第26話 モテ期到来(権力者限定)
次は、21時投稿です。
ブックマーク40件、ありがとうゴザイマス。
最近、指名依頼が多い気がすごくすると思ってハロルドさんに聞いてみたら、『いまさらか』という呆れられた表情付きで紙を渡された。
何かと思って見てみれば、通常依頼と指名依頼の比率の書かれたもので、通常依頼と指名依頼の比率が2:1の割合だった。
「え、こんなにやってたの俺?」
「おめでとうユーリ、あと2つ依頼を完了すると史上最年少でランク4になる。
よかったな、更に有名になるぞ?」
「ちっとも良くないよ!?」
サラッと機密事項をばらされたんだけど、何それ、またランク上がるのかよ。
武芸大会から2ヶ月も経って、俺の周りは激変していた。
俺を囲おうと、貴族達が指名依頼をしまくってきているのだ。
俺、エルライドに囲われていると思っていたんだけど、それを分かってか貴族連中は俺に様々な権利を報酬に雇おうとしたのだ。
正直言って貴族のいう権利というのは俺の趣味とは合わないのがはっきりした。
どこぞの貴族は自分の領地限定で俺に『処女権』を寄越すのだという、ふざけんな、新婚さんの仲を引き裂くクズに誰が進んでなろうかってんだ。
ちなみにそいつはエルライドの陣営にいたが、俺がその事をばらすとエルライドがキレてその貴族は宙ぶらりんになった。
『王になったら証拠を突きつけて絶対に領地を没収するから、協力してね』と笑顔で言われてしまうと、俺は頷いた。
「俺、そんなにスケベに見えるのかな?」
「それは知らん、お前の噂はたくさんあるからな。
最近は貴族のご息女に求婚されたとか?」
「身に覚えがないですー」
何それ初耳なんだけど、俺いつそんなことされたっけ?
ていうか、されたとしても貴族はいやだな、だってあいつらプライド高くて相手するのも苦痛なんだもんよ。
いくら顔が良くたって一緒にいて苦痛とか最悪だね。
そんなのなら、ハロルドさんと話していたりエルライドと話していたりする方がよっぽど癒される、怒らせない限りはだけど。
前世で言うと友人だな、名前は確かアキラだったか。
あれから結構経ってるけど、今頃何してるんだろうなぁ。
10年以上となると…姪たちも中学生か、可愛いだろうなぁ。
姉さんはバカな男に引っかかってないか不安だが、まぁ大丈夫だろう失敗しても物理でねじ伏せそうだし。
「そういえば、最近アマリア教の大司教が新しく就任したらしい、わざわざ冒険者ギルドに司祭を連れて挨拶しに来たぜ」
「ふうん、ちょうどいなくて良かったかな。
前擦れ違ったんだけど、俺ゴミみたいな目で見られたよ。
いやー、貴族以上にあれは露骨だったね、いちゃもんつけられる前に逃げて良かったかな」
アマリア教でもヒューマン至上主義の思想を掲げているのはやっぱりヒューマン系の国家が多くて、国と対立している国は少ない。
少ないという事は、対立している国もあるという事で、かくいうソラージュ王国はアマリア教を国教として認めてはいるが、ヒューマン至上主義は認めていないらしい。
俺からすればすごくどうでもいいんだけど、ヒューマン至上主義の中には狂信者なんてイカレの類がいるらしく、秘密裏にアマリア教に反発するヒューマン以外の人種を秘密裏に殺しているとの事だ。
まぁそうなると俺みたいなハーフエルフは危険な存在な訳だよ、いつ狙われてもおかしくないらしい、最近派手に目立ったから、連中が苛立つ原因にもなっていた。
そんな事情俺の知った事ではないんだけど、相手はそういう訳にもいかないらしく、最近送り込まれていなかった暗殺者もとい、知らない国の諜報機関の人間が俺の泊まっている宿屋の屋根に張り付いている、ウザイ。
「俺もだな、俺と擦れ違う時『薄汚い混血と関わるなんてヒューマンの面汚しめ』とか寝言ほざくから火達磨にしたくてたまらなかったな。
何を食ったらあんな腐った思考になるか分からんな。
ユーリも連中と関わる時は手を出すなよ?
