第21話 学院は面倒
次は12/28、0時投稿です
「ユーリ、仕事頼んでもいいかい?」
「どんな奴だ、暗殺?」
エルライドから呼ばれた俺は空間転移でエルライドに与えられている執務室に転移した。
俺の作った魔道具が座標になってるから、普通にいけるからいいわこれ。
「それは最終手段だから、まずは学院の護衛だよ。
表はフィリップが護衛してくれるから、ユーリは僕の影で待機しておいて、何かされそうになったら影で邪魔したり、皆に分かり易く恥をかかしてもいいから。
この前の守備隊の連中みたいにね」
おおう、暗殺を手段だなんて事はいやだとか言わない辺りやっぱりエルライドは優秀だ、しかも報告してないのに俺がやった事にしっかり気付いてる。
ハロルドさんとノエルも俺がやった事に気付いてた、俺ってそんなに信用ないのか?
「了解だ、さすがに傷つけるのはダメか?」
「誰がどう見ても自爆したってわかる位じゃないとダメだね。
あと、殺しは厳禁だ分かるよね?」
「王子様の獲物だからだろ?
証拠は揃えてやるから、徹底的に潰してくれると個人的に満足だ」
この前の騒動の結果、王都守備隊の連中は潰し切る事は出来なかった。
あの狂言にかかわった守備隊のゲス騎士と共犯者のゲス店主、あと何人か籍を剥奪された上で処刑された、完全にトカゲの尻尾だった。
しかも決断が早くて、緊急会議が起きる前日に事を済ませていた所が驚きだ、バカな陣営とか思っていたけど、しぶとく生き残っているのは相手側にもマシな頭脳がいるっていう事だったんだな。
いいじゃないか、潰し甲斐がある、素早く切って失血を防いだつもりでも、失点は失点だ。
巻き返して功績を上げるか相手にも失点を仕掛けるか…俺ならどっちも狙うが、連中はどっちだろうな?
「そんな所かな、結果については頑張ってみるよ。
それじゃあ今日はこれでお開きで。
お茶でも飲んでいくかい?
毒入れられてもユーリの解毒薬があるからいくらでも飲めるんだよ。
この前の御礼もあるし、なんなら僕が淹れてあげようか?」
なんかさらっと不穏なこと言ったな、毒入れたって、エルライドに?
へぇいい度胸だ、王宮の使用人だな犯人は、今度調べて社会的、物理的に抹殺しちゃる。
「今度解毒薬の補充しておくから、飲むのは控えとけ。
あと、隻眼はもう少し王子様を止めろよ、うっかり落とし穴に引っかかったらどうするんだ」
「分かってる、だが言っても聞かないのだ」
隻眼は俺と同じ意見だが、当の本人が言う事を聞かないらしい、解毒薬の量を渡しすぎたか?
「じゃあ執務室に置くなよ、隻眼の家から飲み水持って来い」
「えー、せっかく紅茶が好きになり始めたのに、水なんて味気ないよ。
水なんかよりユーリが前作ってくれた果物のジュースが飲みたいなぁ」
そういえば、王都に来る時俺の手作り料理を食わせた事あったか、隻眼の奴は何も言わなかったけど、すごい勢いで食ってたから好評だったんだろう、やはりハンバーグは偉大だな。
「材料を見つけたらたまに差し入れしてやる、今は水で我慢しろ」
「ホントに?
やったね、言ってみるもんだ!!」
「よかったですね王子」
…む、もしかして嵌められたのか俺?
