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ありすとてれす  作者: 春乃
246/259

246話 生徒会長に?!

「二人には、来年の生徒会長と副会長になってほしいなって思っているの」


 ……え?

 思いもよらない言葉すぎて、思考が停止し、絶句する。


 告げた桜町さくらまち会長の顔は、相変わらず人好きのする柔らかい笑顔だけど、冗談で言っている様子は見受けられなかった。

 その隣にいる十里木じゅうりぎ副会長も訂正をする様子はなく、わたしと水卜みうらちゃんを見つめている。


 紛れもなく、今日わたしたちが生徒会室にやって来た本題がこれなのだと理解した。

 けど、やっぱり信じられない。


「わたしが、生徒会長……ですか?」

 

 たしかに次の生徒会長を決める時期には差し掛かっているけど、それがわたしなんて……。

 今までそんな話は一切なかったし、わたしには関係のないことだと思っていた。


 戸惑いながら確認するわたしに、桜町会長はゆっくり「ええ」と首肯する。


「もちろんよ。最上もがみさんが生徒会長で、水卜さんが副会長」


「いや、役職のことじゃなくてですね……」


 そりゃあ、順当にいけば学年が上であるわたしが生徒会長で、水卜ちゃんが副会長にはなると思う。

 けど、それはわたしも水卜ちゃんも引き受けたときの話であって、わたしが聞きたいのはそこじゃない。


「あらぁ? なら、何かしらぁ~?」


「そもそもとして、どうしてわたしが生徒会長にって、お話になっているのかなって」


「え? そんなのわかりきっているじゃない」


 何を当たり前のことを、とでも言いたげに桜町会長は首をかしげる。

 そして、ふっと口元を緩めて、けれど口調は至って真面目に告げた。


「あなたたちなら、任せられると思ったからよ」


「…………」


 その言葉に、思わず目を瞠ってしまう。

 現会長にそんな風に言ってもらえるのは、すごく嬉しい。お世辞だったとしても、それは嘘じゃない。


 でも、どこで会長の信頼をわたしは得たのだろうか。

 特別な繋がりがあったわけじゃないし、よくわからない。


 と、そんな胸の裡を見透かされたのか、会長が苦笑を浮かべた。


「ふふっ、どうやらまだ納得していないみたいね」


「す、すみません……とても嬉しいんですけど」


「別にいいわよ。けれど、知っておいてほしいのは、これはわたしだけじゃなくて十里木ちゃんと話し合って決めたことなの」


 視線を桜町会長から十里木副会長に移すと、十里木副会長は迷うことなくうなずいた。


「最上。君はクラス委員をよく務めているし、体育祭などの行事ではクラスを上手くまとめていると聞いている。成績も優秀で、先生方からの信頼も厚い。学内での言動も良好だ。正直、君以外には考えられない」


 これぞ褒め殺し……。

 桜町会長もニコニコと眺めているだけで、特に否定はないらしい。


 う、嬉しいけど恥ずかしい……。

 どう反応したものかと困っていると、十里木先輩が顔をわたしから水卜ちゃんへ向けた。


「そして水卜。君も成績が優秀なのは言わずもがな。しかし一番は行動力と観察力だ。オカルト研究会の廃部を免れるよう懸命に行動したり、占いもやっているそうじゃないか。当たるとうちのクラスでも評判になっていたからな」


「あ、ありがとうございます……!」


 部屋に入って来たときはテンションが高いっていうか、軽い調子だった水卜ちゃん。だけど、今はわたしと同じ褒め殺しに合って、顔を朱に染めてしおらしく俯いていた。


「君なら最上のサポートも上手くできるだろう。今年は部活もあるから君は副会長に、というわけだが、最上の後は君が会長になることも考えていてほしい」


 要約するとつまり、本気も本気でわたしと水卜ちゃんは正式に次期生徒会長と副会長になってほしいって思ってもらっている、らしい。

 大変光栄なことだし、そう思って期待してもらえるのはすごく嬉しいことだ。


 でも、わたしに務まるだろうか。

 やりがいは間違いなくある。だけど、それ以上に大変な立場だと思う。


 ……今はまだ頭の中が混乱しているから、冷静には判断できそうもない。


「あの、返事ってこの場で?」


 簡単に決断できそうもなかったので、桜町会長に聞いてみる。


「まさか。期限は一週間後だから、そうねぇ……」


 会長はあごに手を添えて、少しの間思案した。

 そして、左手の指を三本立てた。


「まずは三日とか四日くらいで返事をくれると助かるわ。それまでは、何か質問があったらなんでも聞いてくれて構わないから」


 三日か。

 あまり長くはないと思うけど、会長たちもできる限りの猶予をくれたのだろう。


 だって、もしわたしと水卜ちゃんが断ったら次の候補を選ばないといけない。

 二人が次期会長と副会長を推薦して選挙に送り出す必要は決められたことではないけど、二人としては信頼できる人に任せたいんだと思う。


 その気持ちは察することができたので、わたしも水卜ちゃんも納得してうなずいた。


「わかりました。それで、あの会長」


「んー? 何かしらぁ」


「仮に選挙に出ることになったとしたら、選挙だから全校生徒の投票で決まるんですよね?」


「そうね。生徒会選挙だもの。去年までと変わらないわ」


「そのー、わたしでも当選するのかなって……」


 これだけ会長と副会長に期待されておいて、落選しました、なんてダメだろう。

 わたしの実力不足で二人に恥をかかせてしまうことにもなりかねない。


「それなら心配しなくても大丈夫よ」


「そうなんですか?」


「ええ。絶対ではないけれど、この学校は前の会長が決めた生徒が次の生徒会長になることが多いから。わたしもそうだったし」


「そうだったんですか」


「だから、あとはあなたたちの気持ちだけね。やりたいのか、やりたくないのか。困らせちゃっているかもしれないけど、考えてもらって正直な答えを聞かせて?」


「……はい」


「それじゃあ、今日のお話はこれでおしまい。わたしと十里木ちゃんは少し残るから、先に帰って?」


「わかりました」


 わたしは早速、頭を悩ませながら立ち上がり「失礼します」と生徒会室をあとにするのだった。


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