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第51話 文化祭…青天の霹靂の連発!

圧巻のコスプレショーを見終えたあと、

俺と白石さんは再び文化祭を回っていた。


「ビジュ強組ってずるいなぁ……」


「そうね。なんでも着こなしてしまうしね……」


まるで――魔術でも見せられたみたいだった

俺たちは、

いろんなクラスの出し物を回った。


美術館風に飾られた教室

クイズ体験のブース

ゲームコーナー


た、楽しい……!

文化祭ってこんなに楽しいものだったのか。


「ん〜、たこせん美味し!」


白石さんが幸せそうに頬張る。


「あは……あはは……白石さん、お腹大丈夫かな?」


「全然!いっぱい動いたし、裕香さんと回れて楽しいからかな!」


にっこり笑う白石さん。

……昼ご飯、もう食べたはずだよね?

なんというか――

こんな白石さん、初めて見た。

いつもより少しテンションが高くて、

ちょっと無邪気で。


これはこれで…いい!

少し浮かれてる白石さん、すごくいい!!


そんなことを思っていると――


「あ!麗華さん!」


「へ?奏くん??」


振り向くと、そこには久我さんが立っていた。


「お疲れ様、裕香さんも」


「お、おおお疲れ様です!」


おおお!……阿宮……じゃなかった久我さんだ!

もう衣装は脱いでるのに、なんとなく阿宮に見える??

余韻ってすごい。


「お疲れ様、奏くん。とっってもよかったよ!似合ってるし、あとで写真送るね!」


「ありがとう!この後空いてるかな?」


「え? あ、えーっと……ごめんなさい……今裕香さんと……」


「へ?」


俺…もしかして気を遣われる――?


いや…だめだ!!


白石さんと久我さん

恋人同士の時間を、俺が邪魔するわけにはいかない。


胸の奥が、ちょっとだけ痛んだが、でも…それでも


「あ、わ、私!友達から用事あるからちょっと抜けます!」


「え、裕香さん気を遣わなくていいのよ?」


「うん、僕たち三人で――」


「ご、ごめんなさい!!調理のことでヘルプがあって……!!」


言い終わる前に、俺はその場を離れていた。

サササッと廊下を抜ける。


これでいい…

これでいいんだ…!


二人の時間を邪魔しない

それが一番いい


「……なんか、気を遣わせてしまって申し訳ないな……」


「ちょっと追いかけましょ」


校庭のベンチに腰を下ろす。


「はぁ……はぁ……調理って……いや、なんてわかりやすい嘘ついてしまったんだ俺……」


これじゃむしろ―

二人きりになってくださいって言ったようなもんじゃないか。


「あ〜……何してんだかなぁ……」


かつては憧れていた人

ワンチャンいけるかも…なんて思ってた人。


それが今では

恋路を応援してる。


「……とほほ」


苦笑が漏れる。

でも――

嫌な気持ちじゃなかった。


少し寂しくて、

少し切なくて、

でもどこか優しい気持ちが滲み出る。


裕香が校庭のベンチに腰掛け、ぼんやりと休憩していたその頃

周囲では、密かにいくつもの視線が集まっていた。


(前川さん……今、一人か……?)


(これ……チャンスじゃね?)


(付けてた甲斐があった。文化祭、一緒に回ろうって言えば)


数人の男子が、それぞれタイミングを計るように動き出そうとする。


その――瞬間だった。


「やっほー、お疲れ、ゆかっち」


「ん……? あ、神崎さん……!」


現れたのは神崎天音だった

男子たちの足が止まる。


「今、一人?」


「あ……う、うん。白石さんと回ってたんだけど、久我さんと合流して……その……」


しどろもどろに説明する俺に、神崎さんは少しだけ笑った。


「はは、不器用じゃん」


「そんじゃ、ちょっと私と回ろうよ。私もステージ終わって暇だし」


「あ、うん! 私で良ければ……」


こうして俺は、神崎さんと回ることになった。


周囲では、静かな絶望が広がっていた。


(((ち……畜生〜!!!)))


体育館。


俺たちはバスケゲームの出し物に参加していた

制限時間内にシュートを決め、合計得点を競うゲームらしい

今回は二人の合計点で勝負する形式だ


「それでは、二人の合計点数ということで」


係の人がホワイトボードを指さす

上位にはなかなかの高得点が並んでいた。


神崎さんは軽くボールを回し、感触を確かめる。


「ふっ……」


パサァッ!