余計な仕事も請け負っちまったし、早く明日が来ないもんかな。
俺はエルライド達と別れて宿屋に戻った。
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運命の日がやってきた、いやそれほど大袈裟じゃない、言ってみただけだ。
エルライドの影に潜んで俺は学院へと入った。
影の中は快適そのもので、暑さ寒さを感じないという所が素晴らしい。
ちなみに、闇魔法ではあるがこの魔法は完全に隠密の魔法で、アドルフのくれた魔道書によれば、昔闇魔法の適性を持っていた暗殺者が好んで使った魔法らしい。
しかもこの魔法、色々と試してみたらなんと影の主と離せる事が分かった、まさか念話もセットとは思わなかったな。
何とか入り込めば暗殺はまず成功したも同然だからな、よく使っていたのも分かるぞ。
しかも俺には空間魔法っていう規格外で応用力抜群の魔法がある、何もない所でこかしたりするのは当然だが、座標さえ分かればどんな遠隔地でも攻撃が出来る。
影に潜みながら周囲を空間感知で警戒し、エルライドに何かあればすかさず防御。
隻眼は知らん、自力でやれ。
『…にしても、無駄に豪奢だな学院ってのは。
やっぱこういう所にも権威っていうのが必要なのかね?』
『バカバカしいとは思うけど、そういう事だね。
僕が王になったら、不必要な出費は絞め殺す勢いで抑えるよ!!』
『…加減間違えるなよ?』
しないとは思うが、念の為に釘を刺しておいた。
気付かない内に絞め殺してましたでは後味が悪すぎる、下手をしたらその利権を持っていた連中ならまだしも、その周囲を根こそぎ敵に回す事になるからな。
学院の中は清掃が行き届いていてかなり清潔だ、俺の前世でも通っていた大学並の清潔さだな、清掃員ご苦労さん。
エルライドが通る度に通りがかった貴族の令嬢や令息が『ごきげんよう』と挨拶してくる、俺はエルライドが連中の名前を口にして挨拶する度にエルライドを観察して、どいつが邪魔な奴かを少しずつ判断していった。
見た感じ3人ほどエルライドの表情が曇った気がする、これは多いと見てもいいのか、それとも少ないのか…ガキ同士なのに大人の政争に巻き込まれて、少し可愛そうな気もするが。
…まぁ、カエルの子はカエルとしか言い様がないバカもちらほらいたから、それほど同情なんてしなくてもいいかもしれんがな。
「―――それでは、授業を始めます」
授業は退屈だった、これといって真新しい知識が入ってこないし、表の護衛の隻眼は別室で待機だ、さすがに護衛を奥にしても教室はまずいらしく、別室でほかの護衛連中と待機しているらしかった、ついでに情報収集でもしておいてくれ。
暇とはいえ寝る訳にはいかないから、状況整理する事にしよう。
エルライドが警戒した3人についてだ。
1人目はエルライドと同じクラスのアリオス・フォン・サウザー。
敵対している第一皇子の母体であるサウザー公爵家の3男だ。
しかし彼は庶子らしく、父親であるサウザー公爵の命令でエルライドの周りを適当にちょろちょろしているだけで、危険度は低い。
だが、勉強面に関しては舌を巻くものがある。
よっぽど勉強が好きなんだろう、学院にある図書館をこの数年でかなり読んでいて、図書館の主と言われているらしい。
おかっぱ頭の大人しい純朴系お坊ちゃんだ、親に命令されない限り動きそうにないから、相手としてはまぁ不足だがな。
とはいえ、バカが敵なら苦労はしないし悩まない、なるべく早く連中の頭脳を探し出しておかないとな、こいつに限っちゃ正直早く殺した方がいいくらいだ。
2人目はルピシア・フォン・グルーヴ伯爵令嬢だ。
こいつは残念なおバカだ、エルライドがいうにはグルーヴ伯爵とは同じ陣営なのに、このルピシアとかいうお嬢ちゃんは何故かエルライドに反目してるみたいなんだ。
