憂鬱な逃避(2)
結局、ヒナコが私の気持ちを汲んで断ってくれた。
「無理して合わせることないよ。」
と、ヒナコは言った。
いつまでも甘えるわけにいかないとは思う。
「本当にいつもありがとうね。」
私がそうに言うと、“どういたしまして“とヒナコはいつものように笑った。
バイト先からヒナコと2人で帰る。
コンビニに寄ってアイスを買っていたら後ろから声をかけられた。
「リナちゃん、ヒナコちゃん、バイトお疲れ様。」
鈴木さんが買い物かごにビールやお茶を入れて立っていた。
「鈴木さんこそ、疲れ様です。家飲みですか?」
と、気さくに話ながらヒナコは私を気遣ってくれる。
「そうそう、一緒に飲む?…まだ、飲めないんだっけ。何買うの?」
鈴木さんはそう言って私達が持っていたアイスをかごに入れた。
「リナちゃん、もっと高いの買いなさい。」
と、鈴木さんは笑いながらハーゲンダッツを勧めた。
「ガリガリくん一択なんですよ、リナは。」
ヒナコはそのハーゲンダッツを冷凍庫に戻し、“ありがとうございまーす。”とかわいくおどけて見せた。
レジを済ませ鈴木さんは私達にアイスを手渡し、
「都合合わなかった?」
と私達の顔を覗きながら笑う。
少し間があって、
「…みんなでご飯ってやつですか?」
ヒナコは飄々と話す。
「そのやつです。二人が来てくれると嬉しいなぁ…って思って。」
鈴木さんも探るように笑っていた。
「ありがたいのですが、私もリナも先に約束があって、難しいんですよ。」
少し緊張感のある空気が耐えられなかった。
「すみません、私が大勢で集まるのが苦手なんです。」
と、頭を下げた。
「僕も苦手かな?」
鈴木さんは私の顔を覗きながら優しく笑った。
近すぎてびっくりしたものの、“…はい。”と頷いた。
「ごめんね、意地悪だったかな?でも、僕はリナちゃんに僕を得意になって欲しいんだけどね。」
彼はさらに優しく伝える。
ヒナコはやっぱりと言う顔をしていて、
「なかなか、リナは難しいんですよ?」
と、笑っている。
鈴木さんは“ヒナコちゃんにもだけどね。“と言いながら、“またね。”とヒラヒラと手を振りながら歩いて行った。
「リナ、頑張ったね。アイス溶けるから早く帰ろう。」
ヒナコは私の手をつないで走り出した。
少しよろけたものの一緒に走った。
ヒナコは私に甘い。
私の家に私を送って、彼女は自分の家に帰って行った。
そこまで離れていない距離にヒナコは住んでいる。
「お互いしんどくなったり、楽しかったり、会いたくなったらすぐに会える距離にしよう。」
と、住むところを決めるときに彼女は言った。
ヒナコの背中が小さくなって見えなくなるまで、私は彼女を見ている。
本当に私に甘いなとつくづく思ったし、いつまでも甘えるわけにはいかないと、強く思った。




