栗の花の匂いがする頃(5)
私達はそれから家を引っ越すことを決め、私の実家にも挨拶に行った。
父も母も喜んでくれ、妹は私達が帰宅後LINEで、
“イケメン義兄GET。お姉ちゃんおめでとう!”
と派手なスタンプ付きで祝福された。
帰宅前には祖母のお墓にお参りをした。
長らく来ていなかったことを謝り、結婚すると報告をした。
生きていたら本当に喜んでくれたと思う。
「エイタは叔父さんや叔母さんが見栄を張って家の墓の隣に別の墓をたててるよ。」
と、妹が微妙な顔をして教えてくれた。
お参りする義理はない。
私はおそらく一生許すことは出来ない。
「ユウ、帰ろう。」
私は彼に伝えた。
真新しい隣の墓石がやたら目立っていた。
新しい家は彼の実家の近くに決めた。
今のところよりは通勤に15分くらい長くかかるが、それでも私は彼の家族を大事にしたかった。
「リナ、おめでとう。長谷川くん、良かった。」
アラタさんは本当に喜んでくれた。
あらかじめ結婚すると連絡はしていたが、改めてお祝いをかねて白井さんと私達の4人で食事に行った。
「会社にはまだ伝えてはないですが、近々上司の方には伝えます。アラタさんと白井さんには直接伝えたかったので。」
私は2人に伝えると、
「特にアラタでしょ。私も嬉しいけど、アラタは初めて高梨さんの結婚の話を聞いた時、本当に喜んで大変だったんだよ。」
白井さんはアラタさんの顔を覗きながら、私に話しかける。
「長く2人を見てるから、本当に嬉しくて良かったって思ったよ。リナ、幸せな顔して…本当に良かった。」
私をいつも心配してくれたアラタさん。
私にとってやはり大事な人。
友達とも恋人とも違う。
信頼している兄のような存在。
それも少しだけ違うような気もする。
実際、アラタさんがいなければユウの隣に居れなかったと本当に思う。
「鈴木さん、まだまだ頼りがなくてリナを悩ませる時もあるかもしれません。それでも彼女が出来るだけ笑っていられるようにこれからもがんばります。今まで通り見守って下さい。」
ユウはアラタさんをしっかり見てそう言った。
「長谷川くん、ぼちぼち見守るよ。」
アラタさんは本当によく笑っていた。
私の大事な人達を彼も大事にしてくれている。
短期間でバタバタとして、年明けには引っ越しをする。
ほんの数ヶ月前までは考えられないスピードでいろんな事が決まり、なかなかゆっくりは出来なかったけど、忙しい事が楽しかった。
引っ越しの準備を部屋でしながら、この部屋に数日しかいれないことに淋しさを感じた。
この部屋で少しずつ彼の荷物が増えて、いろんな話をして、嬉しいばかりではなかったけれどそれも含めて、この部屋にあったと思った。




