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闇のカラス・改訂版  作者: 黒田明人
闇烏3
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30

 

 少しずつ伝い歩きの距離を伸ばしていく。

 明日には2才だし、さすがに歩かないと遅すぎると言われるだけだろう。


 そして2才の誕生日なんだけど、またお祝いするのかと思ったら、家の外に抱いて連れて行くが、何をしに行くんだろう。

 まあそんな事より初めての外は、見た事もないような風景を期待していたんだけど、ちょっと昔の風景と言うか、これは文明が低いのか?

 日干しレンガを積み重ねたような壁を持つ、藁葺き屋根のような家屋が不揃いに立ち並んでいる。

 確かにまともな家屋もありはするが、建て方がバラバラと言うか、一貫性がない。

 まるで必要で適当に建てていったような感じなのだ。

 そうこうしているうちにどっかの家屋に入っていく。


 公民館? なのかな。


 中に入ると老人連中が数人居て、他の赤ん坊も来ていた。

 そして身体測定みたいなのをやっているが、何をしろと言うんだろう。

 オレはもう、外の景色とか見ていただけで一杯一杯で、また眠気が出ちまってどうしようもない。

 それでも何とかやらないといけないんだろうし、頑張るよ、ママさん。


 爺さんに見せて? ハイハイ? 立て? 歩け?


 身振り手振りでやる事を言うが、まだ伝い歩きしか披露してないのに、いきなり歩けとか実績が無いのにびっくりさせるだけだぞ。

 仕方が無いから立とうとして床に手を付く。

 最近、成長作戦始めたんだから、いきなりはヤバいんだって。

 それでもよろよろと立ち、そろりそろりと足を出すから安定が悪く、あたかも慣れてないような歩行っぽく見せて、うお、倒れる。


 ううむ、ゆっくり動作は逆に難しいぞ。


 あれ? 首を横に振ったぞ……それ、何て意味? 