まずはエルライド王子に報告して、そいつを告発して国からはじき出してもらえ。
そうすれば、本国に帰ってもあいつのいる場所はなくなるからな、国との関係に亀裂を入れようとした輩を許す筈もないからな」
「さすがハロルドさん、俺頑張って顔と特徴を覚えて王子に報告します!!」
「そうしてくれ、俺も自分の手を汚さなくて済むからな、助かるぜ」
「…ギルドの受付で悪巧みをしないで頂きたいのですが、お二人とも?」
あ、ノエルだ。
どこか疲れた表情をしている、何かあったのか?
ノエルには一応俺の魔道具を渡しておいた、慰謝料だな。
俺の事情については掻い摘んで説明した、ここまで関わった以上、共犯者にしてしまえばいいと思ったからだ。
殆ど強制的に共犯者にした所為か、ノエルに頭痛の種が出来たようだった、さすがに守銭奴も国家レベルの問題を知る事になるとは思っても見なかったんだろう。
これを機に守銭奴からお金好き程度にランクダウンして欲しいな、ついでに俺とハロルドさんに関係した噂も消してくれると最高だ、格安で。
「いえ、ユーリ様にまた指名依頼が入りましたので、ご報告に来ました。
グルーヴ伯爵家からのご依頼ですが、どうしますか?」
……あのお嬢ちゃんところの依頼か、ロクでもなさそうだなぁ。
断ろうにも、伯爵家以上の爵位を持つ貴族からの指名依頼は入っていないし、エルライドにお願いしてブッキングさせてもらえば、どうにかなるか?
「勝ち馬に乗ってるだけでクズなのは変わらないからなぁ、俺はじめて会った時とかすごい罵倒もらったよ」
「まともな貴族なんて限りなく少ないからな、悪い貴族か、それよりもまだマシな貴族かのどちらかを探した方がすぐに見つかるぜ」
「ですが冒険者ギルドは犯罪行為を除き大抵の依頼は受けます。
貴族の方々はその点をついて自分達の権力者の権利を中途半端に理解して利用しているのですから、本当に性質が悪いです。
願わくば、権力者であっても物分りの良い依頼者だけに依頼していただきたいのですけど……まぁ、期待は出来ません」
とまあ散々な話だが、冒険者の誰もが俺達に話しかける気配はない。
まぁ見た目と戦闘能力が反比例している俺と、クズの所為で負けたけど武芸大会の四強に入っているハロルドさんだからね、お近付きになろうとしている奴も含めて、話しかけても無視してるからかな。
ハロルドさんにちょっかいかけようとした冒険者ボコったりしてたら、いつの間にか俺に近付いてくる冒険者は一週間に1人いるかどうかだな。
ノエルは…まぁ守銭奴だから一見くらいしか話しかけられない、王都に長くいる冒険者はノエルには話しかけないな、よっぽど切羽詰っていない限りはだが。
しかしあのお嬢ちゃんの家か…正直、あの武芸大会の賭けが伯爵に、お嬢ちゃんのお父さんにバレた挙句同じ陣営でも爪弾きな目に遭ってるんだよな。
はっきり言ってエルライドが王になったら間違いなく落ち目になる類の家だな、断言出来る。
頭の悪い貴族でもエルライドは潰さないだろう、けどバカはダメだなバカは。
とりわけ貴族のバカは最悪だ、始末に終えない。
選民思想が服を着て無様に転げているバカ共は纏めて第一王子側に行って欲しいくらいだ。
そうすればエルライドの手間をかけなくて済むし、空いた領地は役に立った貴族に与えれば良い。
…さて、エルライドの手を借りようかと思ったけど、こいつらの動向が気になるな…どうしようか。
「ユーリ、分かっているとは思うが王子にしっかり連絡はしておけよ?
