明鏡止水(4)
ヒナコは学会が終わったと連絡をくれた。
もうすぐ私も終わりそうと返信をした。
秋になってもまだ昼間は暑い。
少しだけ夕方は過ごしやすくなった。
会社を出ると既にヒナコとユウが待っていた。
「リナ、久しぶり。元気だった?」
変わらず私にハグをする。
「ぼちぼちかな?ヒナコは?」
私はヒナコに笑いかける。
「めちゃくちゃ元気。仕事も子育ても大変だけど、やっぱり楽しいよ。子供もかわいいし。」
ヒナコを見ているだけで少し元気を貰えた。
ヒナコは以前にも来たことのある韓国料理屋に行きたいと予約をしていた。
「佐藤さんは元気?」
私はヒナコに聞くと、
「私も佐藤だし。元気だよ。リョウもリナがずっと佐藤さんって言うの気にしてた。アラタさんとかは名前呼びだし、距離を感じるんだって。会うことがあったら、名前で呼んであげて。」
変わらず元気そうだった。
「地元に戻ることがあったりしたら呼ぶね。高校の同級生とかも結婚するって聞くから帰るかもだし、それにアユムくんにも会いたいし。」
私はヒナコにそう言うと、
「もう、2歳だからね。結構、話しているけど宇宙語なんだよね。分かるときもあるけど、理解できないときも多くてよく怒られたりする。写真見る?」
ヒナコはスマホで子供の写真を見せてくれた。
「ヒナコそっくり。イケメンだね。ユウも見て。」
私は彼にヒナコのスマホを見るように促した。
「なんか、懐かしいですね。相変わらずイチャイチャしてますね。」
彼は私達を見て笑った。
「ユウも変わらないなぁ…いや、少し大人になったし、昔より柔らかくなったかな?昔は表面的にふんわりだったけど、なんか良いね。」
うん、うん、と頷きながらヒナコはお肉を頬張る。
「リナは少し疲れてる?しんどかったらいつでも連絡してよ。話ぐらいしか聞けないかもだけどね。」
ヒナコは私の顔を見て少し真剣に伝えた。
「ありがとう。ヒナコに会えて少し元気になった。」
私は彼女に微笑んだ。
「…まぁ、近くにユウがいるから大丈夫かな?」
ユウを見て意味ありげに彼女は笑った。
「ちゃんといますよ。」
彼は私を見た。
「私が言うことじゃないけど、まだ付き合ってないの?」
ヒナコが真剣な顔で彼に聞いた。
彼は“残念ながら…。”と笑っていた。
久しぶりにお腹が一杯になるくらい食べた。
ヒナコは久しぶりのアルコールに少し赤い顔をしていた。
今日はホテルに泊まって明日帰ると言っていた。
「リナ、大切な事はちゃんと言わないとだね。」
と、別れ際にヒナコは言った。
なかなか、考えすぎて動けないけれど、彼を大切に思っていることははっきりしている。
今はまわりが目まぐるしくて、自分を保つので精一杯になっている。
ユウは当たり前のように手を握った。




