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断罪後に娼館送りになったら、義弟が大金を持って私を迎えにきました(私たち不仲のはずでは???)  作者: 千堂みくま


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1 どうも、断罪された悪役令嬢です

王立学園の卒業を数日後に控えたある日。

私を王宮の執務室へ呼び出したセドリック殿下は、隣にストロベリーブロンドの男爵令嬢――アリサさんを座らせて、驚くほど冷たい声で私に言った。


「父上の病はアリサが治したよ。この功績をもって、僕はアリサを婚約者にする」


「え……? セドリック殿下の婚約者は」


私だったはずでは?

思わず縋るような目で殿下を見たけど、彼の水色の瞳は氷塊のように冷ややかで、私に対する愛情はほんの少しも宿っていなかった。


「分かっているだろう、リアーナ。きみとの婚約は破棄する。これがその理由だ」


殿下はそう言うと、テーブルに何かの書類をどさりと置いた。

震える手で一枚一枚確認すれば、私がアリサさんにどんな嫌がらせをしたかびっしりと記録してある。

階段から突き落とそうとしただの。

私物を隠しただの。

どれも身に覚えがなくて、自分が罠にはめられたのだと悟った。


「私には身に覚えがありません! これは誰が書いたものですか?」


「誰がなんて、どうでもいいだろう。これは紛れもない事実なんだから。アリサを辛い目に合わせた罰として、きみは娼館で働いてきたまえ」


「そんな……! 話を聞いてください、セドリック殿下!」


冤罪だと説明しようとした時、開いたドアから騎士が大勢入ってきて私を取り囲んだ。

アリサさんが辛いものから逃れるように顔を背けて、殿下は彼女を労わるように優しく抱き締めている。


「殿下! 説明させてください、殿下ぁっ!」


容赦ない力でずるずると廊下へ引きずり出されて、呆然としている間に娼館まで連行された。

あっという間の出来事すぎて、自分の身に何が起きたのか全く理解できなかった。






私の名はリアーナ・コンテルノ。十八歳。

元・公爵令嬢であり、元・王太子の婚約者だ。

今はコンテルノ公爵家から除籍されたので、ただのリアーナになってしまったけれど。

私は今、王都の端にある娼館『ヴィアラッティア』で掃除婦として働いている。


(記憶を取り戻すのが遅すぎたわ……)


ここがどうやら少女漫画の世界だと気づいたのが、王太子に断罪されて娼館送りになった後だった。

慣れない手つきで掃除をした私は床をモップでびしょびしょにした挙句、つるりと滑って派手に転んだのだ。

その時に頭を打ったショックで、どうやら自分が物語の世界に転生したらしいと気が付いた。


(金髪の王子様に、聖女の力を持つピンク髪の男爵令嬢。そして公爵令嬢による王立学園での嫌がらせ……。ここまで揃ったら間違いないでしょう)


気づくのが遅すぎたことに関しては、正直言ってかなり悔しいと思っている。

せめて在学中に気づいていれば、婚約破棄を回避したり、破棄された後の生活について準備する余裕があったはずだ。


(でも過去を悔んでもしかたないわよね。失敗は取り返せないし)


そんな訳で今後について考えを巡らせているんだけど、重大な問題が発覚した。


「どの作品に転生したか、いまいちわからないのよね……」


日本人だった私は異世界の少女漫画を好んで読んでいたけど、毎月課金して大量に読んでいたせいで、どの作品か特定できないのだ。

婚約破棄される悪役令嬢なんて何百人もいたし、金髪の王子とピンク髪の男爵令嬢も大勢いた。

ちなみに私は銀髪に紫色の瞳の元・公爵令嬢なんだけど、その組み合わせも珍しくなかったはずだ。

特定はかなり難しい。


考えつつメイド服の姿で掃除をしていると、すぐ横をヴィアラッティアの主であるマダムが通り過ぎた。


「リアーナ、階段もしっかりモップ掛けしとくんだよ」


「はぁい!」


公爵令嬢とは思えない元気な声で返事をする。

ここに来た当初は貴族の令嬢らしく落ち込んで泣き暮らす日々だったけど、日本人のアラサーだった記憶を取り戻してからはかなり落ち着いてきた。


(落ち着いたというより、割り切ったというべきかしらね)


ちなみに娼館送りになったのに掃除婦なのは、殿下がマダムに「掃除婦として一生働かせるように」と命じる書簡を送りつけたからだ。

娼婦だと大金を積んで身請けすれば自由になれるから、それを防ぐためにずっと掃除婦としてそこで過ごせと言いたいらしい。


(すごい嫌われようだわ。そこまでのこと、してないと思うのだけど)


セドリック殿下と私は八歳で婚約し、十年ほどそれなりに仲良く過ごしてきた。

婚約者というよりは戦友のような仲だったけど、一生を掃除婦として過ごせと命じられるほど嫌われることをした覚えはない。


(これが物語の強制力ってものなのかしらね……。私はアリサさんをイジメたりしてないわ。誰かが勝手に証拠を作ったのよ……私を悪役にするために)


私と王太子殿下は同い年だった。

王立学園の高等部二年に進級した頃、アリサ・キャンベルというストロベリーブロンドの男爵令嬢が編入してきて、事態は急変した。


彼女はこの世界では非常に珍しい、聖属性の魔力を持っていたのだ。

ちょうどその頃に陛下は原因不明の病を患い、殿下はことあるごとにアリサさんに相談を持ち掛け、二人はあっという間に恋人のような仲になってしまった。


私は殿下にもアリサさんにもそれはおかしいと忠告したけど、アリサさんが聖なる魔力で病床の陛下を瞬く間に回復させると事態は一変した。

殿下はすっかりアリサさんに夢中になり、陛下が完全回復するのを待たず、私に婚約破棄を告げたのだった。


(もしかしたらどんなに努力しても、無意味だったのかもしれないわ)


清く正しく過ごしていれば、そのうち私の潔白が証明されるだろう。

そんなふうに期待した時期もあったけど、その努力は無意味に終わった。


「勝ち目がない戦いほど、気力が奪われるものはないわよね……」


公爵令嬢の私にも微量ながら魔力は宿っているけど、微量すぎて何の属性かも判定不可能。

そんな知識ばかり詰め込んだ頭でっかち令嬢より、すごい力でパフォーマンスできる可愛い令嬢を選んでしまうのも仕方がないのかもしれない。


(ちょっと悲しいけれど、生きていかないとね。死んだりする断罪よりマシだったと思わなきゃ)


前世では一人暮らし期間が長かったせいか、私の家事スキルは娼館でも活かされている。

厨房でジャガイモの皮むきをすれば、「元貴族のくせにやるじゃねぇか」と褒められた。

そして元・公爵令嬢としての知識もちゃんと生きていて、たまに訪れる外国人のお客さんの通訳をすると、マダムから特別手当をもらえたりする。


(公爵令嬢でなくなった私には、ここにしか居場所はないんだもの。しっかり働かないとね)


そんなことを考えながら働き続けて、『ヴィアラッティア』に来てから二週間がたった頃。

いつもなら掃除婦の仕事が終わる時間に、マダムに呼び出された。



明るいラブコメを目指して執筆中です。

続きが気になると思われた方は、ブクマよろしくお願いします~

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