我慢する事に対して、違うだろそれ
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/20(土)投稿予定です。
まぁ、今は兎に角情報を集めないとな。
アイリスは静かにドアを閉めながら小さくため息をする。
以前だったらあんなことされたら直ぐに突っかかって怒ったり怒りに任せてぶん殴っていたけど、あの儀式を受けてからどうも感情が希薄になった気がする。
この変化は本当良く無いんだろうなと思いながら歩いていると、ちょうど曲がり角でバッタリコーデリアと鉢合わせになる。
一瞬だけ、驚いた顔をしたコーデリアだったが、直ぐにキッと何故か睨まれた。
睨まれる理由はないんだけどなとアイリスがそんなことを思っていると、コーデリアが声をかけてきた。
珍しい、正直ここにきてから食事をする時ですら全く会うこともなく、会話もできた試しが無い。
それほど彼女には徹底的に避けられていたから今声をかけられた事に少しだけ驚いたが「何ですか?」と返事すると嫌な顔をしてから顔を背けた。
「もう良いでしょ。」
え?何が?と思っていると、コーデリアは厭な笑みを向けて顔を近づけてくる。
「貴族の暮らし、堪能できてよかったでしょう?普段より良いもの着て美味しいものも食べれてちょっと勉強が出来たら使用人達からチヤホヤされて、さぞかし気持ちよかったでしょう?」
「そんな事はーーー。」
いや、あるかとアイリスは心の中でコーデリアの言葉を肯定する。
家の家事当番気にせず剣術の練習ができるし、栄養価も高くバランスの良い食事に、実家なんて薄い板で境目を作った隣の部屋から聞こえる父のイビキに悩まされていたのに、今じゃカラトリーを運んでいる使用人達が廊下を通り過ぎても聞こえない防音完備で清潔な部屋、そして極め付けは安眠間違いなしの寝具。
確かに環境設備良いもんなぁ、流石貴族。
「取り繕っても無駄よ、本当何でこんな平民と一緒に暮らさなくちゃいけないのよ。さっさと出て行って!」
いや、出てけと言われてもな・・・寧ろ君のお父上が私を引き入れたんだが?
てか王命でもあるから私追い出したら君も無事では済まないと思うんだが?と思っていると、急に頬に衝撃が走る。
じぃんと痛む右頬に、どうやら自分は叩かれたのだと認識する。
前を見ればコーデリアと目があった。
「そうやって黙ってれば良いと思っているの?これだから平民は。」
怒りに震えるコーデリアを見ていたアイリスは右の頬を撫でながら彼女の姿をある人物と重ねる。
「お嬢様は、怒り方がマナー講師と瓜二つですね。」
そう言うとハッとしたようにコーデリアは固まり自分が手を挙げた左手を見た。
「怒る時にはそういう風に真似をしろとでも言われました?」
「やめて!」
急に声を荒げる。
「あんな人と一緒にしないで!お母様のことがなかったら私ーーー。」
つい口走ったのだろう、その事に気がつきハッとするとコーデリアは口を閉ざしアイリスを軽く突き放した。
「もう行くわ、時間に遅れてしまうから。」
それだけ言うとコーデリアはアイリスとすれ違いに去る。
後ろを振り返りながらコーデリアの後ろ姿をアイリスは頬を抑えたまま見つめる。
「やーっぱ、なんかあるんだろうな・・・随分追い込まれてる感じだけど。」
右頬を治したアイリスはため息した後、ある場所へと向かう。
「元凶に行ってみるか。」
ぽそりと呟いた。
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