しなかったら…分かるよな?」
鬼が垣間見えたので、しっかり連絡しておこう、それがいいなうん。
夜になってエルライドに報告すると、話だけでも聞いてきて欲しいと言われたので、お嬢ちゃんの家に行く事となった。
さて、上手く破談になって敵になってくれればいいんだが…なるべくそうなるように祈っておくか。
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一応俺の一般的な認識は影魔法という特殊魔法を使う魔法使いということになっているから、影のある、人が1人分入るだけの箱から出てくることにしていた。
勝手に王宮に入るとか普通はダメだと思うけど、俺は特例で許可されていた、特別扱い万歳とは諸手は挙げられないが、まぁ面倒な手続きをせずにすんで楽でいい。
グルーヴ伯爵家に行く前にエルライドに挨拶しに行くと、先客がいた。
ゆったりとした豪奢な服を着たヒューマンの壮年の男で、何故か雰囲気が父さんに似ている気のする男だった。
けど、どこか顔色が悪い、年の所為なのかもしれないが、言っては悪いが長くはなさそうだな。
……まぁ考えるのはよそう、とりあえずこの気まずい空気を何とかしないと。
「あー、申し訳ありません王子様。
お取り込み中なので、すぐに失礼しますね?」
「ユーリ、ちょうどいいから挨拶して。
こちらが僕の父にしてソラージュ王国国王、ガイネス・ウル・ソラージュ陛下だよ。
陛下、この者が僕の影の護衛をしている冒険者で、ユーリ・ミツミネです」
先手を打ったつもりが、準備万端の状態で迎撃されていた。
しかもこのヒューマン、俺のおじいちゃんだってさ、はは、復讐を止めたとはいえ、ちょっとモヤッとときたわ。
ああ、エルライドが言っていたのは本当だった、確かにこの人の余命は幾許もない。
数年の内に、こうして歩き回ることも出来なくなる可能性が高い気がした。
「お初にお目にかかります陛下。
自分はユーリ・ミツミネ、冒険者ギルドに所属するランク3の冒険者です」
とはいえ、別に殺す気はない、今度食事に腹痛になりそうな薬をぶち込みたい程度の苛立ちだ、問題ない。
膝を付いて礼をとると、『よい』という声が返ってきた。
「そこまで無理をする必要はない、お主の雇い主はエルライドだからな。
付きたくもない膝を付かなくてもよい、楽にせよ」
…さすがに俺の事に気付く事はないか、期待はしていなかったけど、期待したくもあったけど、そんなもんだよな。
うん、ここは俺の正体に気付かれなかったことに喜べばいいか。
「はっ、ありがとうございます。
……では王子、自分はこれからグルーヴ伯爵家に向かいますので、今日は挨拶だけでもと思い赴かせていただきました。
報告はまた後にさせていただきます」
「うん、いってらっしゃい。
いざとなったら僕の名前を使ってもいいから、あの家の動向を探ってきてね、期待してるから」
「期待に応えさせていただきます。
それでは陛下、失礼致します」
「うむ、これからもエルライドの事を頼む」
ガイネスは頭を少しだけ下げると、優しそうに笑って見せた。
……冒険者風情に『頼む』なんて言うとは、思った以上に平民階級に対してそこまで嫌悪感は抱いていないようだな。
まぁ、いいんじゃないの別に、思ったよりマトモそうで少し安心した。
俺は王宮から出ると、俺はその足でグルーヴ伯爵家へと向かった。
貴族の別宅は王宮に近い貴族街という一等地にあり、そこに男爵から公爵までの別宅がある。
貴族達は基本社交シーズン以外は王都にいない、自分の領地を運営しているからだ。
まあしていない連中は貴族としては失格な奴等ばかりで、これが大半だな、好き勝手にパーティーして領民から搾り取った血税を無駄な贅肉に変換している、気持ち悪い。
「…ここがグルーヴ伯爵家の別宅か。
でかいな、しかも整備が整ってる」
「何者だ?
