第32話 告知――大会の訪れ
板書の音が止まった。
ハーグ・レイゼンは一度だけ教室を見渡し、口を開く。
「……今回はここまでだ」
まだ時間は残っている。だが誰も口を挟まない。その一言で十分だった。
「来週より、校内戦闘演習大会を実施する」
一拍。教室の空気が変わる。
「大会?」「この時期に?」
小さな声が散る。
「形式は例年と大きくは変わらない。チーム単位での戦闘。評価対象は結果だけではない。過程、連携、判断も含めて総合的に見る」
視線が教室全体をなぞる。
「本日中にチームを編成し提出しろ。自由編成だ。ただし人数は四名まで。偏りがあればこちらで調整する」
「以上だ」
一気に音が戻る。
「おいどうする?」「組む相手決めてるか?」
ざわめきが広がる。
ユークがすぐにこちらを向いた。
「レイン、組むだろ?」
迷いがない。最初から決めていたような口調。
「……ああ」
断る理由はない。
ラグも頷く。「俺も入れてくれ」
「四人までだよな……あと一人」
ユークが周囲を見る。その視線が一人で止まる。少し離れた席でノートを閉じたばかりのクラウスだった。
「クラウス、組まないか?」
クラウスはゆっくりと顔を上げた。視線がレインに触れる。数秒。何かを測るような間。
「……構わない」
短く答える。それだけで決まった。
「よし、決まりだな」
自然な流れ。無理はない。
ハーグはそれを眺めている。口は挟まない。ただ、見ている。その視線が一瞬だけレインの位置で止まる。だが、すぐに動いた。
「用紙は前だ。記入して提出しろ」
ユークが手を挙げる。「俺行ってくる」
さっと前に出る。ラグもそれに続く。
レインはその場で周囲の音を聞いていた。
何かが、少しだけ動いた気がした。形はない。理由もない。ただ、流れが変わった。それだけが、はっきりしている。
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