せめて敵対しない程度の言動に抑えてほしいんだが、周囲の目からルピシアはエルライドを嫌っていると認識されているようだ、エルライドもお嬢ちゃんの対処に困っていて、たまに睨み付けてくるお嬢ちゃんをどうしようか迷っているらしい。
……エルライドは気付いていないから、まあいいか、思春期のガキ特有の『素直になれない』って奴なんだろう、親しい間柄なら理解もあるかもしれんが、エルライドとお嬢ちゃんの関係は初期値からそれだ、エルライドがお嬢ちゃんの想いに気付く事はまずないな。
エルライドが王になったら間違いなくこいつら飛ばされる気がしてならねえ、逆恨みに気をつけなきゃいけない相手だな。
確かに可愛い顔をしてるが、男のエルライドの方が可愛いっていうのはなんというか不憫だ、化粧で頑張れ。
3人目は…危険な奴だ。
アトラス・アバーラインという奴なんだが、なんとこいつ、王都の3分の1を裏から支配する組織の頭領の直孫みたいだ。
闇の貴族、とでも言うべきか、周りの教育がしっかり行き届いているのか、あいつの周りだけ質量が違うんじゃないかと思うほどに、威圧感があった。
あれはまずい、ヘタな貴族より性質が悪いぞ、どんな教育したらあんな雰囲気出せるようになるんだよ、親の顔が見てみたい。
ちなみに俺はこの組織の頭領と話せる機会がないか伺ってるんだが、驚いた事に下っ端は頭領の住んでいる場所を知らないらしい、そこそこの幹部も同様で、一握りの上級幹部しか知らないようだった。
闇魔法の制限がある以上、1日に1人しか使えないからな、さすがに情報を集めるのには苦労する。
…こいつの頭探れば、もしかしたら頭領の居場所が掴めるか?
だけど、こいつの魔法対策はかなりすごい、金貨50枚以上する魔道具を首や手首に付けていて、記憶をすぐに読み込むのはすぐには無理だ。
力尽くでやればどうにかなるとは思う、けどそんな事をした場合、魔道具が壊れて証拠が残っちまう、さすがに同じ魔道具を作る事は出来ない、何かされたと頭領が気付いて俺が近付けば、間違いなく関係は最悪な事にしかならない。
王都の闇を知っている頭領なら、俺の復讐相手である帝国の情報を持っていると思うんだが…、まぁ機会を今は伺っていくしかないな。
正直危険なのはアトラスぐらいで、他の2人は危険度が低い。
アリオスは背後にいる公爵家、ルピシアは個人的に苦手だから引いているといった所か…なるほど、状況を整理すれば俺にもいくつか利点があるな。
昼食の時間になってエルライドは席を立って隻眼と合流すると、食堂の一番奥にある王族専用テラスへと向かっていく。
外からは完全に見えない個室だから、ここなら俺も影から出る事が出来る。
「…はぁ、暇だった、講師の教え方下手すぎて一部を除いて理解出来てねえ顔してたぜ?
王子様、あれってどうなの?」
「学院の問題の1つだね、講師の意欲の無さは将来を支えてくれる筈の僕の臣下の能力低下を意味するから。
困った事に、この学院でも僕と無能の派閥が争っていてね、学院長は僕の陣営だけど、半分はあっちの派閥に属してるんだよ。
で、僕らの教室で講義をしていた講師達は全部あっち側の人間だ。
うまい事担当講師をねじ込んで来てるから困ったものだよ」
なるほど、ここでも政争が繰り広げられているという事なのか。
どいつもこいつも政争がお好きらしい、エルライドは面倒臭がっている辺り、嫌いな方だろうがな。
「にしても…貴族の護衛って普通に冒険者もいるんだな、意外だったぜ。
家で雇っている騎士を護衛にすると思ってたんだが、合理的な考えをした奴もいるんだな」
正直冒険者の事を嫌っている貴族は多いんだが、個人的感情を抑えて実利を考えた貴族がいることも確かだ。
そういう輩は多少知恵は回るから厄介だ、半分以上はこちら側の陣営だからよかったが、それでもあっち側にはある程度冒険者はいる。
「ああ、彼らはそれぞれの貴族に囲われている私兵的存在だからね、大抵がランク3か4の冒険者が多い。
けど、ユーリより強いのはそうはいないでしょ?