ここはグルーヴ伯爵家の屋敷だ、関係のない者は近付かないでもらおうか」
槍を構えていたのはこの伯爵家の警備をしている門番だ、そこまで近付いてもいないのに、槍を突きつけてきた。
警戒されてるな、そんなにハーフは嫌われてるのか…あからさまにされると依頼を受ける気がさらに減退するんだが、元々受ける気はなかったが。
「グルーヴ伯爵家から指名依頼を受けたユーリ・ミツミネです。
お話を聞きに参りました」
とりあえず丁寧に挨拶した、相手がクズだからって、こちらも自分を下げてまで相手をしてやることもない。
「ちっ、本当にハーフのガキだったのかよ。
…案内する者を呼んでくる、そこで待っていろ」
「畏まりました」
…大丈夫、まだキレてない、ちょっと、ちょっとだけ苛立っただけだ。
門番が屋敷に入っていって5分もしない内に執事と一緒に帰ってきた、こちらはかなりの老人で、俺の事を見下した目で見てこない、巧妙に隠しているのか、本当にハーフだろうと関係ないのかは俺には分からなかった。
「ようこそいらっしゃいましたユーリ殿。
私はこのグルーヴ伯爵家に仕える執事でバルボーと申します。
ユーリ殿の案内を務めさせていただきます」
「よろしくお願いします」
名前は覚える気はない、どうせ二度と会うかも分からない相手だからな。
案内されていくが、通路が入り組んでいて壁には絵画が、地面は全て絨毯が、他にも壺とか鎧とか剣とかがかけられたりして、統一性のない成金趣味の見本市のような屋敷だ。
応接室につくとすぐに伯爵が来るとの事だったので待っていようと思ったが、どうせ暇だし空間魔法を使って屋敷を覆って感知、部屋を順々に盗聴していった。
『…よし、あの子供が来たのだな?
守備はどうだ?』
『はっ、私兵を30人ほど雇って気付かれないように配置しております。
旦那様が合図をすれば、すぐに応接室になだれ込んで来るでしょう』
…なるほど、杜撰な計画だな。
気付かなくても30人くらいならどうとでもなるが、間抜け面を見るのも一興だから、先手を打っておくか。
俺は執事の言っていた私兵とやらを探すと、応接室から少し離れた場所の部屋に30人の私兵がいるのを確認した。
「閉ざせ閉ざせ閉ざせ、目も、耳も、何もかもを閉ざし塞がれ潰えろ」
とりあえず外界から接触出来ない密室を作ると、部屋を今度は暗闇に落とした。
あとは影魔法で連中の手と足の指を切断した、さすがに手首とか足首まで切ると出血が酷いからな、水魔法の使い手もいるかもしれないし、いなければ治療院にでも行ってくれ。
…お、ようやくご登場か、あれ、お嬢ちゃんまで来てるよ。
「お待たせしてすまないなユーリ君。
わたしがグルーヴ伯爵家当主、ジムリー・フォン・グルーヴだ。
今日は指名依頼に応じてくれて感謝する。
あと、こちらは私の娘のルピシアだ、一度会っていたね?
酷い事を言った様で申し訳なく思っている」
でっぷりとした体に脂ぎった顔と汚い金髪をした男、こいつがジムリーか。
なんというか、俺が会う貴族って似たようなのばっかりなんだけど、もう少しレパートリーがないのかね、豚ばっかりなんだけどさ。
執事も入れて3人か、何を企んでるのかねえ。
「それでは、依頼をお聞かせいただいても構いませんか?」
「ユーリ殿、冷めない内に紅茶をどうぞ。
グルーヴ産の最高級の茶葉を使っております」
さりげなく紅茶を入れてくれた執事、まったくもって不自然じゃない行動だ。
そうですか、最高級の毒入り紅茶をどうもありがとう。
この程度の毒、森で毒草、毒キノコの特徴を知り尽くした俺からしたらバレバレだ。
なるべく臭いも無臭の物にしたんだろうが、湯気の臭いが紅茶にあるまじき異臭がするのに、飲む気なんて一気に失せるわ。
俺は紅茶の礼だけを言って、一切手を付けない事にした、飲むとさすがの俺も魔法使えるか怪しいからな。
「それで、依頼なのだが…エルライド王子とルピシアの仲立ちをお願いしたいのだ」
「お断りします」
……まずい、思わず即答してしまった。
ていうか、ふざけてるのかこいつら?
前の賭け事件で謝罪もロクに出来ていないのに、エルライドと婚約を結ぶだと?
