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番外編:チョロいなりにもきっかけはある①

 時系列的には5話と6話の間。

 僕がセーラたちの仲間になって、というより半ば引きずりこまれて、一か月が経とうとしていた頃。


 僕は、追放されることに向けてせっせと準備をしていた。今思うと、すごく無駄なことをやっていたとしか思えないけど、当時の僕は必死だったのだ。


 といってもやってたことは、とても単純。セーラ達の冒険に必死に付いて行くだけ。そうするとあら不思議、自然と邪魔で無能な荷物持ちが出来上がるのだ。


 このままいけば、いずれはセーラ達も我慢の限界がきて。

 そうだ、追放をしよう! と、なるはずだった。


 てか、実際そうなってもおかしくないぐらいに僕は無能だったし、本当になると思い込んでいた。それが、大きな間違いだと気づくのに、僕は半年以上もかかったのだ。


 当時の僕は、あの手この手でポイントを(ダメな方向に)稼ごうと思っていた。まぁ思っていただけで行動には移せていなかった。なぜなら、セーラたちの冒険に付いて行くのでわりと精一杯だったからだ。


 もう少し色々経験しとかないと、この後の復讐が盛り上がらない。ざまぁ系の物語では、ある程度無能(と思われている)主人公がクズな仲間と交流していたという背景があってこそだと思う。


 なのに、僕は今のところセーラ達との交流が少なかった。

 だからだろう。あの日の僕が、あんな挑戦をすることを決意したのは。






 ※※※※※






 そのやり取りは、最近よく行われるようになっていた。


「なぁ、今日はお前が行ってくれよ」


「えぇー、こないだ私の方が多く行ったじゃん」


「だって、直近で行ったのは俺だろ? 次はヒスイの番だって」


「いやいや、総回数だと絶対私の方が多いから。コガネが行くべきだよ」


 こんな感じのやり取りが、さっきからコガネとヒスイの間で続いている。別に言い争っているわけではないんだけど、2人とも折れる気配はない。


「いっそのこと、みんなで行く?」


「全員が犠牲になる必要はないだろ」


「じゃ、コガネが犠牲になればいいじゃん?」


「いや、それは違うだろ」


 2人が何で揉めているかというと。

 セーラの買い物にどっちが付き合うか、だ。


 新しい街に着くたびに、というかセーラが出かけるたびに、この話し合いは行われていた。

 もちろん、セーラのいないところで。


 バノイアデでのセーラと僕の迷子の話を聞いて、コガネとヒスイは、セーラの方向音痴が思った以上に酷いことに気が付いたらしい。


 そして、セーラを一人で外に出さないというルールが出来た。

 以降、ヒスイかコガネが付き添っていたんだけど、2人ともすぐに嫌になったらしい。毎回、結構な時間揉めている。


 僕は、今のところその大役を免除されていた。なぜなら、僕が無能の役立たずだからだ。貧弱な僕は冒険で疲れ切ってしまうので休日に出歩く余裕なんてなかったのだ。


 だけど、最近はようやく慣れてきて、若干余裕が出てきた。

 なので、僕はそろそろ仕掛けるべきだと判断した。セーラと2人で出かけることで、僕の無能っぷりをアピール。


 追放にはこうした積み重ねが大事なのだ。僕は仲間だと思って行動するけど、セーラには邪魔だと思わせる。ノーリスクハイリターンな行動だと言える。……僕が無能すぎてセーラに怒られるというリスクは多分に含んでいる気がするけど。


 とにかく、こうした行動の積み重ねによって理不尽に追放され、理想の『ざまぁ展開』にたどり着くことが出来るのだ。たぶん。


 だから、僕は未だにもめている2人に切り出した。


「じゃあ、僕が行こうか?」


 言った瞬間、2人の反応は劇的だった。


「マジで⁉」


「ほんとに⁉」


 2人は満面の笑みで振り返る。


「いやでも、大丈夫なのか?」


「そうだよ、サネくん。セーラを一人で操縦するのは大変だよ⁉」


 一応、心配もしてくれたけど。2人の中では僕が行くことは即座に確定したらしく、僕が行く前提でアドバイスをいっぱいしてくれた。


 話というか愚痴はよく聞いていたので、相当大変だってのは分かってるつもりだったけど。 

 そんなに喜ばれると、身構えてしまう。早まったかな?




 いざ出発の段になると。


「じゃ、サネくん、任せたよ!」


「俺たちの分までがんばってくれ、サネ!」


 満面の笑みでヒスイとコガネが僕を送り出してくれた。

 ただ、セーラの買い物に付き合うだけなのに、すごい送迎だ。


「今日は、サネヤがついてくるの? 別に子供じゃないんだから、迷ったりしないわよ」


 それに対して、セーラは少し不満そう。


 毎回お守りのように誰かが付いてくるのが気に入らないのだろう。セーラは基本的に自分が迷子になっている自覚がないし。僕が役立たずの無能だってのも関係しているに違いない。


「サネくんがいたら荷物持たなくて良いんだよ」


「そうだぞ。今日は思う存分買い物してこい!」


 すかさず二人からのフォローが入る。どうしても、僕を買い物に付いて行かせたいらしいな。というか、どうしても自分がついて行きたくないんだな。


「……まぁ、それもそうね。じゃあ、行くわよ、サネヤ!」


 と、そんな感じで、僕とセーラは出発した。


 ここまでは順調だった。

 あとは、セーラの買い物に付き合う過程で交流しつつ、追放への歩みを進めるだけだった。


 だが………………順調なのはここまでだった。






 ※※※※※






「…………あいつら、2人で大丈夫か?」


 セーラとサネくんを見送った後、コガネは少し不安そうな顔をしていた。


「まぁ、なんとかなるんじゃないかな」


「いきなり、サネだけに押し付けるのは早かった気がしなくもないんだよな」


 …………たしかに。

 よく考えたら、セーラとサネくんが2人だけで出かけるのって、めっちゃ久しぶり。というか、バノイアデ以来で初めてな気がする。


 やばいかな?