綺麗な弧を描いたボールが、リングを通る。


うおぉ……

久しぶりに見たな、このシュート

さすがバスケ部キャプテンだ。


「次、ゆかっちね」


「あ、はい! あわわわ……それっ!」


ダムッ!


一度リングに当たる

ゴロゴロ……と転がり――


パサァッ!


おおお!! な、なんとか入ったぞ!? 俺のシュートが!?


「や、やったー!! 一発だ!!」


「お、いいじゃん」


俺、バスケ……やれてる?

そんなことを考えていると、


神崎さんがすっと近づいてきた

そして、誰にも聞こえないような声で囁いた。


「翔くんと…どうなの? 最近」


うぉぉ!?急になんだ!?一体!


「さ、最近……!? え、えと……修学旅行満喫して……それから……特に……」


「へぇ、満喫……楽しかった?」


「あ、うん。着物きて……水族館に行ったり……とか?」


「……ふふ、完全にデートじゃん」


「!?! い、いや! そんなじゃなくて!!」


慌てて否定すると、神崎さんは肩をすくめた。


「でもまぁ順調なんだね。良かった」

(そんなんじゃなかったら、そんなつらつら詳細とか言わないんだけどなぁ……だいぶ素直になってきてるね、ゆかっち)


この手の質問は、たぶん聞かれるだろうとは思っていた。


でも、神崎さんには正直に答えたほうがいい気がした。

……いや、そもそも嘘がつけないだけかもしれないけど。


引き続き、バスケゲームを2人で楽しむ


神崎さんと普通に遊ぶのも、なんだか久しぶりだった。


その様子を、少し離れたところから見ている二人がいた。


「見つけた……って、私たちが追いかけるほどでもなかったかもね」


「うん。今は普通に仲良さそうだし……僕たちは二人で回ろっか」


「うん! 奏くん!」


裕香が慌てて逃げていったのを心配して追いかけてきた二人だったが、

どうやら杞憂だったらしい。

白石と久我は、そのまま並んで歩き出した。


ーーーー


場面は変わり

三年二組の出し物、喫茶店の前。

翔と飯田は、コスプレから着替えて制服姿に戻っていた。


「ここが二組のカフェか……へぇ、いいじゃん」


「翔、俺もう腹減ったぜ。カツ丼とかねぇのか?」


「ねぇだろ……洋食屋と勘違いしてねぇか?」


「なにが違うんだ?」


「……まぁいい、行くぞ」


ガラッ


「いらっしゃいま――へ!? 神宮寺くん!!?」


「うそ!! 神宮寺くんがここに!!?」


「キャー!! 神宮寺くん!!」


一瞬で店内が騒然となった。

ウェイトレス、給仕係、さらには客として来ていた生徒までが一斉にざわめく。


「コスプレかっこよかったよ!」


「わ、私! 接客行きたい!!」


「いや! 私が!」


「すげぇな、翔。相変わらず総取りじゃねぇか」


「……やっぱりな。まぁ、コスプレの完成度が良かったんだろう」


すると奥から声が飛んできた。


「やっほー、兄ぃ! 来たんだ!」


「おおー! 剛と翔くん! いらっしゃませ!」


迎えたのは真桜と桐谷だった

真桜は翔にコソッと呟いた。


「……今、いないよ? なんで今来たの?」


「あ〜、偵察だ、あと事前調査。真桜、適当にコーヒーついでくれ」


「……??? ふーん、了解」


「光、カツ丼ないか?」


「ない! パスタならある!」


翔と飯田は、パーテーションで区切られた簡易個室へ案内された。


「結構いい出来じゃねぇか、翔……翔?」


翔は腕を組み、静かに考え込んでいた。


(案の定、普通に来たら騒ぎ出したな。

さて……ここまでは想定通り、後は裕香のシフトを確認してだな…)


ーーーー


場面は戻り、時刻は15時前

そろそろ、俺のシフトの時間だ。


神崎さんとは一旦解散

あとからクラスの出し物に来てくれるらしい。


「お疲れ様です……!」


家庭科室の入り口で頭を下げると、すぐに声が返ってきた。


「あ、前川さん!お疲れ様!」


クラスメイトが自然に挨拶してくれる。

それだけで、少しだけ緊張がほぐれた。


「裕香さん、最後の2時間頑張りましょうか!」


白石さんもウェイトレス姿で合流する。

うひゃ〜…こんな清楚系のウェイトレス…

眼福すぎる…


「はい!」


話を聞くと、午前中は大盛況だったらしい。

特に序盤の接客担当だった真桜さんと桐谷さんの活躍が凄まじかったとか。

売り上げは予想以上に伸びているらしい。


特に真桜さんの指名がもう半端なかったとか


「よ……よし……最後も頑張るぞ!」


小さく気合いを入れて、俺はキッチンへ向かったが…

チクリと心に一つ引っかかりが…


(翔……出来れば来てくれないかな。

俺の作った物を目の前で食べて、美味しいって言ってほしい)