隻眼の奴に言えよ、あんたらより下の子爵家だろうが。
面倒ばかり持ってきやがって、まだ護衛依頼の方が増しだぜ。
「……いえ、失礼しました。
ですが、何度も申しようでなんですが、私にはそのような権限も、権利も持ち合わせていません野で、お断りします。
エルライド王子に婚約を結びたいと仰るのでしたら、まずは陛下に許可を願わなければならないのではありませんか?」
こんなクズの家にエルライドの嫁にだと、ふざけるな。
あいつにはもっと可愛くて、強くて、ずっと支えていけるような女の子が相応しいんだよ、権力を掴もうとするだけの3流以下の貴族が軽々しく近付こうとしてんじゃねえよ、身の程を知れ虫以下が!!
…とまぁ内心荒ぶってるところに伯爵はご機嫌だった顔が一瞬にして不機嫌になった。
「では、この依頼を断ると?」
「依頼を受けた所で完了できるとは思えませんので」
まぁ、受けてもエルライドがブチキレて余計にハブにしそうだしな、本当に潰されたくなければこいつ等は細々と暮らすしかない。
それを理解していない時点で、こいつ等はダメだ。
勝ち馬に乗ったつもりだったが落馬するなんて笑い話にもならない、いや、俺としては笑えるんだがな。
「……ああ、紅茶も飲みたまえ、冷めてしまうとおいしくないからね。
…そうか、やはり無理か」
「いえ、紅茶の味も分からない田舎者なので、遠慮します」
本当は飲んだ振りもしてみたいが、生憎とその手の騙しスキルは俺にはない、手品師がやっているのは見た事あったが、さすがにネタは知らないからな。
とりあえず笑顔は固定、先にこちらからは手を出さないでおこう、言質を取ったら速攻で反撃するが。
「あなた…混血の分際でどうやってエルライド王子とお近付きになられたのですの?」
お嬢ちゃん、もっとオブラートに包もうぜ、本音駄々漏れだから、あと男に嫉妬しないでくれ。
確かにエルライドは男の俺から見ても可愛い、すごく可愛い男の子だ。
そこらの美少女よりも可愛いので愛でているが、さすがに恋人にしようなんて、考えても…うん、とりあえず振り返ってみてもないな。
そして男だ、生憎と俺は同性愛者じゃない、寛容ではありたいと思っているが。
私は普通のノーマルです、いつか恋愛結婚して可愛い子供とキャッキャウフフな生活がしたいんです。
好みのタイプなんて考えて事もないが…そういえば、俺の好みってどんなだ?
ウツが長すぎた所為か、ろくすっぽ女の顔も覚えれてないんだよな、覚えてるのといえば…母さんと、ノエルと、あとは…3人娘くらいか?
全員美人だが、母さんは既にいないし、ノエルは守銭奴だし、3人娘は肉食だし…困ったな、マトモに恋愛出来そうな女が近くにいないぞ。
フラグ以前に相手がいなかった。
はぁ、どうせならエルライド並の美少女と出会えれば人生バラ色な気もするんだが…その前に自分磨きしないとな。
…話がそれたな、さて、どう返したものか…。
「王子からお誘いがあったとしか言い様がないのですが…」
「うそよっ!!
あなたが何か妖しい薬をエルライド王子に飲ませて言い成りにさせているのでしょう!?」
どう妄想したらそんな結論になるのか、ちょっと頭割って中を見てもいいかいお嬢ちゃん?
いや、まぁ、出来なくはないだろうけど、エルライドにそんな事しても仕方ないしなぁ。
そもそもエルライドとは協力関係の間柄なだけで、ずっと一緒にいる訳じゃないし?
エルライドを操ったところで、俺にメリットは…いや、悪い事するのならあるんだろうけど、そんな面倒な事したくないしなぁ。
人形と話して何が面白いんだって話だよ。
「では、証拠はあるのですか?
自分が王子にそのような怪しい薬を飲ましたり、渡したりしたという事実があるのでしょうか?」
「エルライド王子の昼食をあなたが作っているという事を知っているのですよわたくしは!!
