後日談:真の仲間への貴石~セーラからの贈り物~
セーラ視点の【後日談】
最近、サネヤのことが気になっている。
理由は……いくらでもある。サネヤにプレゼントを貰った。……サネヤの真意を聞いた。サネヤにキスをした。……サネヤが悲しそうな顔をしてた。…………サネヤに助けられた。………………サネヤと出会った。
なにより、ヒスイに何度もサネヤのことでからかわれるから意識してしまうのだ。ヒスイめ。
たぶんだけど、ヒスイはあたしの気持ちに気付きかけている。あえて確認する気も、打ち明ける気もないけど。というか、気付いてないにしては、あたしのことからかい過ぎじゃない?
からかわれる度に冷静に対処しているけど、心臓に悪いからやめてほしい。もしサネヤにバレたらどうしてくれるんだ。
さておき。
あたしは、サネヤに何かプレゼントしようと思っていた。これは、サネヤを好きとかは関係ない………………こともないけど。あくまで、ただのお返しだ。サネヤにプレゼントを貰ったんだから、お返しを渡すのは当然のこと。
あれだけ良いものを貰ったんだから、あたしもサネヤが一番喜ぶものをプレゼントしたい。けど、何をあげていいのか、さっぱり分からなかった。
「…………仕方ない、か」
誠に遺憾だけど、ヒスイに相談しよう。
コガネじゃ頼りないし、サネヤに直接聞くのもなし。あたしも、サネヤを驚かせたいし。
あたしは、ヒスイしかいないタイミングでさりげなく切り出した。
「ね、ねぇ、ヒスイ。ちょっと……相談があるんだけど」
「今日の夜、宿屋で良いんじゃない? コガネなら私が連れ出すし」
まだ何も言ってないのに、ヒスイは真面目な顔で答えてくる。
「……何の話よ?」
「えっ? サネくんを押し倒す場所の相談じゃないの?」
「――なっ。ち、違うに決まってるでしょ!」
「なんだ、違うの? 顔真っ赤だから、てっきりそういう話かと思ったのに。つまんなーい」
「だっ……んんっ」
思わず上げかけた声を無理やり抑える。ここで、動揺したらヒスイの思うつぼだ。すでにニヤニヤしてるヒスイを見ると、もう手遅れな気もするけど。ていうか、別に顔赤くなってないし。
「サネくんのことじゃないなら、何の相談なの?」
「いや、相談は……サネヤのことなんだけど――」
あたしは『サネヤへのプレゼントを買いたい』ということを、とても自然に説明した。だけど、話を聞きながらヒスイはずっとニヤニヤしていた。
…………これ、やっぱり、あたしがサネヤのこと好きだって勘付いてるわよね。なんでバレたのよ?
※※※※※
私はセーラと買い物に来ていた。サネくんへのプレゼントを探すために。
セーラへのプレゼント探しにも付き合ったばかりだし、私、大活躍だ。やはり、私はやればできる子、頼られる子だったみたいだ。わーい。
昨日だって、サネくんに貰った帽子をお披露目するにあたって散々手伝ってあげたし。やれ髪がまとまらないだの、服はこれじゃダメだの言って、すっごく手伝わされた。帽子を見せるだけなのに、準備に時間使いすぎ。
そんなに気合入れたんだから、そのままデートにでも誘うのかと思ったら普通に過ごしただけだし。
ちなみに「似合ってるって言われた! それに、あたしに見惚れたって! 見惚れたって、見惚れたってことよね? ね?」とすごく嬉しそうに報告してくれた。
だから、私にはサネくんへの気持ちを隠してるんだよね? もうちょっと取り繕って?
あと、見惚れたってのは見惚れたってことだと思うよ。他に意味ないでしょ。
てか、サネくん、そんなこと言ったんだ。まぁ、昨日のサネくんは珍しくテンション高かったもんね。魔女の帽子を被ったセーラを絶賛してたし。
ちなみに、サネくんが絶賛する度に、セーラは小躍りしそうになるのを必死に抑えていた。サネくんは帽子を褒めるのに夢中で気付いてなかったけど。傍から見ていた私は笑いを堪えるのが大変だったよ。
たしかに似合っていたけど、あんなに絶賛するなんて。なにがそんなに響いたんだろうか?