 いや、でも。


「たぶんコガネが思ってるより、セーラはサネくんのこと気に入っているよ?」


「そうなのか? あいつ、結構文句言ってね?」


 コガネの言う通り、セーラはよくサネくんに「もっとシャキッとしなさい!」とか文句を言っている。


 だけど。


「それだけサネくんのこと気にかけてるってことだから」


 セーラは、宿屋とかで私と2人の時、サネくんのことばっか話してる。セーラは嫌いな人のことは話題にすら上げないタイプだから、少なくともサネくんのことを嫌いってことはないのだ。


 それに。


「セーラが連れてきたんだよ? あのセーラが。いくらスキル【収納】持ってるからって」


「まぁ、あの時はびっくりしたけどよ」


 迷子なのはいつものことだけど、この規模の街での迷子だとやばいかな?

 という話をしているところに、いきなりサネくんを連れたセーラが帰ってきたときは驚いた。


 セーラはわりと人見知りだし、そもそもコガネ以外の男の子と話すことなんてほとんどなかったのに。そのセーラが自分からサネくんを連れてくるとは思わなかった。


 それ以来、セーラはサネくんのことを気にかけている。なぜなら、サネくんがなぜかずっと暗いから。


 セーラは自分が無理やり連れてきたのがダメだったのかな? とか。

 もしかして冒険者なんてやりたくなかったのかな? とか。色々悩んでいた。


 まぁ、あの暗さがサネくんの普通らしいという事に気付くのに、あんまり時間はかからなかったけど。


 でも、それ以降もセーラは何かとサネくんのことを気にしている。嫌いとうより、むしろサネくんのこと好きなのでは?


 だとしたら、それはそれで…………まずい。セーラって素直じゃないからなぁ。どっちにしろ、サネくんが大変なのは確定かもしれない。


「……まぁ、なんだかんだサネくんも馴染んできてるし。どうにかなるよ、たぶん!」


「それもそうだな。サネのおかげで、行かなくてすんだことを素直に喜んどくか」


「そうそう!」


 サネくん、がんば。

 セーラは……なるべく大人しくしとけ。あと、迷子になるな。


 最後に念をおくってから、私はお休みを存分に楽しむ方向へと気持ちを切り替えた。






 ※※※※※






「セーラ⁉ どこ行ったの?」


 僕は、セーラとはぐれていた。なんで?


 僕が目を離したの、一瞬だ。


 いや、たしかにバノイアデでも、出会って早々2回も迷子になったけど。

 2人からも、セーラは迷子になりやすいって聞いてたけど。


 一瞬、ほんの一瞬目を離したくらいで、いなくなることある?


「セーラ、どこー? おーい、セーラ?」


 しばらく、辺りをキョロキョロ見回しながら、声をかけて探すが見つからない。気分は、子供を探すお母さんだ。


「セーラが迷子になるのは当然のことだから、あんま心配しなくても大丈夫」


「とりあえず、集合場所だけ決めときゃいいんだよ」


 出発前に、ヒスイとコガネはそう言っていた。


 けど、僕は知っている。セーラは集合場所にすら来れないということを。

 セーラは自分が迷子になっているという自覚が薄いから、どんどん間違った方向に突き進んでいくのだ。


「どうしよう」


 って、言っても。探すしかないんだけど。

 問題はどうやって探すか、だ。


 ヒスイやコガネとはぐれたなら、このあたりを探すのが正解だ。集合場所に行くのも良いだろう。


 ただ、今探しているのは他でもないセーラだ。


 正攻法ではセーラは見つけられない。

 セーラは絶対にじっとしていないからだ。


 短い付き合いだけど、確信がある。




 その後、近場をウロウロと探し回った。だが。


「セーラ、全然いないじゃん」


 大通りの店は全部見て回ったのにいない。

 はぐれたことに気付いた場所で、じっとしといてくれたら助かるんだけど。


「やっぱり、セーラも歩き回ってるんだろうなぁ」


 早いとこ冒険者ギルドの場所を人に尋ねてくれればいいけど。この間の様子を見る限り、そう簡単には聞かないだろう。さすがに、集合場所が冒険者ギルドだってことは忘れてないよね?


 というか、僕の影が薄すぎて、一緒に出掛けたってこと忘れたりしてないよね?


「………………」


 いやいや、いくらセーラでも。そこまでじゃないはずだ。


 まだ、僕が邪魔だから撒かれた可能性の方が高いはず。


 でも、それは、ちょっと…………辛いな。

 最終目標が追放なんだから別に構わないはずなんだけど。


 というか、追放されたい僕としては、どうするのが正しいんだろうか。

 放置? 探し回る?

 どっちのほうがポイントが低いんだろうか。


 ……はぐれた時点で、たぶんセーラの心証は悪くなっているな。


「………………」


 今は、こんな下らないこと考えてる場合じゃない。とりあえず、セーラを見つけよう。うだうだ考えるのはその後だ。


 普通に探しても、見つかりそうにないので、僕は最近覚えたばかりのスキルを応用してみることにした。


「――スキル【索敵】、起動」

 32部分のあとがきで、投稿するかもしれないと書いてたやつです。

 もう遅いし、蛇足な気がするけど、せっかく書いたので投稿。

 


 ②は今週中には投稿する予定。

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