何しろ人目を気にしなければフィリップよりも強いからね」
「当然だ、もしやるとしても俺絶対に隻眼とは正面から戦わないな、背後からの不意打ちですぐ終わらせるし。
あの時だって身体強化やっても負けそうだったのに、次やったって同じ結果が見えてるだろ。
俺は魔法使いなんだよ、近接戦闘は誤魔化す為にやってるけど、手段選ばないでいいなら魔法で潰す」
「…褒められていると、思っていいのか?」
「素直じゃないよねユーリは。
フィリップの実力を認めてくれて嬉しいよ」
喜んでるとこ悪いが、別に俺は隻眼の実力は認めてないぞ?
確かに近接戦闘が恐ろしく強い事は認めるが、総合的に俺の方が強いっていう事は俺みたいな強力な魔法使いが相手になったとき、エルライドの事を守れる可能性が低くなるっていう事なんだからな?
今度こいつに魔道具渡すときは防御系一択だな、魔法で不意打ちされてポックリ逝くとか認めねえから。
「はん、いってろ。
それより昼食だ、朝市で買ってきた新鮮な材料で作った奴だからな、ありがたく食ってろ」
「やった、ユーリの手作りご飯だ!!」
「料理に関しては俺は認めている、おいしくいただこう」
…いい様に使われている気がしてならないが、久しぶりの料理だったしまあいいとするか。
少し火加減が強過ぎて卵焼きが焦げてるが、隻眼の前にある小皿に置いておく、これでよし。
うーん、やっぱ異次元バックの性能は素晴らしい、料理を入れたら全部作り立てだからな、いつでもどこでも美味いものが出来る、今度作り貯めでもするかな。
父さん特製の野菜スープを飲んでいると、テラスのドアがノックされる。
「エルライド王子、ルピシア・フォン・グルーヴ伯爵令嬢がお越しになっております、食事を一緒にとりたいとの事ですが、如何しますか?」
テラスの入り口には王宮から近衛騎士がドアを塞いでいて、相手がどんな相手でも中にいる王族の許可無しに入る事は出来ない。
そしてドアからはかろうじて中の声が漏れているが、食堂の活気さでその声も掻き消されていたから少し位騒いでも問題はない。
「……なんでこんな時に来るんだ、あの女は」
珍しくエルライドの表情が苦々しい感じになってる、よっぽど嫌いなんだなあのお嬢ちゃんが。
まぁそういう事なら俺も遠慮しよう、
隻眼が外の近衛騎士に一緒には食べないと言う事を伝えにいこうとドアを少しだけ開けた。
「近衛騎士のフィリップだ、王子は一緒に食事はされないと言っている、申し訳ないが―――」
「子爵家の次男如きがこのわたくしを止めるですって?
王子に直接お聞きします、そこをどきなさい!!」
…あれ、なんか雲行きがまずくなってないか?
「なあ王子様、俺もしかして影に戻った方が―――」
「―――エルライド王子、ルピシアでございます。
どうして食事をご一緒出来ないのか、理由をお聞かせ…え?」
遅かったか、まずいな、エルライドの表情がなくなってるぞおい。
ていうか俺もまずい、テラスに入ってくるまで俺はエルライドの影の中にいたんだ。
外にいる近衛騎士は俺の事を知らないし、なおかつばっちり外から俺の事を見ている。
そしてこのお嬢ちゃんだ。
隻眼を押し返してこのテラスに勝手に入ってきたが、エルライドと隻眼の2人がいると思っていたのに、何故か見知らぬ3人目の俺がいたから、驚くのも無理はない。
が、お嬢ちゃんが俺に向けた感情は二種類だ。
1つは驚愕、2つ目は…軽蔑だ。
「ルピシア、下がりなさい。
僕は君と食事をするつもりは―――」
エルライドが先んじてルピシアを下がらせようとしたが、もう襲い。
ルピシアの口は既に開いていた。
「エルライド王子、どうしてこの場所に混血等という汚らわしい存在を連れ込んでいるのです、説明くださいまし!?」
「お、王子、そこのハーフエルフは一体…?」
外の近衛騎士はどうやらエルライド側のようだ、俺に対してそこまでの警戒をしていない。
おそらく俺が何らかの方法でこのテラスに入ったと気付いたんだろう、扉を守っていた筈なのにいつの間にか俺が入っているのにどこか表情が暗くなっていた。
「―――王子様、俺今日は帰った方がいいか?