「……サネくんって何が好きなんだろうね」
「それが分からないから困ってるのよ」
サネくん、今までずっと自分を殺してたからなぁ。
甘いものが好きなのは分かってるけど。セーラは、形に残るものを渡したいんだろうし。
案外、サネくんもセーラから貰ったものなら、何でも喜ぶ気がするなぁ。というか、たぶん私からでもコガネからでも喜ぶんだろうな。…………私も今度サネくんに甘いもの奢ろっと。
とりあえず。
「アドバイスはしてあげるから、セーラがビビッときた物をあげなよ。サネくんもそうしてたし」
「それもそうね。…………ん? サネヤもってどういうこと?」
おっと。余計なことを言ってしまった。まだ、サネくんとショッピングしたことはセーラに伝えていないんだ。今、教えたらめんどくさいことになるから黙っとこ。
「なんでもないよー」
てけとーに誤魔化したら、セーラはジトーっとした目で睨んでくる。
めんどくさいな。サネくんなら、これで納得してくれるのに。
「まぁまぁ、細かいことは気にしないで、プレゼント選ぼうよ」
「…………そうね」
セーラはとりあえず追及するのをやめてくれた。まだ、納得してなさそうだったけど。
心配しなくても、然るべきタイミングで教えて、からかってあげるよ。
その後、あーでもない、こーでもないと言いながら、買い物を続ける。ほんと、サネくんって何が好きなんだろう。
って、そうだ。思い出した。
「セーラ、サネくんに急に優しくし過ぎ。ちょっと不審がってたよ?」
「ど、どういうこと? てか、あんたが優しくしろって言ったんじゃない!」
「だーかーら、極端なんだって。急に態度が変わったら、そりゃ不審に思うでしょ」
「………………あたしって、普段そんなに酷いの?」
セーラが消え入りそうな声で聞いてくる。自覚なかったの?
「セーラって、サネくんに基本文句しか言ってないよ? 言い方もキツイし」
「うぐっ。それは、その…………」
「もうちょっと素直になりなよ」
「…………分かってるわよ」
色んな意味でアドバイスをしながら買い物は続く。続くったら続く。どんどん続く。続いていく。いつ終わるの? 朝早くから始めたのに、もうお昼だよ?
やっぱり、セーラの買い物に付き合うのめんどくさーい!
結局、サネくんへのプレゼント探しは日が暮れる直前まで続いた。長いよ。疲れ切った私とは対照的に、買ったものを大事に抱えたセーラは大変ご満悦。
良いプレゼントだとは思うけど…………サネくん、困りそうなんだよねぇ。
仕方ない。サネくんのためにも、もうちょっとだけセーラを素直にさせねば。
私だって、意味もなくセーラをからかっていたわけじゃない。セーラを自分の気持ちと向き合わせるために、あえてからかっていたのだ。
セーラが最初から素直だったら、サネくんはあんなに思い詰めなかったかもしれないし。まぁ、目的の半分くらいはセーラの反応を面白がることだったけど。…………半分よりは多いかもしれないな。
ともあれ。
最後に一つアドバイス。もう少しだけ、背中を押しておこう。
「セーラ。サネくんにプレゼント渡す時、ちゃんと素直でいなよ?」
そうじゃないと、セーラは照れ隠しですーぐ酷いことを言うに決まってる。
プレゼント渡して、人を凹ませる。ふつうあり得ないけど、セーラならやりかねない。
「……え? ……えっと……」
「返事は?」
「……分かったわよ」
「? よろしい。じゃ、頑張りなよ」
この時の私は「なんか思ったより神妙な顔してるな?」と思ったけど、別に深くは気にしなかった。
自分で思っていたより、セーラの背中を押してしまっていたとは露知らず。
※※※※※
「………………」
「………………」
これ、何て声かければいいんだろう。
「話があるの」そう言って、セーラが僕らの部屋を訪ねてきたのが数分前。
セーラは部屋に入ってくるなり、壁の方を向いて黙り込んでいる。
ちなみに、部屋にいたコガネは、ヒスイに連れられてどこかに行った。つまり、僕とセーラの二人きり。
そのセーラが黙り込んでしまったので、どうしていいか分からず困っているのが現状だ。
そんなに話しにくい内容なんだろうか。もしかして追放宣告?
