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それから毎晩、外を見るが大きさの変化は無い。
つまりあれは、この星の衛星なのだ。
やれやれ、参ったな。
何処の外国かと思えば、まさか異世界とはな。
道理で変なもやもやなんてものがある訳だ。
となると、推測が立つな。
前回の生で、クラスの女子がそういうのにはまっていたから。
何て言ったっけ……むな……いや、まぬ? ……マナ……か。
そうだ、それがあれば魔法がどうのこうのって言ってたはずだ。
剣と魔法の世界とかってのも言ってたな。
となると、もしかして、使えたりするのか。
しかし、使い方が判らんな。
やり方は判らんが、試しに……『風よ、軽く吹いてその布団を飛ばせ』……まあ無理だな。
そんなに急にやれる訳もないし、あんなのでやれたら逆にびっくりだな。
風……あれ、今、何か……ええと、団扇で扇ぐ感じに……風……なんか微妙に空気が動いたような。
これ、もしかして、イメージが必要か?
んじゃ、扇風機の弱のイメージで……ウィンド……お、このほうがいけるか。
んじゃ、中で……ウィンド……おお、強くなったな。
強で……あふぅ……眠い……
どうやらコツを掴んだようで、次の夜から順調に進歩していく。
あれから3ヶ月は過ぎたか、かなり自由に歩き回れるようになっているが、体力作りはまだ無理っぽい。
それでも柔軟と体操は欠かさずやっているので、以前のような柔らかい身体になると良いのだがな。
夜ばかり動くせいか昼間は眠くて堪らんが、そろそろ昼間も動かないと拙いのか?
ずっと昼間は動いてないんだが、どうにも両親の雰囲気が悪いような気がするんだけど、もしかして、寝たきりとか思われてないか?
よし、ここはひとつ……ごろり……お、妙に喜んでいるぞ。
やっぱりそうか。よしよし、ごろり……ごろり……ごろり……うっかりしてたな。
夜の訓練に夢中になって、昼間の事を忘れていたぞ。
まあ、これから少しずつやるから心配するな。
最近、面白い技を発見と言うべきか、作ったと言うべきか。
誰かが既に作っている魔法かも知れないが、筋肉にマナを浸透させるイメージ。
これをやると循環させるより簡単に力が溢れると言うか、力強く動けるのだ。
言うなれば、身体強化魔法かな。
これも滑らかになったからこそ、やれるのだと思うが。
とにかく、これを使えば腕立ても50回ぐらいやれたり、腹筋もそれぐらいやれたりする。
そして流し込む量を増やせば、更なる力が沸いてくる。
後は風の魔法の応用と言うべきか、自分の身体を浮かせられるようになったのだ。
まだコントロールが大変だけど、少しずつやれるようになっていく。
そうして僅かに浮かんだまま、部屋の中を飛んでの巡回がやれるようになり、深夜の外の散歩も可能そうに思えた。
とは言うものの、まだ外は未知なので準備が足りない。
そう、攻撃手段が無いのがネックなのだ。
そろそろ攻撃魔法も考えないとな。
だけど、これは拙いな。
夜は邪魔が入らないからと、ついつい夢中になって訓練するものだから、昼が眠くて仕方が無い。
だから目を瞑ったままで、ゴロゴロ転がってお茶を濁している状態だ。
いい加減、ハイハイぐらいはやらんとヤバそうだな。
しかし、眠い。
相変わらず目は閉じたまま、ズリズリと匍匐前進みたいな事をする。
本当はもっとスイスイやれるんだけど、なんせ前が見えないから手探りハイハイになってしまっている。
あれ、このマナだっけ、こいつを薄く延ばせば先が分からないか?
おお、見えないマナの触手で前方が分かるぞ。
目を開けなくても前方への不安が無くなったので、順調にハイハイがやれているんだけど、相変わらず眠いから目は閉じたままだ。
言わば動きながら眠っていると言うか……ううむ、夜の訓練もいい加減にしないと本当に拙いな。
そろそろ1才半のはずだが、眠くて眠くて……ゴツン……いたた……探索ミスだ、参ったな。
頭を打ってうなっていると、母親が飛んできて、何やら呪文を唱える。
『癒しの水よ、この子の痛みを癒したまえ……クリア・ヒール』
うお、痛みが消えたぞ。
お礼と言うか、キャッキャキャッキャと笑ってやろうな。
よしよし、雰囲気が明るくなったな。
それにしても。
ううむ、呪文を使えば効果がでかいのか。
しかしな、もう今更……使わない方向で確立しつつあるからな。
てかさ、これ、戦いに使うなら、そんなのいちいち唱える暇、無いだろ。
それに対人で使う場合、相手に何の魔法かバレるのは拙いだろ。
だからオレの方向性は合ってると思うんだがな。
◇
その夜、自分の足を抓って痛みが出たら、昼間に聞いた呪文でやってみる。
『我が足の痛みを取り去りたまえ、クリア・ヒール』
ううむ、確かに効果はあるけど、それでも実戦には使い辛いんだよな、こういうのって、恐らく。
それにこの詠唱って、前半部分は適当で良いのか?