 あれ、ママさん、オレを置いて何処に行くの。


 おーい、ママさーん。


 ハイハイしながら追いかけようとすると、知らないおっさんに抱えられ、村の外に連れていかれるが、おい、そっちは崖だぞ。

 待て待て待て、止めろぉぉぉ……ポイッ……うおおおおお……フライング……止まれぇぇぇ……

 はぁはぁはぁ、やってくれたな、あの野郎。

 飛ぶ練習してなかったらそのまま死んでたぞ。


 しかし、母親も母親だ。


 昨日まで世話焼いてくれてたのに、いきなりこの仕打ちかよ。

 しかも、この下には化け物がわんさかだしよ。

 これからどうすっかな。

 まさかいきなり殺されそうになるとはな。

 少し成長が遅いぐらいで捨てるのかよ、この世界は。


 参ったな……まあ、何時までも飛んでいる訳にもいかんし、何処か休める所は無いか。

 無いな……仕方が無い。崖に穴掘りだ。

 ドリルのイメージのままに横穴を掘る掘る彫る……ふうっ、マジ眠い。

 本当にこれからどうしようかねぇ。

 まあ、とりあえず寝るか。


◇


 穴倉もかなり充実してきた。


 夜になったら村の何処かの家の中から、毛布やら食い物なんかを頂いて来るからだが、頼むからバレるなよな。

 空飛ぶ化け物も居るようなのと人に見つかると拙いので、夜だけの行動になっている。

 入り口は毎回、土を寄せてフタっぽくしているが、そのうち何とかしないとな。

 床には藁を敷いて、その上に布を敷いて、そして毛布で丸まって寝るって感じだ。

 穴を広げたのと同じく、崩れないように天井を強化したり、柱を作ったりしておいた。

 地震が未だに無いけど、皆無って訳でもあるまいし、崩れて生き埋めだけは嫌だからな。

 また今日も夜の探索をするのは良いが、折角昼型に治したのに、またぞろ夜型になりそうだぞ。


 村の食糧倉庫の明り取りの窓から侵入し、持てるだけ持って帰る。


 まるでありの巣のような我が穴倉は、小さな入り口を抜けると玄関っぽい空間がある。

 扉代わりの木の板を脇に置いてあり、入り口の穴をそれで塞ぐのだ。

 突っかい棒で倒れないようにして、今日の収穫をそれぞれの部屋に運んでいく。

 食い物は食糧倉庫、衣類は寝室、その他のあれこれは作業場に。


 玄関の横には台所があり、ちょっとしたキッチンの様相を呈している。

 レンジファンもどきな物を土魔法で拵えてあり、壁の中には排気ダクトっぽいのも拵えてある。

 そして玄関脇の崖には、風雨を防ぐ排気カバーのようなのを据えてあり、穴倉からの排煙が出るようになっている。

 そしてレンジファンの直下にはコンロっぽい場所があり、ガス管風のパイプを設置して、マナ流しで火の魔法利用のコンロ風な煮炊きがやれるようになっている。

 パイプの先に指を突っ込んで、そこからマナを流すイメージで『弱火』『中火』『強火』でやれている。


 後は食生活の改善だけど、これが中々巧くいかない。


 なんせこの集落の調味料は塩だけであり、発酵も知らないらしくパンは小麦粉に塩水で練って焼くだけなのだ。

 なので固いパンを塩水っぽいスープに浸けて食べるだけであり、栄養バランスとか以前の問題だ。

 確かに畑の作物もありはするが、配給制のようで分配がかなり少ない。

 どうにも不作なのかどうか知らないが、離乳食はぐずぐずになったパンの残骸が入った塩水といった風情だったからな。

 だから離乳がはかどらなかったとも言うが。


 それはともかく、どうにも必要栄養素が足りない食生活に、その改善を最優先に考えている。


 ◇


 あれから半年が過ぎたけど、両親はまた作るつもりで励んでいるようだが、集落の事は色々判ってきた。


 あの村は周囲の街や村から隔離されていて、独自の決まりで運営されている。

 そして耕作面積に限りがあるようで、出来の悪い赤子は捨てて、優秀な子供を育てて運営されて来たようだ。

 2才でまともに歩けないと、崖から捨てられるらしいな。

 しかしな、その数じゃ種族限界数割り込んでいないか?


 初めて自分の姿を見た時には驚いたが、この姿は先祖帰りのようだ。

 かつてここに村を作った偉大な魔法使い? かな。

 そいつの姿が今のオレの姿と良く似ていて、銀髪は稀に出るらしいけど赤目まで揃うのは過去に数例しかないとか。

 そしてその数例は全て、強力な魔法を駆使して村に恩恵をもたらしたとか。

 なんでそんなに詳しく知るようになったかと言うと、崖から婆さんが落とされた時、必死で風魔法でキャッチしたんだ。


 そしてここに誘致したんだけど、オレの顔を見て偉人様とか言うんだよ。

 それで、よくよく話を聞いてみると、その手の話を色々してくれたんだ。

 本来ならオレは、村の特権階級クラスの扱いを受けるはずが、何かの間違いで捨てられたらしい。

 もしかすると糸目のせいで、紅い瞳が分からなかった可能性もあるが、もうあんな村とかどうでも良いので、婆さんと2人で暮らそうかと思ったんだ。

 だけど、オレに教えるだけ教えたら、翌日、下に自分から落ちて行ってた。

 歩けないぐらいの事で死ぬ事も無いだろうに……這ってまで入り口に行かなくても……参ったな。


 婆さんを食っている化け物を、無意識に攻撃……魔法でな。

 オレにとっては久しぶりの対話の相手だったので、何とか助からないかと思ったんだけど、即死じゃどうにもならなかった。

 それで化け物は死んだんだけど、身体が妙に軽くなったんだけど、あれってもしかして。

 なので次々に倒せば軽くなるし力も漲るしで……やっぱりこれってレベルアップだろ。


 あのクラスの子、さまさまだな。


 あの子のお喋りを聞いてなかったら、五里霧中だったぞ。

 オレは元々、愚痴の聞き役というか、話好きなあいつは話し相手を見つけたと思ったのか、オレによく勝手に話をしていたんだ。

 特に興味も無い話だったけど、それも学識の収集のクチかと思い、それなりに覚えてはいた。

 ただ、あれから死を経由した事で、ちょっとうろ覚えになっていたけど、一連の知識は今少しずつ思い出しつつある。


 だけど、浅い知識なのが残念だけどな。


 RGPか?……RPGかな?……どっちだろう。

 そもそも、何の略なのかが分からない。

 何とか何とかゲーム……うん、Gは多分、ゲームの略だろうな。

 となるとRPGが正解か。


 それはともかく。


 なんかそういうゲームがあるらしく、敵と戦うとレベルが上がり、レベルが上がると強くなるとか言ってたんだよな。

 なんでもそいつの兄貴が詳しいらしく、色々教わってゲームをしているとか。

 だからあんなに詳しかったんだな。

 オレも何かおねだりしてみれば良かったか。

 まあもう今更だけどな。

 てか、家出しなかったらジュニアに会えなかったって事だろ。


 だったら結果オーライだよな。


 てかさ、あいつは跡目を継ぐのが決定事項になったけど、最初の生では継げなかったんじゃないかな。

 だからダブルスパイとかやってたんじゃないのかな。

 そうか、オレが居たからあいつのサポートに徹したから継げるようになったのか。

 それに、フランス語もスパルタで教えたしな。


 それで伴侶も得て次期確定になって、焦って殺そうとして間違えてオレを殺したというのが真相だろ、多分。

 普通、女が男を姫抱きとかしないからな。あれでオレをジュニアと間違えたんだろ。

 オレが関わって結果が悪くなるならまだしも、良くなったんだからまあ良いか。

 あんな事があったけど、もうオレの事は忘れて格式のある家の娘さんと幸せになれよ。


 結局、狙撃銃も使わなかったなぁ。仕事に使おうと思ってたのに。

 

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