なんか面倒事になりそうなんだけど」
「だめ、僕が王宮に帰るまでは仕事はきっちりとしてもらうから。
それとルピシア嬢、一体誰の許しを得て君はこの場にいるのか、僕に説明してくれないかい?」
あっさりと俺の要求は却下された、まぁサボりは許されんよな。
んでお嬢ちゃんに対してエルライドがかつてないほど冷めた口調で睨んでいた。
へぇ、こういう顔も出来るんだ、新しい発見だな、なまじ可愛い…きれいな顔をしてるから、怒った時の迫力がまたすごい。
「ここは王族専用のテラスだ、僕が許可を出したのはフィリップとここにいる彼だけで、君に許可を出した覚えはない。
それなのに、フィリップが僕の意思を伝えた筈なのに『子爵の次男如き』?
挙句の果てには『混血という汚らわしい存在』?
僕の許可を出した者に対して、一体君に何の権利があってそんな口を出すんだい?」
…お、おおう、これは、また…怖いな。
ハロルドさんほどじゃないけど、なんというか、威圧感がある怖さっていうのか?
お嬢ちゃん完全に固まっちまったよ、可哀想に。
にしても、隻眼って子爵家の次男だったのか、上級貴族って奴じゃないし、苦労してきたんだろうなぁ。
まぁ、貴族の苦労と平民にとっての苦労は別物だから、さっぱり理解出来んが。
「そ、それは…」
「ああ、もういい。
別に君の意見を聞こうだなんて思っていない。
さっきも入ったはずだ、下がりなさいルピシア嬢、ここは君のような…伯爵令嬢如きが立ち入っていい場所ではない。
……それとアインズとフィリップ、君達にも問題があるよ。
許可を出していない部外者をどうして止めないんだ。
君達にとって、僕の命令は絶対だ、それを同じ王族でもない彼女に押されて通すだなんて…自分の職務を全う出来ないのかい?」
うわぁ、なんかすごい、徹底的に容赦ないな、畳み掛けて言い訳させる気がまったくないぞ。
というかアインズとかいう近衛騎士には悪い事をしたな、どこかで謝っておかないと。
ていうか隻眼も珍しくミスして気弱だし、ナニやってるんだよ近衛騎士様は。
うーん、俺も気を付けないとエルライドに怒られるな。
「も、申し訳ありません」
「も、もっと自分の職務に誠意努力してまいります!!」
2人に関してはエルライドの言葉が胸に突き刺さったんだろうな、王族の、エルライドの信頼を今こいつらは失いかけたんだから、仕えている貴族としてはこれほど不名誉な事はないよな
まぁ、こっちのお嬢ちゃんはそこのところまだ理解出来ていないみたいだけど。
「っ!!」
俺が流し目でお嬢ちゃんを見ていると、何故か俺は睨まれてテラスから飛び出していった。
だめだなありゃ、感情を優先させて王族を前にしてのマナーが全くなっちゃいねえ。
いや、それをいうと俺もどうかとは思うけど、俺の場合協力者で秘密を共有しているって言うアドバンテージがあるから、お嬢ちゃんと違って俺は特別扱いされているっていう事なのか?
嬉しい様な…面倒事がまたやってこない事を祈るべきだな。
「…王子様、あのお嬢ちゃん、近い内面倒なことしねえよな?」
「淑女失格のアレの事を予測するには、僕にはまだ人生経験が足りないね」
……あ、隻眼が戻ってきた、隻眼さん隻眼さん、ご主人様がとっても怖いんだけど、どうにか出来ないか?
……返事がない、リビングデットは勘弁してくれ。
「……あのさ王子様、俺は別にあのお嬢ちゃんに言われたこと気にしてねえぜ?
ああいう手合いが数え切れないくらいいるのは知ってるし、一々真面目に付き合って面倒事抱えたくねえしな?
