曖昧な関係と安寧(6)
出社後、店長に昨日の件を謝り、お客様の引き継ぎをした。
理由がどうであれ、お客様に迷惑をかけてしまったことを深く反省した。
その日も何度か電話がかかっていたようだった。
「高梨さん、お疲れ様。大丈夫?」
白井さんに声をかけられた。
「白井マネージャー、ご迷惑をおかけしてすみません。」
私は深々と頭を下げた。
「迷惑はまだかけられてはないですが、堀田店長から報告があったので一応、様子を伺いに来ました。何度か迷惑な電話はかかって来ているようですし、高梨さん自身も心配でしたから…。」
白井さんはエリアマネージャーとして当たり前の事だと笑いながら私を見つめた。
「3月末まではお客様の引き継ぎもありますし、通常通りがんばります。お気遣いありがとうございます。」
と、再び頭を下げる。
「とはいえ、会社やお客様のこともありますので何らかの対策は考えますね。」
白井さんは私を見ながら穏やかに伝えた。
仕事中も不安ではあったが、お客様に集中した。
LINEでユウくんから“今日、帰り送ります。”と、連絡があった。
接客が終了し、カルテの入力や明日の準備、締めの作業を行い、帰宅準備をする。
「お疲れ様でした。」
と、店長やスタッフに声をかけた。
外に出ると、向かい側のコンビニの前にユウくんが立っていた。
私に気がつき、私のところに走って来てくれようとしていた。
その時、私の肩を後ろから捕まれた。
振り返るとエイタがいた。
「久しぶり、なかなか連絡が取れないから会いに来てやったよ。」
ニヤニヤ笑うエイタが立っていた。
咄嗟に声が出なかった。
触られてる肩が重く動かない。
「離してください!」
ユウくんは腕を引き、私の身体を包んだ。
「なん?彼氏とか?まぁ、いいや。リナ、金少しで良いんだよ。言うこと聞くよな!」
と、エイタは私の手首を掴む。
怒鳴り声と同時に手首に痛みが走った。
徐々に手首にエイタの爪が強く食い込む。
「こいつ、俺の言うことは何でも聞くから。なんでもするし、なぁ!あんときも逆らわなかったよな。」
エイタの声で支配される。
「これ以上、彼女を傷つけるようなら…。」
ユウくんが声を絞り出している。
その声に被せるように、
「どうなるんだよ。リナを傷つけたら。こいつはなぁ、もともといやらしい、汚い女なんだよ。何をされても大丈夫なんだよなぁ、おいっ!早く金を渡せよ!」
エイタは私の髪を引っ張った。
ユウくんは必死にエイタから私を引きはなそうとしている。
数人通行人がいるが遠巻きに見ているだけだった。
「そこ、何をしている!女性を離しなさい!」
警官が2人駆け寄ってくる。
堀田店長やスタッフが退社した際に気がついて、警察に連絡をしてくれていた。
エイタは警官に連れていかれ、私も事情を聞きたいと言うことだったが、うまく喋れず、手首に傷もある事からひとまず病院へ行くことを勧められた。




