初めてのプレゼント
婚姻の儀と言うのは、ちょっぴりだけどアルから教えて貰って知っている。
キトゥンガーデンでのそれは、少し私の知っているモノとは違っていて、指輪の交換はブローチの交換だし、衣装は白じゃなくて銀色だ。
ブローチの飾り石にそれぞれの瞳と同じ色の宝石を入れて、互いの左胸に飾り合うのがこちら流。
『この瞳の持ち主がわたしの心に住んでます。』って事らしい。
コレが通用するって事は、色んな色合いの瞳がスタンダードって事だ。
日本人だと皆、茶系統になっちゃうもんね。
ちなみに、地球での私の瞳は『金茶』色。
純日本人の筈なんだけど、何故か淡い色だったんだよね。
それのせいで、英語も喋れんのに何故か外人に話しかけられる事多数と言う……。
ああ、話しが逸れた。
衣装が銀色なのは、どうやら創造主様のイメージカラーってヤツらしい。
イメージカラーと言うか、どうやら髪の色が銀髪らしく、そのせいもあって銀髪は男女問わず『モテる髪色』なんだって。
実際、美男美女も多いとか。
今生の母も銀髪の綺麗な女性だったなと、それを聞いて納得した。
ドレスのサイズ調整はすぐに終った。
余ってる部分をちょこっと摘まんで、魔法を掛けるとあら不思議!
摘まんでた部分がくっついているのですよ、奥さん!
サイズ合わせが一瞬で終わるのです。
ちなみに、サイズ合わせの為の部屋に置いてあった大きな姿見のお陰で、やっと自分の姿を確認する事が出来た。
だけど、その姿が想像の上を行く代物になっていて、ビックリ仰天だ。
今生のお母さん譲りの顔形に、同じく今生のお父さん譲りのフワフワの黒髪。
体型は、ほっそりしていて折れそうな程に見えるお母さんと比べると幾分骨太だけど、一般的には細身な方かな?
バストの方は……ほっそり巨乳のお母さんの血を感じさせるモノで、オープンスケベなアルは大喜びなんじゃないかと思います。
うん、まぁなんというか。
ぶっちゃけて言うならば、滅茶苦茶、顔立ちも可愛くて、スタイルも良かったと言う事だ。
「リエラちゃん、どうしよう?」
「何がですか?」
「わたし、滅茶苦茶、見た目詐欺師!!!」
こんなにわたしが可愛い筈が無い! と、力説すると、彼女から返って来たのはあきれ顔。
そしてそんな彼女の代わりに、別の人から返事がくる。
「君は元々可愛らしい方だと思うが……。」
「フィルター付きの人の発言は受け付けません。」
アルの発言は、切って捨てた。
地球での自分の容姿は、自分でちゃんと分かっているつもりだ。
特別可愛い方じゃなかったさ……。
たまに、美人系と言われる事はあったけど、『系』ってなんだ『系』って!
そう言う類ってだけで、『美人』じゃないんだよね?
「見た目詐欺かどうかはともかく、変な人に連れていかれない様に注意して下さいね?」
「ヘンな人って、子供じゃあるあるまいし……。……まさか、人攫いとか頻繁にあったりとか……?!」
「無い訳じゃありませんね。」
「こわ!?」
「なので、充分ご用心下さいね。」
リエラちゃんの発言は、『ついでに、アスラーダさんにも近寄らないで下さいね』と言う副音声付で聞こえた気がする。
あの人は、リエラちゃんしか見て無いと思うから神経質になる必要はないと思うよ??
何故にわたしに対して神経質になるのかが、とても謎だ。
「アスタール様? こちらのドレスは少し質素ですから、刺繍を足しても良いかと思うのですけど……。」
ちなみに、こんな会話が繰り広げられる中、マイペースにアルにドレスの刺繍について話しているのは、彼の従妹だと言うセリスさんと言う女性。
流石アルの身内だなと思わず頷いちゃう位のスラッとしたスタイルの良い美人さんだ。
サラサラの長い黒髪が、お尻の少し下あたりまでストンと流されていて、揺れる毛先にじゃれ付きたくなる。
何より、優しげなその声が素晴らしい。
気のせいで無ければ、リエラちゃんもうっとりしてるし。
このセリスさんって女性の事が、どうもリエラちゃんは大好きらしい。
なんか、崇拝的な方向性で。
アルを相手に主導権を握っていたのを、あっさりとセリスさんに渡しているのにもかかわらず、それでもしっかりアルの手綱を握ってる彼女にはもう、脱帽するしかあるまい。
リエラちゃん、強い。
「確かに、彼女が言う通り刺繍を入れた方がより映えるかも。」
「では、そのようにしよう。」
椅子に縛られたまま、口を開こうとしないアルに戸惑いの表情を浮かべる彼女の為に助け船を出すと、彼は即座にそう決断した。
即決か。
元々、ゲーム内で結婚式を挙げる時に作ったモノを忠実に再現したドレスは、それだけでも美しいものではあるんだけれど、ゲーム内でのエフェクトとかの演出が無い事を考えると少し飾り気が足りない様にも見えた。
「着替え中はともかく、着付け終わった状態でならば見てもいいのではないのかね?」
不貞腐れた口調でそう言われて初めて、ドレスを着た状態を彼が見ていない事に気がつく。
そりゃ、返事のしようが無かったよね……。
ゴメン、あんまりにも目隠し姿が似合っていて気がつかなかった。
……嘘だけど。
ナチュラルに忘れてました!
「あらあら」と呟きながら、セリスさんが目隠しを取ると彼は眩しそうに眼を細める。
「りりん、ゆっくり回ってみてくれるかね?」
「こう??」
その場でクルンと回ると、ドレスの裾が軽やかに揺れた。
「次は反対。」
「ほいほい?」
くるりん♪
「裾のあの部分に……いや、そこじゃない。そっちの方だ。……この縛っているのも外してくれ、セリス。」
何か、指示をしようとして口で示すのに焦れた彼は、セリスさんにそう頼み出す。
彼女も「はいはい」と言いながら、あっさりと彼を椅子から解放した。
「針。」
「はい。」
「糸。」
「この色でよろしいですか?」
「うむ。」
彼はわたしの足もとにしゃがみ込むと、セリスさんから道具を受け取りせっせとその場で刺繍を始め出す。
「アルさんや?」
「何かね?」
「わたしはいつまでこうしていれば??」
「30分程我慢してくれたまえ。」
「長!?」
そこから30分の間、彼はモノも言わずに物凄いスピードで刺繍を施していき、30分後には大きめのユリのモチーフを仕上げて見せた。
ぐるりと、これと同じモノを刺せと、まぁそう言う事らしい。
「このスピードでやれるんでしたら、余裕で間に合いそうですね。アスタールさん頑張って下さい。」
「……うむ……?」
そして、リエラちゃんの一言で全部アルがやる事に決定した。
あれ?と言う風に彼は首を傾げているけど……まぁ、やるんだろうなぁ。
「これが、この世界で初めてのアルからのプレゼントか。」
そう思うと、とても感慨深い。
そして、目に見えてアルのやる気メーターが上がった。
なんて単純な!
そこも可愛い!!




