不器用な共鳴(3)
連日忙しかったが、その日は私もヒナコも夕方上がりで佐藤さんと久しぶりに一緒にご飯を食べようと約束していた。
「アラタさんも呼ぶ?」
と、佐藤さんが言ったら、すぐさまヒナコが
「リョウのそういうとこ、ダメだわ…。」
と、佐藤さんの腕を小突きながら苦笑していた。
私は“呼んでも大丈夫だよ。”と伝えた。
佐藤さんが鈴木さんに連絡したら、“少し遅れるけど行くよ”と返事があったようだ。
ヒナコは小さく“ごめん。”と私をみて頭を下げていた。
チェーン店の焼き肉屋にひとまず3人で入り、飲み物が来た頃に鈴木さんが合流した。
「お疲れ様。リョウくんは元気だった?」
鈴木さんは申し訳なさそうに、私の前の席に座った。
「部活、レポート、課題の毎日で、時々バイトです。」
佐藤さんはそう言いながら、お肉を片っ端から焼こうとして、ヒナコに怒られている。
「国試も心配で少しずつ頑張っているんですが、今のところいっぱい、いっぱいで…」
と、佐藤さんは運ばれて来たキムチなどを口いっぱいに頬張り、幸せそうに笑いながらしゃべっていた。
食べながら喋ることをヒナコに叱られている。
2人の仲の良いやり取りに安心する。
「リナちゃんは、大丈夫?」
鈴木さんに不意に話を振られた。
隣で楽しくやり取りしていたヒナコが、少し私を心配そうな顔で見ている。
「…大丈夫な時とそうじゃない時がありますが、頑張ってます。」
と、彼の目をみて答えた。
鈴木さんは“良かった…。”と、目を細めて笑った。
私は横からヒナコに肘でつつかれた。
ヒナコの笑顔に私もつられて笑った。
楽しく時間が過ぎ、帰るのが少しだけ淋しくなった。
佐藤さんは楽しくなりすぎたのか、かなり酔っぱらってヒナコにまた怒られていた。
「今日リョウの家に行くから、リナの事頼めますか?」
と、鈴木さんにヒナコが尋ねた。
鈴木さんは一瞬私を見て、“了解。”と答えた。
ヒナコ達と別れ、鈴木さんとゆっくり歩いて帰った。
昼間の暑さとは違って過ごしやすい風が吹いている。
少し沈黙があったがポツリ、ポツリと鈴木さんが伝えてくれた。
「リナちゃんと別れて結構辛かったけど、同じくらいズルいけど安心したんだよ。…泣いているのを見ているのもそうなんだけど、リナちゃんのために何にも出来なかったから。最後もリナちゃんに言わせてごめんね。」
と、彼は淋しそうに笑いながら優しく続けた。
「関係は変わってしまったけど、リナちゃんがイヤじゃなければ困った事があれば相談して。」
本当に彼は大事にしてくれていたんだと思った。
過去がなければと何度も思ったけれど、変えられないし、忘れたいけれど忘れることが出来ない。
「あとお願いなんだけど、鈴木さんは淋しいかな…。」
と、彼は照れ臭そうにうつ向いた。
彼を好きになって本当に良かったと思った。




