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第22話 そして執行へ


「も、申し訳ありませんでしたっ! 私が間違っておりました!」

「……は?」


 俺がイガリマを向けると、クラウスは呆気なく降参の意を表明する。

 大理石の床に(ひざまず)き、俺とテティに対して頭を擦りつけていた。


「お願いします! 実はテティの血を採取することは王家の人間に命じられてやったことなのです」

「そんなっ! だからと言って獣人族のみんなを巻き込んでいいわけない!」

「し、仕方のないことだったのです、テティ。断れば私だけでなく、私の家族まで殺すと脅されていて……」

「…………」


 ――ああ、なるほど。


「私の犯した(あやま)ちはどうやっても(ぬぐ)えるものではないかもしれません。ですが、せめて謝罪をさせていただきたいのです!」

「そんな、勝手な……」


 テティがクラウスを見ながら口を結んで歯噛みする。

 俺は平伏しているクラウスを見下ろし、その真意を悟っていた。


 ――なるほど。


 ――なるほど。


 ――やっぱり(・・・・)コイツはクソ野郎だ(・・・・・・・・・)


「勝手だよ……」


 テティが振り上げかけていた拳を降ろす。

 優しい子だと、そう思った。


 しかしテティは知らなければならない。

 この世の中には救いようのない屑もいるということを。


「おい。もう顔を上げていいぞ」

「いえ、そういうわけにはいきません! 私の犯した罪に見合うだけの謝罪をさせていただくまでは――」

「『毒が満ちるまで』の間違いだろう?」

「――っ!」

「……え?」


 その言葉にクラウスが顔を跳ね上げ、テティも俺の方を見やる。

 俺はイガリマを振りかざし、そして命じた。


「《消し去れ、イガリマ》――」

「……っ!」


 すると辺り一帯に突風が巻き起こる。


 ――そして、クラウスがジョブ能力で充満させていた《毒の霧》を打ち払った。


「ど、どういうこと?」

「コイツは救いようのない屑ってことだ。謝るフリしてジョブ能力を使っていたんだよ。自分以外の人間が行動できなくなる毒の霧を発生させる能力を。そうだろ、クソ司教?」

「ぐっ……。な、何故……」


 その答えは簡単だ。

 クラウスの話していたことが真実であれば、元よりあそこまで執行係数が高くなることは有り得ない。だから嘘をついていたと判断した。


「お前のジョブ能力については情報屋から事の経緯を聞いた時におおよその察しがついたよ。毒を操る能力か。なるほど強力な能力だ」

「く、そ……」

「相手に悟られなければな」


 クラウスはすぐに飛び退き、俺との距離を取る。

 そして、懐から何かの液体が入った瓶を取り出した。


「ならば真っ向から戦うのみ……!」


 クラウスがその瓶に入った液体を一息に飲み干すと、周囲からは紫色の濃い霧のようなものが溢れ出す。

 騙し討ちをしようとして真っ向からとは、いい度胸だ。


「く、クク。やはりあの方の調合した薬は素晴らしい! かつてない力がみなぎるのを感じますよ!」

「へえ、魔力を強化する魔法薬ってところか?」

「その通りです。これで私のジョブ、《毒を操る者(ポイズンハンド)》の能力も強くな――」

「ああそう。――《刈り取れ、イガリマ》」

「は?」


 ――ギシュッ。


 イガリマを振るうと、クラウスの辺りに立ち込めていた紫色の霧が消滅する。


「悦に浸っていたところ悪いが、ジョブ能力をいかに強化しようと無駄だ」

「な……、何故。何故ジョブ能力が発動しないのです!?」

「このイガリマは対象の力を奪うことができる魔鎌(まれん)でな。お前のジョブ能力の根源を刈り取らせてもらった」

「…………。は、ハハ……。何ですかそれは。そんな……、原理を根本から覆すような力、認められるはずが……」


 クラウスは狂乱しながら手を掲げていたが、奴のジョブ能力が発動することは無かった。


大司教クラウスへの執行はまだ続きます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「いえ、そういうわけにはいきません! 私の犯した罪に見合うだけの謝罪をさせていただくまでは――」 >「『毒が満ちるまで』の間違いだろう?」 >.... >「コイツは救いようのない屑っ…
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