第18話 王都は都会…です?
次は12/27、0時投稿です。
王都ケルンズ、そこは俺のイメージしていた以上の街並みだった。
首都でもある為か、他の領地の街の様に馬糞が街並みの景観を破壊していない、おそらくは専門の業者があるんだろう、衛生的に見ても良い街だなここは。
他にも意外なのは緑が多かった事だ、どこか近代的な街並みが見え隠れするこの王都は大通りの左右に緑を植えていて街の彩に一役買っていた。
「どうしたんだいユーリ、驚いているの?」
エルライドが珍しいものを見たような目で俺を見てきた、失礼な、俺だって驚く事はたくさんあるぞ。
「ふん、精々田舎モノ丸出しな目で見られないようにするのだな。
あと、王都で面倒を起こせば王都守備隊が出てくる、面倒な連中だから気を付けろ」
嫌味と忠告をしてくる隻眼がウザイが、まあ良い、確かに否定出来ないしな、どうせ俺は田舎もんだよ。
王都守備隊か、隻眼の言い方からしてエルライドの兄が抱き込んでいる組織と見てもいいみたいだな、あとで調べてみよう。
にしても、ツンケンしてはいるが隻眼の奴、よく忠告してくれるようになったな、てっきり嫌われていると思ったが…いや、好かれても困るんだがな?
俺はエルライドと隻眼と別れる時、ある物を渡しておいた。
「…ユーリ、これは…なに?」
「ただのペンダントにしては貧相だな、王子に何を渡しているのだお前は」
「うっさいぞ隻眼、プレゼントするならもっとそれらしいもの贈ってる。
これはあれだ、魔道具モドキだ。
俺の空間魔法を付与した特別製だ。
これに魔力を込めると、これの対になる魔道具を持っている相手と話すことが出来る。
水色は隻眼、黄色は王子様、黒色は俺だ。
あと、こっちはお守りだな、これは俺が使っていた結界魔法を込めている、使えばそうだな…適正値50以上の魔法でも込めた魔力次第じゃ絶対に防げるな。
試作品だからどれ位長持ちするか分からねえけど、お前らに渡しておく。
見えないように持っとけ」
協力関係になって入る以上、そう簡単に死なれては困る、こいつらには父さんが計画していた夢とやらを実現してもらわなくちゃいけないんだからな。
とはいえ、まだ俺にはこいつらと行動する暇は無い、出来なくは無いが、俺の時間が無くなっちまうだろう。
だからこその魔道具だ、俺が完成品を作っている間に試作品で我慢してもらう。
毒については俺が作った特製の毒消しをありったけ渡しておいた、好きに分けてくれればいい。
「ま、魔道具モドキって…そんな、魔道具を作るのは何十年と研鑽を積まないとまともに起動しないのに…」
「…つくづく規格外な奴だな」
「ユーリ、俺の分は?」
「そりゃどーも。
あ、ハロルドさんにもあとで渡すから、貰ってくださいね?
…なんですか副支部長、その目は」
「ユ、ユーリ君、私の分は無いのかな?
ほら、王都に来るまで魔法について講義してあげましたよね、その報酬に…」
ヒゲめ、目敏いな、解体して研究対象にする気満々じゃねえか。
「副支部長、手持ちのお金はいくらですか?」
「へ…金貨8枚と銀貨3枚、それに銅貨6枚ですが…い、いくらですか?」
残念、金貨10枚持っていないようである。
またの機会に持ち越しだな。
「残念です、金貨10枚あれば売ったのに」
「い、今から自宅に戻ればその10倍は持って来れます、どうか私にその魔道具を!?」
うわぁ、本気で払いそうだなこいつなら…まぁ、世界で見つかっていない魔法みたいだし、その試作品とはいえ魔道具だからな、それくらいの価値はあるか?
俺はハロルドさんの分を渡しておいた、ハロルドさんは赤色だな、ぴったりだ。
「いやホント金持ってこられても無理なもんは無理、ハロルドさんに渡したので最後だし?」
「残念でしたね副支部長、例え完成品を貰っても副支部長に試作品はお譲りしませんので、ユーリとの交渉がんばってください」
「くっ、ハロルド君、わざわざ勝ち誇って言う事じゃありませんよね!?