などと、あり得ないことを考えていると、ようやくセーラがこっちを向いてくれた。
「はい、これ!」
セーラが押し付けるように渡してきたのは、綺麗に包装された小箱。
「……えっと、これは?」
「プレゼントに決まってるでしょ! お返しよ、お返し!」
いきなり渡されても分かんないよ。ていうか、お返しなんてくれなくても良かったのに。うれしいけど。すごく嬉しいけど。
「いいから早く開けて」
急かされるままに、でも丁寧に箱を開けると、入っていたのは。
――藍色の魔石が付いたペンダント。
すごく綺麗で、一目見ていいものだと分かる。
「…………ありがとう。すごく嬉しいよ」
「そ、そう。……良かったわ」
ただ、どう見ても高級品だ。ペンダント自体もそうだけど、このサイズの魔石はかなり高い。どうしよう、僕があげた『魔女の帽子』そんなに高くないんだけど。
そんな風に、僕が小市民的なことを考えていると、セーラが更なる爆弾を投下した。
「それ、肌身離さず持ってなさいよ」
言われなくても、僕がセーラ達から貰ったものを手放すわけがない。むしろ、捨てろって言われても捨てない。だから、肌身離さず持つのは全く構わない、のだが。
「当然だけど、スキル【殲滅】起動する時もよ?」
「え゛っ⁉」
そんなことしたら、壊しちゃうじゃん! スキル【殲滅】は魔石も破壊するんだって。僕、ちゃんと説明したよね⁉
とんでもない要求に僕が口を挟む間もなく、セーラはさらに続ける。
「壊す度に、あたしが新しいの買うから。あたしを破産させないためにも、スキル【殲滅】を早く制御できるようになるのよ。分かった?」
そう言って、いたずらっぽく笑うセーラはとても魅力的で。でも、言ってることは、わりと凶悪だ。セーラなりの励ましなんだろうけど。
「…………分かった。頑張るよ」
僕は、大人しく頷いた。どうせセーラは考えを変えないだろうし。それに、単純にセーラの気持ちがとても嬉しかったのだ。ただ、責任重大だなぁ。
その後、セーラとお互いのプレゼントの感想やらの話で盛り上がった。
ちなみに、ダメもとで「スキル【殲滅】を起動する時は外したいなぁ」って言ってみたけど、やっぱりダメだった。
そして、話がひと段落したところで。セーラが切り出した。
「……あと、そうね。これも言っとくべきね」
そう言って、僕を見つめるセーラはとても真剣で。僕も、思わず背筋を伸ばす。
「一度しか言わないから、よく聞きなさない」
決然とした様子で僕を見据える藍色の瞳に、何度目か分からないけど見惚れた。
「サネヤ。あたしは、あんたのことが――」
※※※※※
最近、セーラがうっとおしい。というか、幸せオーラの密度が数段増しやがった。
理由は…………もちろん、言うまでもない。というか、言うだけ野暮だろう。
私が言った『素直で』ってのは、そーゆー意味じゃなかったんだけどなぁ。まぁ、結果オーライかな。
突然の展開にコガネは驚いていた。実際、私も驚いたし。まさか、セーラがあそこまで素直になるとは。
まぁ、私もコガネもどうこう言うつもりはない。むしろ、諸手を挙げてお祝いする予定だ。仮に、私たちが今更どうこう言ったところで、もう遅いしね。
これからの冒険も楽しくなりそうだ。
…………もちろん、新たな角度からセーラをからかうのも楽しみで仕方ない☆
ヒスイで始めて、ヒスイで締める。そんな【後日談】でした。
お読みいただき、本当にありがとうございます。
本編と後日談を合わせて、これで完結となります。
よければ、ブックマーク・感想・評価等をしてくれると嬉しいなぁと思います。
というか、1話から最後まで全部読んでくれた人がいると嬉しい。
(キャラ紹介というか設定? 的なやつを投稿するかもしれません)




