰らないけどね」
「…まぁ、フィリップ殿は大丈夫だろうが…本当に嫌いなんだな彼が」
「うん、嫌い!!」
「威張らなくてもいいと思うのですが…ユーリ様は本当に変わっていますね」
なんか色々と言われてるけど、これは曲げる気はない。
エルライドと四六時中一緒に出来るとかうらやま…いや、まぁなんでもいい、とにかくムカつくから嫌いだ。
それから4時間ほどダラダラと冒険者ギルドにいると中堅どころの冒険者や俺の事を知らないおのぼりの新米冒険者が絡んで来たが、ムカつく奴は殴り飛ばし、どうでもいい奴は適当に相槌を打って潰して、ゆっくりゆっくりした。
何せこの一週間、完全にタダでボランティアしてたんだ、1日ぐらいゆっくりしたいダラダラしたい眠りたい疲れてるんですさっさと帰ってきてよアッキー放置しちゃうぞ。
そして夕方、せっかくめかし込んでいたオリハルコン製の鎧を付けていたアッキーが泥だらけになって冒険者ギルドに帰ってきた。
ナニアレ、遊んできたの?
「…あの、依頼を終わらせてきたんだが…その、この紙を渡せばいいと依頼主から聞いたんだが、どうすれば?」
嗚呼アッキー、どうして自分からハロルドさんのところに行くんだよ、心底イヤそうな目で俺が睨まれたじゃねえかよこら。
「…はい、確認しました。
ではこの2件の依頼は完了した物として処理させていただきます。
2件分の依頼料をお持ちしますので、少々お待ちください」
ちなみに、ハロルドさんならどんな依頼料でも1分と待たず正確に持ってこられる。
が、現在ハロルドさんはご機嫌斜め、おこなのです。
元凶であるアッキーが相手だと、依頼領を出すより色々と悶々としてしまうんだ、殺気を放たれないだけまだマシと思って欲しいもんだ。
「…お帰り、とりあえずイスが汚れるから座らないでよ?」
「…冒険者の依頼って大変なんだな。
いや、体力的には問題ないんだが…こう、精神的な」
紹介したのは荷物運びと配達なんだが、一体どこに精神的にストレスの溜まる事があったんだ?
「いや…スラムの近くを通ったんだが、死体が転がっていてな。
……アマリア教国にはスラムを見る事もなかったし、実際にその…損傷の酷い死体を見るのは初めてでな、少し面食らった」
なんと、アッキーはまだ殺人童貞君だったのか。
そういうのは罪悪感のない相手ではじめてを散らしてくれ、盗賊をお勧めするぞ。
「そう、でその泥は何さ?
俺のあげた鎧を1日と経たずに汚すとか配達中に水溜りにでも突っ込んだの?」
「…さっきの死体に驚いて、配達物を取り落としそうになってな、その時に水溜りを勢いよく踏み抜いて…いや、配達物は落としていないからな?」
「そう、初日で依頼を失敗するとか俺の泥を塗られなくてよかったよ。
ああ、アッキーは泥だらけだけどね」
とりあえずのんびりし過ぎて暇だったからアッキーを弄ってみた。
少しテンション下がっているからか、弄るのが楽しい。
ケモ耳があったらペタンコになってる感じのしょげっぷり、ちょーたのしー。
「……お前は、この世界で10年以上過ごしてきたんだな。
潔癖症は少しはマシになったのか?」
おや、反撃もしてこないとは、もしかしてアッキーグロッキー?
昔話に花を咲かして気を紛らわしたいんだろうが、避けては通れない道だからな。
ご本人に頑張ってもらわんと。
「あーそれならどうにかなった。
生きるか死ぬかの瀬戸際になれば潔癖症とかウツとかになってる場合じゃないっていうのを経験した。
アッキーもまだこの世界に来て1年も経っていないんだから、追々頑張ってくれ。
協力は…して欲しいか?
ノエルさんじゃないけど、金額次第ってところだぞ」
冷たいと思われるかもしれないが、これもアッキーの為俺の為。
何も日頃の恨みをこの機に返そうという気は砂粒ほどある、否、石ころほどある。
「……とりあえず友人価格で設定よろしく」
「保証は無いからそのつもりで、クーリングオフも利かないブラックなんでよろしく」
諦めろアッキー、前世でもそうだったが、俺は金には厳しいんです。
友人価格は適用してやるから、精々悩んで苦悩して自分で解決してくれ。
「…アキラ様、依頼料をお持ちしましたので、受付までお越しください」
「……いってくる」
重い足取りでアッキーはハロルドさんの所へと歩いていった。
これで帰ったらまたハロルドさんも居候していると分かってどういう反応をするのか、今から楽しみでならないね。
クリミナ達にはもう説明しているし、最低限の家具は揃えてるから心配御無用です。
清算が済むとハロルドさんも一緒に出てきた。
加えて暗い雰囲気で帰ってくるアッキー、グロッキーを通り越してもはやブラッキーみたいな?
「ハロルドさん、仕事終わったんですか?」
「ああ、最後にアキラさんの精算でちょうどな。
帰って夕食にするか……アキラさんもユーリの家に居候するんですよね?」
身長はアッキーの方が高いんだが、ハロルドさんの気迫に押されてか若干後ずさってそうだと返した。
アッキーが俺の家に居候するのにも反対しているハロルドさんは徹底的にアッキーの事を嫌っている、こんなにあからさまなのはアドルフの時以来じゃないか?
「ユーリが気に入っているからといって調子に乗って迷惑を掛けないように。
何か面倒を起こしたものなら、即退去…いえ、叩き出しますのでそのつもりで」
……あの、ハロルドさん?
家主は俺なんですけど…あ、ダメだこの人聞いてない。
何というか…蛇蝎、蛇蝎の如くアッキーのことを嫌っているハロルドさんがちくちくと嫌味を繰り返しながら俺達はクリミナ達が待つ家にと帰っていった。
読んで頂き、ありがとうございました。
感想など、お待ちしています。




