表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/81

曖昧な関係と安寧(5)

「リナさん、話せますか?」

彼は私を大事そうに抱きしめている。

柔らかな布団が私達を包み、安心する反面、少しの後悔があった。


「…ごめんなさい。」

私は呟いた。


その言葉で彼は少し私の身体を強く抱きしめ直す。


「謝らないで下さい。リナさん、イヤなら話さなくても良いんです。」

彼は私の頭に顔を埋め、必死に言葉を探している。


「…私は小さい頃、従兄から性的虐待をされてた。今まで誰にも言えなかった。知られたらどんな風に見られるのか不安だったし、家族に心配かけたくなかった…。惨めで、ツラくて、自分が汚いもののように思えた。」

少しずつゆっくり話した。

話していくうちに涙が止まらなくなり、それに気がついた彼は私の顔を覗き、


「リナさん、もう喋らなくて大丈夫ですよ。イヤでしたよね。僕も怖かったんじゃないですか?」

切なく泣きそうな顔をしていた。


「触られてる時に時々、思い出してしまう…。けど、ユウくんは違うでしょ。私をちゃんと見てくれてたから。」

私はユウくんの顔を見て笑った。


「ツラい時に笑わなくて良いんです。頑張らなくて良いんです。イヤならちゃんと言って下さい。」

彼は優しく私の背中をゆっくりさする。


言葉が痛かった。


「ユウくんはイヤじゃない。来てくれて安心したから。本当にイヤじゃないよ。」

私は不安でつぶれてしまいそうな気持ちをふりきるように伝えた。


「…今日、会社に電話があって…久しぶりに声を聞いたらずっとしんどくて…。私は、私がイヤになる。忘れたいのに、忘れることが出来ない…。」

言葉がうまく出ない。

喉の奥に何かを詰められたように、苦しい。


彼はそれ以上何も言えず、ただ抱きしめている。

規則正しい心臓の音がユウくんから聞こえる。

私は彼に話したことが正解だったのかはわからない。

記憶の共有をさせてしまった。


朝、目が覚めるとユウくんは起きていて、私をいとおしそうに見ていた。

その目には少しだけ淋しさがある。


「…そばにいても良いですか?リナさんがツラいことを思い出さないように、イヤなこともしません。ただ、そばにいたいんです。」

彼の瞳が揺れていた。

不安な気持ちが伝わった。


「…ユウくん、私は本当にずるいんだよ。それでもそばにいてくれる?」

彼の気持ちをわかっていて、寄りかかろうとしている。


「僕を頼ればいい。僕もずるいから。リナさんが今、突き放せないのをわかって聞いてるんだから。」

泣きそうな消え入りそうな顔をして、私を見つめている。


共依存なんだと思う。

お互いが不安定で欠けたパーツを埋めようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