憂鬱な逃避(3)
あれから鈴木さんは少しだけ私を気遣いながら、距離を保ってくれていた。
結局、私とヒナコ以外でご飯に行ったようだった。
鈴木さんは納品しながらいつも目をみて優しく笑ってくれていた。
私の苦手をわかって、あえてその時だけ、丁寧に笑う。
すぐに他のスタッフと軽く話をして、”またね。“と手を振る。
「いい人なんだろうね。」
と、ヒナコが言った。
私もそう思った。
入学してそろそろ3ヶ月が過ぎる頃。
この街では栗の花の匂いがしない。
そろそろ夏が強く感じられる。
「そろそろ、得意になった?」
と、鈴木さんは笑いながら時々確認する。
ただ彼の気遣いか、いつもヒナコといる時にそう言う。
「苦手ではなくなりました。」
私はうつ向きながら答えた。
ヒナコは少しだけ私を気遣いながら、
「めずらしいね。」
と、笑っている。
彼がいなくなってから、
「少しだけ心配だけど、安心もしてるよ。もちろん、鈴木さんが大人でリナのことを気遣って接してくれているのはわかっていたし、リナ自身もわかってるよね。」
ヒナコはさらに続けて、
「今まではリナが人となかなか馴染むのが大変だったとおもう。何があったのか、もともとだったのかはわからないけど、根気よくみてくれてる人も助けてくれる人もいるよ。もちろん、全てがそうじゃないけれど…。少しは気づいてるんじゃない?私はリナが好きだから全面的に肯定するけど…。たまに意見はする。」
そう優しく伝えてくれた。
ヒナコに本当に出会えて良かったと思う。
あのまま立ち止まらなくて、本当に良かった。
「本当にヒナコありがとう。」
彼女にハグをした。
ヒナコはびっくりしていたけれど、すぐにハグを仕返してくれた。
少しでも前に進みたいと思った。
夏休み前には前期試験があった。
試験期間中はバイトも控えヒナコにもあまり会えなかったが、励まし合いながら集中した。
それが終わると夏休みに入る。
何度か母から帰省はいつするのか連絡があったが、帰ることを悩んでいた。
少し前に祖母が体調が良くないとも聞いていたので、心配で電話をかけた。
「リナちゃん、今をしっかり楽しんだら良いからね。おばあちゃんはまだまだ元気だから。」
と、祖母はいつものように明るい声で言っていた。
一度、帰省しようと思った。
「お盆に帰るね。」
と、母に連絡を入れた。
電話を切ったあと、不安で喉の奥が熱くなり泣きそうになった。
もし、エイタが帰って来ていたらと思うと、呼吸が上手く出来ない。
その日から、夜もあまり寝れないでいた。
けれど、祖母のことは本当に心配だった。




