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ありすとてれす  作者: 春乃
206/259

206話 文化祭の出し物決め

 修学旅行が終わって、初めての授業。

 教室はどこかまだ、修学旅行の雰囲気が抜けきっていない感じがする。だけど、授業は予定通り、今まで通り進められていった。

 

 そしてつつがなく午前の授業、お昼休み、5時間目と過ぎていって、今日最後の授業となった。

 朝のショートホームルームぶりに担任の彩香ちゃん先生がやってくる。

 少しざわついているというか、ふわふわとしている教室の空気を見て苦笑を浮かべた。


「修学旅行の気分はまだ抜けてないかもしれないけど、今日から授業が始まったんだから、切り替えてね」


 起立、礼のあと、先生は教室を見渡しながら注意をする。

 出席簿を記入して、再び口を開いた。


「切り替えて、と言いましたが、みなさんも知ってのとおり、一か月後にまた行事があります」


 そう、修学旅行が終わったと思ったら、すぐに文化祭が行われるのだ。

 うちの学校では毎年11月の第一土曜日と日曜日の二日間の開催となっている。


 何をするかは決まっていないとはいえ、準備の期間を含めると、もう目の前に迫っているといっても過言ではないだろう。

 2年生はイベント盛りだくさんで楽しいけど忙しい。


 去年は模擬店を出したな、とわたしが思い出していると犬飼さんが「はいはーい!」と挙手をした。

 先生に当てられたわけじゃないけど、みんなを代表してビシッと告げる。


「文化祭!」


「はい、そうです。みなさんは二年生で去年も経験してるから、なんとなく流れはわかっていると思います」


 との先生の言葉に、クラスのみんながうなずく。

 そのわたしたちの反応を見て、先生は説明を続けた。

 

「ですので、今日はホームルームの時間に、クラスの出し物を決めたいと思います」


 そして、先生の視線がわたしに向けられた。

 

「最上さん」


「はい」


「ここからはお願いできる?」


「はい、任せてください」


 みんなの意見をまとめるのはクラス委員の仕事、ということだ。

 もちろん引き受ける。

 球技大会や体育祭の種目決めだって、上手く決めることができたし、今回もきっとうまくいくだろう。

 

 先生が黒板の前から横にずれてくれたので、わたしは席から立ち上がった。

 その際、隣の席の高井さんから、


「最上さん、がんば」


「ありがと」


 と激励を受けて、黒板の前、先ほどまで先生が立っていた場所に向かう。

 一番前の席なので、移動がすごく楽だった。

 てれすと離れてしまっているのは寂しいけど、こういう面ではよかったのかもしれない。


「それじゃあ、先生の言ったとおりクラスの出し物を決めたいと思います」


 教室にいる生徒全員の視線が一斉にわたしに注がれる。

 と、思ったけど若干一名、机に突っ伏して寝ている生徒がいた。


「てれす、起きて」


「…………」


「てれすー」


 ぐっすり眠っていしまっているのか、てれすはわたしの声に反応を示してくれない。

 わたしがすぐ近くまで行って起こしてあげたいけど、今はクラス委員の立場もあるし、授業の時間も限られている。

 てれすの隣の席の赤川さんが、てれすの身体を揺すってくれたので、任せることにした。

 

 そしてわたしは、みんなに質問する。


「何かやりたいことがある人はいますか?」


「はいはーい!」


「はい、犬飼さん」


 指名された犬飼さんは立ち上がると、元気よく答える。


「喫茶店みたいなのやりたい! ドラマとか漫画でよく見るやつ!」


 犬飼さんの意見に対して、他の生徒たちは上々な反応。

 たしかに、軽食なんかを提供しつつ接客もする喫茶店は人気が高いように思える。


「最上さん」


「はい、赤川さん」


「わたしはやっぱり模擬店がいい。タピオカとか」


 これまたクラスメイトの反応は上々。

 喫茶店と並ぶくらい、模擬店も王道だろう。それに流行っているタピオカなどを組み合わせれば、お客さんも来そうだし良さそうだ。


 その後、二人の意見を皮切りにブレーンストーミングのように話し合いは進められていった。

 とりあえず、今の段階ではアイデアは多いほうがいいと思うので、とりあえず全て黒板に書いていく。


 その結果。


「どうしよ、これ……」


 黒板が埋まるほどのアイデアが出て、アイデア出しはとりあえず打ち止めとなった。

 赤川さんのタピオカを筆頭にからあげ、たこ焼き、焼きそばなどの飲食の模擬店、射的やくじなど、遊ぶ系の模擬店。

 犬飼さんの喫茶店も、普通の喫茶店もあれば、おにぎり専門とか、メイド喫茶、男装喫茶などいろいろと意見が出た。


 他にも、お化け屋敷、学校全体を使った謎解きゲームとか、体育館のステージを使わせてもらって劇とか、本当に様々な意見が集まったと思う。

 いや、集まりすぎかもしれない。


 ……ここからどうやって意見を絞ってまとめていけばいいのか。

 頭を抱えていると、


「最上さん!」


「どうしたの、犬飼さん?」


「家庭科部でも食べ物は出すから、食べ物の模擬店はやだ!」


「あ、そっか。家庭科部でも、何かやるんだね」


「うん。クッキーとかパウンドケーキとか」


 言われてみれば、部活動の出し物は比較的飲食系の模擬店が多かったような気がする。だとすると、やめておいた方がいいのだろうか。


 個人的には、去年も模擬店をやったわけだから、今年は違うことをしたいなという気持ちがある。

 喫茶店なら、ウエイトレスてれす、メイドてれす、男装てれすなど、お化け屋敷ならお化け役のてれすを見ることができるのでは……?

 と思ったけど、てれすは進んでそういうことはしないだろう。残念だ。


 それに、クラスでは模擬店をやりたい子もいるだろうし……。


 どうしたものかと考えていると、チャイムが鳴った。


「え、嘘……ど、どうしよう……」


 先生は文化祭の出し物を決めると言っていたけど、まったく決まっていない。

 今から決めるとなると、同じ時間、もしくはそれ以上の時間がかかってしまうだろう。


 放課後もみんなを拘束するようなことはしたくないし、と助けを求めるように先生を見る。


「絞り込むのは次の時間にしましょうか」


「いいんですか?」


「大丈夫よ。来週いっぱいまでに決まればいいから」


「わかりました」


 たしかに、もう一か月しかないという捉え方をしていたけど、まだ一か月も先なのだ。

 本格的に準備が始まるのは早くても二週間前とかだったと思うし、忙しくなるのは一週間前とか、そのくらいだろう。


 ということで、今回は各自でいったんアイデアを持ち帰って、再度検討することになった。


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