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ありすとてれす  作者: 春乃
238/259

238話 占いへ

 お母さんを見送ってから、わたしとてれすは二人で文化祭を巡ることになった。

 

 とはいっても、ご飯はお母さんと合流する前に食べたし、桜町さくらまち先輩のクラスでもパンケーキをいただいた。

 観賞する出し物も、お母さんと一緒に見たし、今は体育館は準備の時間だから何もしていない。


 ……どうしようかなぁ。


 歩きながら、少しばかり頭を悩ませる。

 このまま歩いて色々なところを巡って、一緒に文化祭を見て回るのも楽しいけど、せっかくだから何かしたい。


「あの、ありす」


「あ、何かあった?」


 パンフレットとにらめっこをしていたてれすに声をかけられて、わたしは顔を向ける。

 するとてれすは、「ええ」と言って、パンフレットをわたしに見せてくれた。その際、人差し指で一か所を示す。


「ここなのだけど」


「占い? へぇ、そういうのもやってるんだ」


 パンフレットによると、どうやらオカルト研究会の出し物として、三年生の教室があるフロアの空き教室で行っているらしい。


「ええ。どう、かしら……?」


「うん、楽しそう! 行こう行こう!」


 占いは好きだし、てれすが提案してくれたのだから断るわけない。

 でも、わたしはもちろん他の人も占いとかおみくじって好きだから、人が集まっているかも。


 三年生の教室は、桜町先輩と十里木じゅうりぎ先輩のメイド喫茶をはじめとして人がたくさん集まっていた。だから、その影響もあって、大人気で行列ができていてもおかしくない。

 

 なら、ちょっと急いだほうがいいかも?

 と、わたしとてれすは廊下を走らない程度に急ぎ足で階段を上がって、三年生の教室が並ぶ階層へとやって来た。


 桜町先輩のクラスが、未だに盛り上がっているのを確認しつつ、その前を通過する。

 もう少しで目的地である空き教室に辿り着きそうというところで、わたしは少し思い出した。


「あっ」と声を漏らしてしまったものだから、てれすが「どうかしたの?」と首を可愛らしくかしげた。


「あ、ううん。たいしたことじゃないんだけど」


「なに? その、ありすが嫌ならやめても……」


「ち、違うよ! そうじゃない。わたし、占いとかおみくじとかすっごく好きだから」


 朝の情報番組の誕生月占いも、天気予報以上に見逃せないと思って見ているくらいには、うらないが好きだという自負がある。

 だから、てれすの提案が嫌だったということはない。もし嫌だったのなら、てれすが提案したときに断っている。


 わたしとてれすには、嫌な時は嫌って言えるくらいの信頼関係は当たり前にあるのだ。

 親しき仲にも礼儀ありっていう言葉も大事だけど、変な気は遣わない間柄になれている……と思うし、もっとなりたい。


「えっとね。清水寺のことを思い出してて」


「あぁ、そういうこと。たしかに、あそこはおみくじだったけど、似たようなものかもしれないわね」


「そうそう。でも、それからまだあんまり日が経ってないから、結果ってどうなるのかなぁって、ちょっと思ったの」


 てれすに誤解がないようにそう説明すると、てれすは「たしかに」とあごに手を添えて、何やら思案し始めてしまった。


「どうなのかしら……。いや、でも。おみくじと占いって違うと思うし、あんまり気にしなくてもいいんじゃないかしら?」


「あはは、そうかも」


 てれすの言う通りだと思う。

 占いって言うと、タロットとか星の位置とか、名前とかで判断するっていうイメージがある。だから、おみくじとは別物だろう。


 わたしたちは変なことを考えずに、純粋にうらないを楽しめばいいのだ。


 そうこうしていると、目的の教室の前にやって来た。

 暗幕で飾り付けがされていて、雰囲気は魔女の館といった感じである。


 そして予想通り、教室の前にはすでに数人の生徒たちが列を作っていた。

 わたしたちも、受付をしている生徒に声をかけて、整理券をもらって列の最後尾に並ぶ。

 

 ざっと見たところ、十人以上は待っている感じだ。いち、にーと並んでいる人を数え始めた時、てれすのつぶやきが耳に入った。


「すごい人気ね」


「だねー。それだけ人気ってことは、当たるってことじゃない?」


「そう、なのかしら?」


「たぶん? でも、けっこう雰囲気は本格的じゃない?」


「そうね」


 と二人で再度、看板や暗幕に目をやる。

 黒を基調としたその外観は、ちょっとだけお化け屋敷を思い出してしまう。


「わたし、こういう占いって初めてかもしれないわ」


「わたしも」


「ありすもそうなの?」


「え? うん」


 首肯すると、てれすが首をかしげて質問する。


「さっき、占いが好きだと言っていたから、よく来るのかと思っていたわ」


「あぁ、うん。好きって言っても、わたしが良く見るのはテレビでやってるコーナーのやつとかだから」


「そうだったのね」


「うん。だからすっごい楽しみっていうか、ちょっとドキドキしてる」


 高校の文化祭の占いとはいっても、魔女の館だし、個人で占ってもらうのは初めてだから浮かれる気持ちと緊張が入り混じっていた。


「こういう占いって、たしか二人の相性とかも占ってもらえたよね?」


「え、ええ。おそらく」


「わたしとてれすも占ってもらわない?」


 提案すると、てれすは「ええ」と即答でうなずいてくれると思った。

 けど、少し思案したように固まる。


「どしたの?」


「いえ、その……。大丈夫だとは思うけど、万が一にでもあまりよくない結果が出たら……」


「大丈夫だって。わたしとてれすだよ?」


「そ、そうね」


「そうそう。それに、そういうときは信じなくていいんだって。実際、わたしとてれすは仲いいんだし。え、そうだよね?」


「え、ええ……わたしはそのつもりよ。でも、それっていいのかしら……」


「いいのいいの」


 とおしゃべりをしていると、いつの間にやら順番は進んでいて、次はわたしたちの番になっていた。

 数分ののち、教室の扉が開いて、わたしたちの前に入ったペアが出てくる。


「それでは、次の方どうぞー」


 係の生徒に導かれて、わたしとてれすは魔女の館へと足を踏み入れるのだった。



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