『今日も元気だ、魔法が楽しい、クリア・ヒール』
う、効果が薄いな。
そうか、前半部分の詠唱は、治療を希望する場所の指定と、その効果範囲を自らに指示するイメージになっているのか。
となると、その指示イメージが出るなら何だって良い事になるな。
『足の治療、クリア・ヒール』
ふむ、これで良いのか。
これぐらいなら無詠唱とそこまで変わらないし、それで使用量が減って威力が増えるならありがたいぐらいだな。
普段使いにはこれで、戦闘時には無詠唱でやれば良さそうだ。
もっとも無詠唱とは言うものの、えいやって感じに気合で発動って感じになっている。
つまり心の中で『足の治療、クリア・ヒール』を唱えているようなものなのだ。
回復魔法は傷が消えるイメージというのが実に作り辛く、呪文任せにするしかない部分もあり、中々無詠唱も難しいようだ。
その点、攻撃系はまだ対象へのダメージをイメージしやすいせいか、それなりにやれそうな感じがする。
だけど、うっかりそこらの物を壊すとヤバいので、風の威力でそこらの物を動かす程度に留まっている。
それにしても何度もやっていると、またしても眠気が……ああ、外が薄闇になって来た。
早く寝ないと、また昼間は目が開かなくなって……拙いんだけど、ちょっとコツが掴めて来たような気がしてさ、今しかないって感じになっている。
こうなれば目覚まし兼用で訓練するぞと、ハイハイして壁に頭突き……治療、頭突き、治療……おお、これ良いな。
頭を打った瞬間に、痛みを覚えて眠気が消えるが、その時に痛みが消えるイメージで何とかなるのは良いが、バレたら精神を疑われそうだぞ。
何とか昼間に目覚めると食事の時間だった。
離乳食らしき物を口に運ばれるけど、手探りで乳の出る双丘を要求する。
乳離れする気はあるんだけど、眠くて目が開かないからメシが何処にあるか分からん。
乳なら手探りで何とか判るし、吸えば出るからお手軽だし。
いい加減、夜の訓練も減らしたいんだけど、やってると夢中になって、気付いたら朝だもんな。
さすがに2才まであと3ヶ月ともなれば、乳だけと言うのも拙いんだけど、もう眠くて眠くて……仕方が無い、夜の訓練はひとまず止めよう。
これじゃキリが無い。
冴える目を無視して何とか寝よう寝ようと努力して、何とか浅い眠りを獲得したのは良いが、急には無理だった。
ふぁぁぁ、眠いが何とか起きていられるか。
薄目で何とかテーブルの上が見えるか。
スプーンで口の中にメシを入れてくれると、もしゃもしゃと……うん、これならいけるか。
半分寝ながら食ってるようなものだけど、何とか昼型に戻さないと。
食ってる最中に意識が飛ぶ。
どうやらまた寝てたみたいだ。
今夜こそ、たっぷり寝ないとな。
そうして何とか眠ったのは良いが、今度は眩しいぞ。
ああ、昼間ずっと目を瞑っていたから、明るさにまだ目が慣れてないのか。
少しずつ慣れていくしかないな。
そうして何とか夜は眠れるようになり、昼間は薄目ながら開くようになる。
まだ全開にすると眩しいのが難点。
しかし、これじゃ糸目とか言われそうだな。
でもまぁ、楽なほうが良いか。
すっかり糸目状態に慣れ、親もそれで慣れていった。
これだと急に真っ暗になっても即座に暗闇に対応出来るっていう、お得な方式なのだ。
なんて言うのは現実逃避だな。
もう少し大きくならないと、どうにもまともに目が開けられんな。
夜なら開くんだけど、昼間はどうにも眩しいからな。
よし、今日は掴まり立ちするぞ。
今更な事だけど、マナを使わずに身体能力だけで立ち上がるが、でもこれ余裕だ。
わざとふらふらしているだけだし。