だからさご主人様、あんたが俺の事で怒るなんてしなくても―――」
「僕がいやなの!!」
な、なの?
え、えっと、エルライドさん、何でそんなおこなんですか?
「ユーリはお人好し過ぎるよ!!
あんな酷い事言われたのに、何でそんな俺傷ついていませんなんて顔してられるの?
普通そこは怒るでしょ!?
あんな頭空っぽで選民意識に凝り固まったバカな令嬢に一方的に言われてるのさ!?
いつものユーリならこっそり魔法使って徹底的に辱めてから破滅させるでしょあんな手合いは!?」
あれ、俺怒られてるのか、何で?
ていうかエルライドさん、俺貴方にそんな目で見られていたのかよ、ちょっとショックだぞ。
「気にしていない振りして実はこっそり暗殺者退けてくれてたり、なんだかんだで我が侭叶えてくれたり、国宝級の魔道具くれたり、おいしい料理わざわざ作ってくれたり!!
そんなんだから僕みたいな奴に利用されるんだよ、分かってる!?」
あ、暗殺者の事ばれてたのか、王宮に仕掛けておいたトラップに引っかかったから一瞬で殺したんだけど、あれで気付いたのか?
ああ、仕掛けた側が普通にボロを出したのか、それでバレたと…別に協力関係でいる以上、協力者の身の安全は守らんとダメだろ?
まぁ、エルライドからしたら俺の見返りがないみたいに思ってるのかもしれないが、結構貰ってるんだがな。
こういう関係、気に入ってるんだが。
「……ユーリ、ねえちょっと、聞いてる?
僕いま怒ってるんだよ?」
「あーはいはい、聞いてる聞いてる。
お前さんが俺の事大好きなのは分かったから、次からは俺も自己主張するように善処します。
これでいいか?」
「だ、だだっ!?」
激おこ状態だったご主人様が今度は一転顔を真っ赤にして慌てだした、忙しいな今日は。
「そういえば隻眼、お前なんであのお嬢ちゃんに押されてたんだ?
いつものお前ならあの程度の暴言無視して王子様の言葉を押し通したと思ったんだが?」
こいつの性格はバカがつくほど真面目って事だ、それがあんな頭空っぽお嬢ちゃん程度の暴言で押されるって…なんかおかしく思えた。
隻眼は気まずそうな表情をして辺りをきょろきょろして理由を探していた、どこを向いたら理由が落ちてるんですか隻眼さん?
まったく、今日は本当に忙しいな、見ていて飽きないわ。
「その…だな、ああいう金切り声を上げる女性が…あまり不得意で」
なるほど、あの手のヒス女は苦手な部類に入るんだな。
同感だ、俺もああいう手合いは嫌いだな、くそ、隻眼と苦手な部類が一緒だなんて。
「ああ、そういう訳か。
確かにあのキンキン声が一体どこから出してるんだよとか思うあの悲鳴はやめてほしいよな。
まぁ、もちっと善戦してほしたかったのが本音なところだが」
「……申し訳ない、秘密裏に雇った護衛が、たった1日で知られてしまった」
「明日にはあのお嬢ちゃんがある事ない事喋ってるかも知れねえなぁ…まぁ仕方ないんじゃないか?
さすがに俺もああいうのが二度目になると黙ってないし、老若男女問わず一片の容赦なくやらせてもらうからさ」
明日の事考えると若干気分が落ちてきた…はぁ、仕事中に不測の事態が起きて結果自分に不幸が起こるってテンションガタ落ちだよ。
「さてと、じゃあ俺は影に戻るぜ?
午後の講義も頑張れよ?」
「あ、ああ、大丈夫だ。
ユーリも、影の中が暇だからって、寝るなんて事しないでよ?」
エルライドに何故か釘を刺された。
俺ってそんなに信用ないのか?
そのあとの講義は何事もなく終わった。
食堂での一件は俺の事が少し噂される程度に収まったが、それでも少しずつ広がっていっていた。
読んで頂き、ありがとうございました。
感想など、お待ちしています。




