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第2話 「普通じゃない」――それだけが確かなこと


 騒ぎはしばらく収まらなかった。


 測定水晶のひび。原因不明。誰も触れていない。


 教師は強引に授業を打ち切り、生徒たちを解散させた。でもざわめきは廊下に出ても続いていた。


 俺は人の流れに乗りながら、頭の中を整理しようとしていた。


 うまくいかない。


 あれが何なのか、まったく分からない。


(触れてないのに、壊した)


 あるいは、壊してない。


 たまたまひびが入っていただけかもしれない。俺には関係ない話かもしれない。


 でも、あの感覚は本物だった。


「ねえ」


 声をかけられたのは、廊下の角を曲がったときだった。


 振り向くと、金髪の少女が立っていた。


 姿勢がいい。無駄な動きがない。近くで見ると、印象がさらに強い。崩れない、という言葉が似合う。


「さっきの水晶、見てたよ」


「見てたなら分かるだろ」


 俺は肩をすくめた。


「俺は触ってない」


「……うん。そう見えた」


 少女は否定しない。無理に結論を出そうともしない。ただ、そのまま受け取っている。


 それが少し珍しかった。


「でも」


 彼女が続ける。


「何かあったよね」


 断定に近い言い方。


 俺は答えない代わりに、軽く笑った。


「どうだろうな」


 誤魔化しじゃない。本当に分からない。どう説明すればいいか。そもそも説明できるのか。


 少女は一瞬考えてから、短く頷いた。


「私、リュシア」


「レインだ」


「無属性って、珍しいよね」


「ああ」


「でも」


 少し間を置いてから、彼女はまっすぐ俺を見た。


「さっきのは、普通じゃない」


 迷いのない言い方。


 俺は窓の外に目をやった。風が木々を揺らしている。


「普通じゃないのは分かる」


 小さく答えた。


「問題は、それが何かだ」


 リュシアはわずかに目を細めた。興味、それに近い何かが混じる。


「……そっか」


 今度の頷きは少しだけ深い。


「じゃあ、またね」


 それだけ言って、引き際よく背を向けた。


 俺はその背中を見送って、また歩き出す。


(……普通じゃない、か)


 そんなのは、分かってる。


 分からないのは、それが何なのか、だ。


 指先に残る感覚は、まだ消えていなかった。


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