――なんて

そんなことを考えてしまう自分に、少し苦笑する

いざ調理に入ろうとした、その時だった。


シフトを終えた女子たちの会話が耳に入る。


「神宮寺くん……かっこよかったなぁ……」


「わかるー!同い年とは思えないよね!」


………え?翔……来てたの?すでに?


胸がざわついた。

気になりすぎて、思わず聞いてしまう。


「しょ……いや、神宮寺さんって……もしかして、この出し物来てたの……?」


「あ、うん!来てくれたよ!」


女子があっさり答えた。


「前川さんの案のパスタ、美味しいって言ってくれたよ!」


「……そう……なんだ……」


胸の奥が、すっと冷える


恥ずかしかった。

浮かれていた自分が

修学旅行で、少し距離が近づいた気がして――

良い感じなんじゃないか、なんて思っていた自分が……


翔は……きっと友達として来てくれただけだ。


それ以上を求めちゃいけない。

わかってるのに。


それでも――

俺がいる時に来てくれたらなぁ……

そんなわがままを思ってしまう。


「前川さん……前川さん……?」


「え!? あ、うん!大丈夫!ボーッとしてた!」


「そ、そうなんだ。無理しないでね!」

(きっと前川さんも神宮寺くん見たかったんだろうな……そりゃ全女子の憧れだもん……可哀想……!)


「気持ち……切り替え……なきゃ……!」


そうだ、これは俺一人の文化祭じゃない

クラスみんなで作り上げた出し物だ。


個人的な願望を持ち込んじゃいけない。


今は――

売り上げに集中するんだ!


エプロンの紐を結び直し、深呼吸する。


白石さんたちの接客の声が聞こえる。


昼食後のデザートタイム。

思った以上に客足は途切れない。


「ショートケーキ二つ!」


「パフェ一つお願い!」


「はい!」


スポンジを切り分け、クリームを絞り、フルーツを並べる。


手は自然に動いた

大丈夫……俺は……やれる。


忙しさの中で、余計なことを考える余裕は消えていった。


そして気づけば――

文化祭、最後の二時間が静かに動き始めていた。

俺は、とにかく調理に集中した。

余計なことを考えないように。

変な期待を抱かないように――。


16時、文化祭終了まで、あと一時間。


客足は途切れない。

忙しさに身を任せていれば、余計なことを考えずに済む。


「やほー!手伝いに来たよー!暇だし!」


「なはは!助っ人だ!」


おおお!真桜さんと桐谷さん!


この二人が加わった瞬間、接客チームは完全布陣になった!!

完璧の真桜さん!明るい桐谷さん!清楚の白石さん!

まさに究極のメンバー!


美女軍団を見ようと、お客が次々に引き寄せられる

売り上げも、もうとんでもない勢いだった。


それなのに、心は複数な感情が増す


(……翔……もう来ないのかな……)


そんな考えが、どうしても頭をよぎる。


あと30分

胸の奥に、不安と失望が静かに広がっていた。


そんな時だった。


ガラッ。


「…………」

「…………」


「いらっしゃ……うわ!なんか凄い二人?が来たぞ!?」


桐谷さんが驚く。

俺も思わずキッチンから顔を出した。


あれって…?


「~~~~!!!!うぉわあああ!!!!!!」

 


KAMEN4――ウツシミの《ナギ》!!

それだけじゃない!!


《ハナ》までいる!!


「す……すご……!」

白石さんも息を呑んでいた。


無理もない!

ナギ――鳴神のウツシミ。


無骨な学ランに、重厚な鉄仮面。

電撃で敵を打ち砕く近接型のウツシミ。


そしてハナ――空城のウツシミ。

花弁のように広がる装束。

和風とチア衣装が融合したような鮮やかなデザイン。

炎と魔法で戦場を舞う後衛型。


完璧だった!

本物みたいだ!

いや――もう本人だぁ!