その中に薬を含ませているのでしょう!?」
へぇ、知ってたんだ、最近のエルライドの昼食を俺が作っている事。
まぁ、エルライドがぽろっと言っちゃったのかもしれないな、俺が影の中で寝てる間にしたんだろう。
けど、それなら隻眼も食べているからそれも含めて俺が操って入るっていう事になるのか…いやだな、隻眼を操るとか。
「はぁ、そうですか。
ですが自分が母から教わったのは解毒剤や回復薬といったものばかりで、他者を操るような特殊な薬の製法など教わっていません」
「うそっ、うそよ!!
だって、そうでなきゃ、あなたのような汚らわしい混血がエルライド王子に近付ける訳ないじゃない!!」
…前から思っていたけど、このお嬢ちゃんハーフになんか恨みでもあるのか?
いや、育て方が間違った例なのかもな、親もこれだし。
「やめないか、ルピシアっ!!」
さすがに言い過ぎたのに伯爵がお嬢ちゃんを黙らした、もっと早く止めてほしいもんですね伯爵様?
伯爵がなんとも卑しい目つきで腐臭のする口を開いた。
「すまないねユーリ君、娘が失礼した。
それで…やはり無理だろうか?
君が本当にそのような事をしていないというのなら、証明する為にも―――」
「そこまでにしましょう伯爵様。
それ以上は王子への、王族への侮辱です。
いくら自分が疎ましいから引き摺り下ろしたいのならともかく、王子を貶めてまでそのような事をするのなら看過出来ません。
この事は王子の耳に一言一句、間違いなく報告します。
紅茶を飲まずに失礼かとは思いますが、これで退場させていただきます」
それ以上はダメだ、俺の堪忍袋の緒が切れる。
別室で転がっている私兵共の体が更に分割されることになる、ようやく報復イベント時の苛立ちが落ち着いてきたのに、またぶり返してくる。
落ち着くんだ俺、冷静になろうぜ、怒りに任せて殺戮するのはダメだ。
「キサマッ、伯爵であるこの私に逆らう気か!?」
「指名依頼とはいっても、それを受ける裁量は冒険者である自分に任されています。
これは冒険者ギルドの規定にもありますし、この依頼は先にお話をするという事だったので契約はしていません。
よって、伯爵様が貴族であろうと自分はこの依頼はお断りします」
「そうか、分かった…」
伯爵が立ち上がって、執事が扉を突然開けた、どうやら俺が帰るのに対して扉を開けている訳ではないみたいだ。
「おいっ、この混血のガキを痛めつけてやれ!!」
化けの皮が剥がれたというべきか、メッキが剥がれたといえばいいのか、まぁ本性は透けていたがようやく実力行使をした伯爵だったが、当然だが誰も来る気配はない。
今頃ロクに動けずに地べたを這いずり回っているだろう、足の指が無いと踏ん張りが利かないから歩く所か走る事すら難しいだろう。
俺は優しいので、相手が完全に負けを認めるまで待ってやることにした、ネタばらしは最後の最後だな。
伯爵の声が屋敷に響くが、一向に私兵達は来ない、来る筈が無い。
念の為にさっき確認をしたが、水魔法使いが全員の止血をした段階で倒れていたので、辛うじて生きている状態だった、魔法使いは魔力が枯渇して瀕死だったが知った事じゃない。
「な、なぜだっ、何故私兵達が来ないのだ!!」
「…あの、もう帰っていいですか?
自分を無理矢理そういう事をしようとしたという事も報告しておきますので。
……ほんっと笑える、この程度で俺にケンカ売るとか、分際を知らない奴って無様で見ていて気持ちいいよ」
「なっ!?」
「なんですって!?」
とりあえず始末はエルライドに任せよう、嫌な顔をするだろうけど、さすがにこれだけされたら黙っている訳にもいかないからな。
執事は俺を阻もうとはしなかった。
てっきり帰りの邪魔をするかと思っていたけど、正直拍子抜けだな。
俺は門番に挨拶してから堂々と門から出た、疚しい事は何もしていないからな、当然だ。
「王子様王子様、今大丈夫か?」
『…あれユーリ、早かったね、もう終わったのかい?』
エルライドには一番に報告しておく事にした、この2ヶ月、こういうホウレンソウはしっかりしないと何時間も説教されるからな、ああいうのは一度で十分だ。
「―――とまあ、そういうことだな。
あの伯爵、今頃顔面真っ青にしているだろうぜ?