何ですか、自慢ですか!?」
「自慢ですが何か?」
何だかんだで張り合ってるなこの2人、仲が良いのか悪いのか…似てる気はするんだけどなぁ。
「そいじゃまたな王子様、何かあったら人を遣すんじゃ無くて隻眼か王子様が試験がてらその魔道具を使って呼んでくれ。
ほかは…まぁ、元気で?」
とって付けた感がすごいが、それくらいしかいえない。
気の利いた事一つ言えないとは、元社会人とは思えないな。
「あぁ、また近い内に会おうユーリ。
魔道具と薬はありがたく使わせてもらう」
「……世話になった」
エルライドと隻眼は馬車に乗ってこの都市の中心部、王宮へと向かって行った。
俺とハロルドさん、それに半泣き状態のアドルフは冒険者ギルドへと向かった。
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「つくづくこの王都は俺の予想を上回る物が多いよな…なんだよこれ」
「やっぱりお前も思うかユーリ、俺もはじめてここに来た時は驚いたもんだぜ」
冒険者ギルドソラージュ王国支部は他の建物が2階建てばかりなのに対して、7階建てという高層ビルだった、まるで前世にあった駅ビルだな、フロア毎に部署でも分かれてるのか?
ハロルドさんも冒険者時代ここに来てたいそう驚いたらしい、今世の建築レベルが前世の建築レベルに迫っているってどういうことよ。
「ほらそこ、突っ立っていないでこちらに来なさい、他の冒険者の邪魔になる」
アドルフに呼ばれたので俺とハロルドさんは受付に向かった。
ハロルドさんと3人娘以外の受付だ、王都に来るまで街によってもギルドには行かなかったからな、さすが王都のギルドだな、受付が…12人もいるぞ、しかも全員女だ…ハロルドさんがいてよかったぁ。
「あら副支部長、ようやく帰られたのですか?
秘書の方と魔導師ギルドの幹部の方が立て続けに来られていましたよ。
『いつになったら帰ってくるのか』とここ数日中の2、3時間毎に来られて迷惑でした」
長髪美人の受付がアドルフに笑顔で毒を吐いている、おいおい、上司に一受付が毒吐くって普通ありえないぞ。
「そうでしたか、それは悪い事をしましたね。
ですが、こちらの用件の方が重要ですので、そちらはあとにしましょう。
ノエル、この方の冒険者登録の更新をお願いします」
アドルフが俺を指差すと俺は冒険者票をノエルという受付に渡した。
「…はい、はじめましてユーリ様。
私はこの冒険者ギルドソラージュ王国支部で受付業務を担当させていただいているノエルと申します。
もし何か御用がありましたら、ぜひお声をおかけください」
「は…はい、よろしくお願いします」
…思わず頭を下げてしまった、なんか笑顔なのにずっと怖いんだけどこの人。
とりあえず、ハロルドさんが担当になってくれるまで、受付行くのどうしようかな…。
「それではユーリ様、まずご報告がありますが、よろしいでしょうか?」
「は、はい?」
俺の疑問にノエルはその言葉を了承と判断したのか、『ご報告』とやらを始めた。
「ユーリ様には護衛依頼の報酬が届けられています。
金貨100枚となります、この場でご確認ください。
数えられている間に次の報告をさせていただきます。
この護衛依頼をもちまして、ユーリ様はランク3に昇格されました、おめでとうございます。
続きまして、ランク3における冒険者ギルドの新たな要項の報告となります。
ランク3の冒険者となりますと『生存報告』の義務が発生致します。
最低でも2ヶ月以内に最寄の冒険者ギルドに生存報告をしていただけない場合、死亡届が出され冒険者ギルドから除籍されます。
もう1つ、ランク3の冒険者は一般的に『一人前』とされるランクとなります。
特にユーリ様は史上初の10歳でランク3に到達した冒険者史上最年少の冒険者。
この事が知れれば、冒険者ギルドを介さずに『指定』依頼という形で商会、貴族の方がユーリ様に直接依頼をされる可能性が非常に高いです。
そこでユーリ様には、詳細内容を省いた最低限の情報の提示をお願いいたします。
例としましては、誰に、どんな依頼を、どれ位の期間でという事を報告してください。
2番目にあったどんな依頼を受けたのかは必要ではありませんが、その場合どこで依頼をするのかを報告しなければなりません。
以上です、ありがとうございました」
………え、えっと、やばい、半分も覚え切れなかったかも、いきなりランク3になったのと、生存報告の義務が出てきたって事だけだ、直接指定される依頼についてはちょっと早くて分からなかったぞ。
ていうか、金貨100枚って…エルライド、あの時の約束覚えていたんだな、本当にもらえるとは思って無かったぞ。
「分からなければ、こちらの冊子にどうぞ、銀貨3枚、3000コルドで冒険者ギルドの手引書が販売されています、お買い上げされますか?」
…この人、うまいなぁ。
絶対狙ってるでしょこれ、売る気満々じゃん。
ノエルさんがランク3になった冒険者連中相手に意気揚々と買わせているのが簡単に想像出来た。
すごいな冒険者ギルド、こんな女傑が受付にいるなんて、なんて人材の宝庫だ。
だが、残念だったなノエル、今回俺はその手には引っかからねえぜ!!