「取り敢えず案内したぞ!なんかコーヒー二つとショートケーキとチョコケーキだ!」


「は……はい!」


桐谷さんがオーダーを伝える。

さっきまで胸にあった不安が、一瞬で吹き飛んだ。


ソワソワ…ソワソワ…!


落ち着かない…行きたい……!!

目の前で見たい。


でも、俺は調理班だ。


「……ふーん……なるほど、やるねぇ!」


真桜さんが、なにかを察したように呟く。


「ねぇゆかっち!これ!」


「へ……?」


差し出されたのは――

ウェイトレスの衣装だった。


「もう終わりに近いしさ、よかったらゆかっち、あの二人接客してみない?」


「へ……ええ!?? わ、私が!? せせ接客だなんて!!」


「なはは!何事も経験だぞ!ゆかっち!やればできる!」


「……ふふ、そういうことね。裕香さん、好きなKAMEN4のウツシミよ。行ってらっしゃい」


「ええぇ……!?」


桐谷さんはともかく――

白石さんまで!?


「前川さんの好きなキャラ?」


「そりゃ行くべき!」


調理班のみんなまで後押ししてくる。


……いや

ありがたい

ありがたいけど!!!

俺、調理班なんだけど!?


で…でも…これの逃すと一生後悔する!!


急いで着替える

白いブラウス

黒いスカート

フリル付きのエプロン 


うぅ…メイド服よりかましか?

またこんな服着るなんて…


「だ……大丈夫かな……似合うかな……?」


「おおー!ゆかっちいいぞ!指名したいぞ!」


「わぁ!可愛い!ゆかっちの予備用意してて良かった!」


「似合ってるよ、裕香さん……!」


恥ずかしい、でも――


(ここまで来たら……行くしかない……!)


俺は、謎のコスプレ二人のテーブルへ向かった。


「お……お待たせ……しました……!」


声が震える。


「コーヒー二つと……ショートケーキ……チョコケーキですぅ!」


慌ただしく皿を並べる。


と、とにかく…落ち着け俺!


震える手で、コーヒーを置く。

ケーキの皿を並べる。


カチャ…カチャ…


「お……お待たせしました……」


ナギは静かにこちらを見ると――

コクリ。

小さく頷いた。


ほわぁぁ!!

その仕草だけでお腹いっぱい!

興奮が収まらない。

コスプレショーに出てた人……かな……?

最後まで衣装を着てるなんて、本気の人だ。


すごい

本当にすごい


俺はもう、我慢できなかった

失礼なのは分かってる

分かってるけど――


「あ……あの……!!」


「よかったら……写真撮ってもいいですか!?

KAMEN4……大好きなんです!お二人のコスプレ……すごく素敵で!!」


我ながら必死すぎた。

でも止められなかった。

ナギとハナは一瞬顔を見合わせ

そして。


……コクリ


「わ、わあぁぁ!!凄い!!凄い!!うひゃぁ!!」


嬉しさが爆発した!


俺は夢中でシャッターを切る。


パシャッ!

パシャッ!

パシャッ!


カメラを向けるたび、二人はポーズを変えてくれる

ナギは刀を構え、鋭い立ち姿

ハナは軽やかに身体をひねり、羽のような袖を広げる。


なんてサービス精神なんだこの人たち!

最高だ!!


「す……すごい……!」


すると

ナギが手を差し出した

カメラを貸せ、というジェスチャー。


「え?あ、はい!」


スマホを渡す

すると今度は――

こいこい、と手招き。


「ま……まさか……!」


インカメで一緒に撮ってくれるの!?

まじか!!

俺は慌てて二人の間に滑り込む。


「お…お願いします!」


ダブルピース

満面の笑顔


パシャッ!


「わああ……!」


夢みたいな一枚が撮れた


「あ……ありがとうございました……!ど、どうぞごゆっくり……!」


頭を下げて離れる


至福の時間、文化祭最後に、こんな思い出ができるなんて…!


心残りは少々あるが…

翔……来てくれなかったけど…神崎さんも……忙しいんだろうな……

少しだけ寂しさがよぎる。


でも―

それでも十分楽しかった。


そう思って席を離れようとした、その時だった。


「ふ……ふふ……!ははは!」


「くすくす……」


「……へ?」


背後から聞こえた笑い声

振り向く。


ナギが手を顔に伸ばし――


カチャ…


仮面を外した

そして現れたのは


「へ……?……へ??」


「し、翔……??」


翔は満足そうに笑った。


「案外バレないもんだな」


ななななんで!?