中途半端に俺に対して権力を使うからこうなる。
断ったら断ったで、俺と王子様との仲を裂くような策略を考えればよかったんだ。
そうすれば、武力行使なんて悪手をしなくてもすんだのに…ほんっと、あの顔笑えたな、王子様にも見せたかったぜ」
『そんなに無様だったのかい?
それは残念だな、まあルピシア嬢とはまた学院で会うだろうから、その時の反応を楽しむ事にするよ。
お疲れ様ユーリ、報告ありがとう。
また困った事がいってね、なるべく便宜は図るから』
エルライドから現実的な答えが返ってきた、はは、なるべくねー。
俺は連絡を済ませると、そのまま宿屋に直帰した。
面倒な一日は終わり、今日も特に何事も無く終わった。
―――そろそろ、情報収集を再開した方がいいのかもしれない。
そんな事を考えながら、俺は眠りに落ちた。
■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■ ◆ ■
エルライドはユーリからの報告を受け取った後、ソファーに座っている人物と会話を再開した。
「…終わったのか、報告の方は?」
「ええ、つつがなく。
あの伯爵家、事もあろうに娘を僕に輿入れさせようとしていたらしいですね。
ユーリにはその仲を取り持つように依頼してきたみたいですが、ユーリは突っぱねてくれました。
さすが僕の甥だね、愛されてるみたいで嬉しいです」
軽口を叩くエルライドだったが、目の前の相手は気にした様子も無くため息をついた。
「…親子揃って過激というか、まさか孫がここまで親と似るとは…なんとも言えない気持ちだな」
「…念の為に聞いておきますが陛下、ユーリに自分が祖父なのだと告白する等という行為を、まさかしませんよね?」
エルライドは父にして国王、ガイネスにいぶかしんだ目で見つめた。
ガイネスはユーリの正体が元第一王子ラインハルトと隣国の皇女 カリュラリシアとの間に生まれた子供だと気付いていた。
しかし、自分が祖父だと名乗る気は無い、2人の関係よりも国益を重視しようとしたガイネスは、血の繋がった孫であるユーリに対して告白出来ずにいたのだ。
幼い頃のラインハルトとどことなく似ていたユーリに手を伸ばしそうになったガイネスだったが、一体どの面を下げてそのような事を出来るのかと思い返してしまったのである。
2人の関係を崩そうと、壊そうと、阻み続け最後には息子に愛想をつかされた自分が、いまさら血が繋がっただけの孫にどんな言葉をかければいいのか。
「…せぬよ、せぬ。
そのような愚行、犯せる訳がない。
許しを請うても、もはや自己満足に過ぎぬ。
もしそんな事をしても、あの少年はその事に気付きながら内心を押し隠してわしを許すだろう。
…もう十分だ、声を交わせただけで十分だ…それでは、わしは執務に戻ろう。
エルライドよ、グルーヴ伯爵家の処遇については一切を任せる。
潰しても問題ない、好きにするがよい」
疲れた表情で自嘲するガイネスは、それでもグルーヴ伯爵家の横暴については看過出来ず、かといってガイネス自身には関係のない問題で処罰を下せば角も立つ上に他の貴族に不審がられるだろう。
そこでエルライドに一切の処遇を任せて、ガイネスはその意見書に判を押すだけ共犯者になる事にしたのだ。
「ありがとうございます陛下。
早速意見書をしたためますので、また後日確認していただければと思います」
エルライドはガイネスが執務室を去ると、嬉々として意見書を書き始めた。
「……父上、いつかユーリの心に余裕が出来れば、一席設けさせてもらいます。
だから…どうか少しでも長く生きてください」
後日、グルーヴ伯爵家が完全にエルライドの陣営から孤立し、第一王子の陣営に鞍替えする事になるのだが、その事を疑問視する貴族は誰もいなかった。
読んで頂き、ありがとうございました。
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