「大丈夫です、今度ハロルドさんに詳しく聞きますんで。
ハロルドさん、いいです?」
「ああ、大丈夫だ。
何なら今日泊まる宿屋で教えてもいいしな。
にしても、ノエルさんは相変わらずというか何というか…守銭奴だな。
畳み掛けるのが自然すぎて恐ろしいぜ」
「あらハロルド、貴方だったのですね、副支部長の言っていた優秀なギルド員とは。
研修を終えて飛ばされて腐っていたのに帰って来れるなんて、よほどユーリ様を扱き使われたのね?」
ハロルドさんの了承を得られたのは良かったけど、何この2人、知り合いだったのか、しかもかなり親密な関係に見える、年齢的にも多分同じくらいか。
しかも飛ばされたって…ハロルドさん、研修の時何やったの?
「なにも、ユーリが人見知りで勝手にラザニア支部の依頼を片っ端から完了させていって、その結果俺の手柄みたいになってる、ただそれだけだっての。
ユーリの事が無けりゃ、王都に戻るなんて選択肢無かったよ」
なんだか当然のように俺の為云々言ってますが、好感度上がり過ぎてないか、本当にこれ友人ルートです?
……宿屋で話すの、考えた方がいいか?
そのままお部屋にお持ち帰り…されないよな?
そんな思いなんて知らないだろうハロルドさんは珍しく俺の撫でて親密度アピールをしてきた、どうしてこうなったんだろう?
少し離れた所で受付女子が固まってこっちを見てヒソヒソしている、怪しい関係に思われてるのか?
誤解です、仲は滅茶苦茶良いけど怪しい関係じゃありませんよ!?
くっ、友人の距離感ってどこまでいいんだ、撫でられるのってアリなの、ナシなの?
「そうですか…働き者な冒険者ということは理解しました。
…しかし、ユーリ様?」
「は、はい?」
なんか飛び火してきたぞ、ノエルさんの淡々とした口調がなんか怖い。
「ユーリ様は未だ成長中のお身体です、無茶をし過ぎて身体を壊してしまえば、将来冒険者として本来高みに上れる筈がどこかで大きな怪我をしかねません。
依頼をするに辺り、ご自身の身体と相談して依頼するようご注意ください。
ご自身の体調管理もまた、冒険者の大切なお仕事ですので、よろしくお願い致します」
心配されてしまった、ハロルドさんは守銭奴とか言っていたけど、実はそうでも…、
「怪我をされた時にはこちらの治療院をお勧めします、私の父が開いている治療院で、金額もランク3のユーリ様ならば借金をせず支払えます」
守銭奴と言われても仕方ないな、用意周到過ぎてなんか怖い。
何だろう、冒険者ギルドのギルド員って変人の巣窟なのか?
俺は飛んだ人外魔境に来てしまったと手続きを終えたハロルドさんに引っ張られるがまま宿屋に着くまでぼんやりしていたのだった。
読んで頂き、ありがとうございました。
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