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アストレア学園物語  作者: 愛庵苦労


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第1章 アオハルのはじまりは、図書塔の階段で

王立アストレア学園――王国中の才ある者が集う名門校。

騎士、魔法師、政治家、貴族、そしてごく普通の平民までが同じ制服を着て学ぶ、奇跡のような場所。


その朝、平民の少女 アイリーン は、図書塔の階段で盛大につまずいた。


「きゃっ……!」


落ちかけた本を支えたのは、銀髪の青年――王子 クリストファー だった。


「大丈夫か、アイリーン嬢。怪我はない?」


「は、はいっ……! あ、ありがとうございます、殿下……!」


突然の王子登場に、アイリーンの心臓は跳ね上がる。

だが次の瞬間、階段の上から鋭い声が降ってきた。


「殿下、そんな平民に触れる必要はありませんわ」


公爵令嬢 エミリア が、取り巻きの オリアナ を従えて見下ろしていた。


「エミリア、彼女は困っていた。それだけだよ」


「……殿下はお優しすぎますわ」


エミリアは不機嫌そうにスカートを翻し、去っていく。

クリストファーは苦笑しながらアイリーンに手を差し伸べた。


「気にしなくていい。彼女は婚約者だが……まあ、色々あるんだ」


「い、いえ……その……」


アイリーンは言葉に詰まる。

王子の婚約者と平民の自分。

その“色々”が何か、想像するだけで胃が痛い。


そこへ、息を切らした少年が駆け上がってきた。


「アイリーン! 大丈夫か!」


幼馴染で騎士志望の カール だ。

クリストファーを見て、慌てて姿勢を正す。


「し、失礼しました殿下! アイリーンを助けていただき……!」


「気にしないでくれ。では、授業があるので」


クリストファーは軽く微笑み、階段を降りていった。


カールはアイリーンの肩を掴む。


「……アイリーン、殿下と何があったんだ?」


「な、何もないよ! ただ転んだだけ!」


「転んだだけであんな距離まで近づくか?」


「ち、近づいてないよ!」


「いや、近かった。めちゃくちゃ近かった」


階段の陰から、明るい声が割り込んだ。

友達の イレーヌ が、にやにやしながら顔を出す。


「アイリーン、顔真っ赤だよ? 恋の予感ってやつ?」


「ち、違うってば!」


「ふーん? じゃあカールはどう思う?」


「お、俺は別に……!」


カールも真っ赤になった。


その様子を、さらに別の少女が腕を組んで見ていた。

勝気な少女 ウェンディー だ。


「アイリーン、あんたはもっと自覚しなさいよ。

 殿下に助けられるなんて、普通は一生に一度もないんだから」


「そ、そんな大げさな……」


「大げさじゃないわよ。

 それに――あんた、殿下に気に入られてるかもね」


「えええええっ!?」


アイリーンの叫びが図書塔に響いた。



魔法師団長の息子 キッド は、窓辺で魔法書を読みながらつぶやいた。


「……またクリストファー殿下がアイリーンを助けたのか。

 面白いな。あの子、魔力の流れが普通じゃない」


宰相の息子 ケビン は冷静に眼鏡を押し上げる。


「キッド、興味本位で近づくなよ。

 あの平民の少女は、学園の人間関係を揺らす“鍵”になる」


「鍵? 何の?」


「それは……まだ分からない」


王子の側近 コナー が、紅茶を飲みながら言った。


「殿下は、あの子に“何か”を感じている。

 それだけは確かだな」



エミリアは自室で鏡を見つめながら、唇を噛んでいた。


「……あの平民の子。殿下の視線が、明らかに違ったわ」


オリアナがそっと耳打ちする。


「エミリア様、どうなさいます?」


「決まっているでしょう。

 ――あの子を、学園から追い出すのよ」


その言葉は、静かに、しかし確実に物語を動かし始めた。

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