頭が真っ白になる。


すると隣で――

ハナも仮面を外した。


「ふふふ、翔くんだけじゃないよ」


「あわわ……か、神崎さん……も?」


さっきまでの興奮が、別の熱に変わっていく。

つまり?

つまり俺はさっき…


翔たちに向かって


めちゃくちゃハイテンションになって…

満面の笑みでツーショット撮って…

ダブルピースして…??


「~~~~~~~~っ!!??」


さっきまで完璧すぎるナギとハナだった二人が、いつも通りの翔と神崎さんだったということか!?


「すまんな、裕香。こうでもしなきゃ静かにはいられなくてな」


「凄い楽しそうだったわね、ゆかっち」


「あ……あは……は……」


は、恥ずかしすぎる!!

穴に入りたい!!うわぁぁ!!


そんな俺の葛藤など気にもせず、二人はカップに手を伸ばす。


「それじゃ、頂きます」


静かにケーキを口へ運ぶ翔。

神崎さんもコーヒーをひと口飲む。


それはそうとして…

ど、どうだ……?

味……どうなんだ……?


「うん……美味いぞ、裕香」


「美味しい……!コーヒーに合うわ」


「!!ほんと!?」


「本当だ。これ全部お前が発案したのか?」


「あ、うん……色々試して……なんとか形になって……」


「昔から料理得意だもんな。クラスにも貢献してるんだろ」


神崎さんも微笑む。


「うん、凄く美味しい…最後にいい出し物になって良かったね、ゆかっち」


二人の穏やかな表情

それを見て、胸の奥がじんわり温かくなる。


目の前で、

翔と神崎さんに、美味しいって言ってもらえた。


「良かった……!へへ……ありがとう……翔、神崎さん……!」


「「!!!?」」


「あ、ああ!コーヒー冷めちまう!ケーキ食べるぞ神崎!」


「そ、そうね!またね!ゆかっち!」


「??あ、うん、ごゆっくり」


少し慌ただしく会話を終え、俺は席を離れた。

忙しい時間帯だし、これ以上話し込むわけにもいかない。


でも――

胸の奥の熱だけは消えなかった。


ドクッ……

ドクッ……


(あれ……?)


緊張は解けたはずなのに

興奮も収まったはずなのに

心臓だけが、まだ速い。


(やばい……ちょ……収まれ……!)


なんとか、裏スペースへ


「ふぅ……つ、疲れた……」


「ゆかっちお疲れ!どうだった??」


「えと……良かったかな?」


「ふふふ〜、その割にはニヤけてるぞ?」


「ほぇ!?いや……そ、そんな!」


ニヤけてたのか?俺…隠せないのか?


だ…だって…!


翔の笑顔が

頭から離れないから…


「来てくれて……嬉しくて……」


「お!ゆかっち!本音出たな!」


真桜さんがにやりと笑う

相変わらず、この人には全部見透かされている気がする。


でも、もう隠さなくてもいいのかもしれない…

もう少し素直になったほうが楽だし…


「ふふ、兄ぃやるじゃん…!」


「え?」


「なんでもないよ!さ、ゆかっち!ケーキお願い!」


「あ、うん!」


そんなこんな俺たちは、そのまま最後まで出し物をやり切った。文化祭終了まで、全力で。


カフェを後にする二人。

神崎は肩を回しながら息をついた。


「ふぅ……翔くんに急遽渡された謎のキャラのコスプレ……疲れた……」

(あ〜…危なかった…あの良かったって笑顔…もう、あのまま連れ去ろうと思ったくらい…ふぅ)


「ここばかりは金に糸目つけたからな。ありがとう、協力してくれて」

(やって、やったぞ…裕香のケーキを食べ…裕香に給仕をしてもらう!!ウェイトレスの裕香…おおおお!!永久に雇いたいくらい良い!)


「それで?どうなの?順調?」


「多分だが……いい線いってる。やっと俺に向いてくれてる気がする」


「良かったじゃん。努力した甲斐があったね」


「ああ、それはそうとして…あの時の裕香……」


「……ええ」


二人は顔を見合わせる

そして同時に言った。


「めちゃくちゃ可愛かった!!」


「あの顔見れてだけでも、俺はもうここまでかけた甲斐があった…!」


「あの子…どんどん魅力増してきてる…もう、妹にしたい…!」


文化祭この日。

きっと沢山の人の心に、

消えない思い出が刻まれたのだった…かな?



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