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第10話:追放への歩み~ヒスイに同行拒否られる~

「ごめん、サネくん。今日は、私一人で行くから休んでていいよ」


 今日はヒスイと買い出しに行く予定だった……のだが。


 僕たちパーティは、街での滞在中などでは2人一組で行動することが多い。というよりも、誰かと荷物持ちの僕が一緒に行動することが多いのだ。あと、セーラを一人にしたら高確率で迷子になるので、誰かがついていくようにしている。


 そんなわけで、今日はヒスイの買い出しについていく予定だったのだ。


 ヒスイはセーラと違って、朝早すぎない時間にやってきた。ちゃんと準備していたので、いざ出発しようと思ったら、着いてくるなと言われてしまった。


 その後も、ヒスイは色々と言っていたが、ショックでよく聞こえなかった。どうやら気付かないうちにヒスイも僕に不満が溜まってたようだ。


 運命の日は近いのかもしれない。ただ、荷物持ちという僕の本業すら断られるとは思わなかった。計画は順調なはずなのに気分はガンガンに凹んでいく。


 …………追放って心に来るものがあるな。僕、追放された後『ざまぁ展開』出来るのかな……。






 ※※※※※






 ヒスイについてくるなと言われたので、今日の予定がなくなってしまった。セーラもコガネもどこかに行っていたので、荷物持ちとしての役割は果せそうにない。………………セーラが一人で出かけたんだとしたら心配だな。



 ヒスイは、凄腕の回復術師だ。ひ弱で役立たずの僕が怪我をしたときに直してくれるのがヒスイだ。それだけでなく、貧弱で足手まといな僕が怪我をしないように防御結界も張ってくれる。


 わりと、パーティの要的な存在だ。性格的にも、自由なコガネと気が強いセーラをなだめる役割として重要だ。


 戦闘力は僕と同じでほとんどない。だから、僕としてはシンパシーを感じていたのだが。荷物持ちを断られてしまった。………………ショックだ。


 このまま凹んでいても仕方がないので、スキル【殲滅】の訓練に行くことにした。


 僕は、この半年の間、セーラたちの前ではスキル【殲滅】を一度も使っていない。だが、セーラたちが見ていないところでは、何度も起動していた。


 基本的にスキルは使えば使うほど強くなるので、隙を見て練習していたのだ。まぁ、スキル起動後は僕に裁量がないから、あんまり強くなった気がしないけど。裁量がないから、スキル【殲滅】は使って楽しいものでもない。


 だけど、ここでさぼってはいけない。僕のモットーは初志貫徹だ。いずれ来る復讐のときに備えてスキル【殲滅】を可能な限り磨いておかなければ。


 スキル【殲滅】を起動するところを人に見られるのは都合が悪いので、僕は一人で森にやってきた。


 それも、普段はパーティでも入らないような奥地まで侵入した。転生したときは森で迷子になっていたが、今ではだいぶ森歩きにも慣れている。


 スキル【索敵】をフル活用して、余計な敵との接触は回避。僕が狙っているのは、大物だ。


 ゴブリンのような雑魚モンスターを悉くスルーし、やっとお目当ての魔物を見つけた。


 大型の熊のようなモンスターだ。街で討伐依頼を確認していたが、報酬が割に合わなかったので受注はしなかった。


 都合の良いことに、他の魔物が近くにいる様子もない。僕らのパーティ4人(戦いに貢献するのは僕以外の3人)で、戦ってギリギリ勝てるような強さだと聞いている。


 だが、僕に怖いものはない。いっちょ、やりますか。



「――スキル【殲滅】、起動」






 ※※※※※






 スキル【殲滅】による自動行動が終了した後、僕の目の前にはぐちゃぐちゃになった魔物の死骸が横たわっていた。正確には、魔物の死骸らしきミンチがぶちまけられていた。


 …………相変わらずグロい。


 スキル【殲滅】さん、歯止めが利かな過ぎる。魔物の肉体は死んだ後もしばらく魔力の残滓のようなものがあるらしい。スキル【殲滅】はその魔力すら感知してミンチにするのだ。


 魔力反応を追尾するという事で、試しに魔石を置いといてみたら、しっかりと魔石まで破壊していた。結構、高かったんだけどなぁ。


 …………。


「まぁ、これなら大丈夫だな!」


 強いことは確かなのだ! いつ裏切られて闇討ちを仕掛けられても、スキルを起動することが出来れば相討ちには持っていける。


 追放への歩みは順調だし、追放されれば理想的な『ざまぁ展開』が実現できるはずだ。


 スキル【殲滅】で倒した魔物は基本的にミンチなので素材の回収とかはできない。そのせいで、討伐証明も出来なくて報酬ももらえない。


 だが、僕は魔物の解体は得意だったりする。パーティで魔物を倒したときの解体は僕が受け持っているからだ。荷物持ちの足手まといは、雑用で輝くのだ。まぁ、コガネの方が断然力があるので手伝ってもらうことが多いけど。


 今日はもうミンチなので解体の必要はない。回収する素材もないしスキル【殲滅】の起動は疲れるので、帰ろうとしたとき奥の茂みでガサっと音がした。


「!」


 なんだ、魔物か? だが、スキル【索敵】に反応はない。気のせい……かな? 

 それとも【索敵】に反応しないほど弱い魔物なのか?


 一応、僕は自分のスキル【索敵】に自信を持っている。というか、ビビりで雑魚な僕が生き残るためには、敵を漏らさず見つけるしかないのだ。だから、スキル【索敵】は使い込んだ。


 そのおかげで、僕のスキル【索敵】はかなり強力なスキルに成長していた。


 高性能になったことは誇るべきなのだが、コガネとかの野生の勘で十分な気もする。つまり、僕はパーティにいなくてもそんなに困らないのだ。


 だが、自信はあったのだ。…………この間、セーラに破られたけど。


 後ろから目を隠されて「だーれだ?」とやられたときは、心臓が止まるかと思った。カップルがやっている微笑ましいものとは全く違った。あれがセーラでなく魔物だったら、僕は死んでいたのだ。


「………………」


 音を立てた茂みの方をしばらく睨んだけど、何かが出てくる様子はない。

 …………気のせいってことにしよう。


 でも、なんか怖いし魔物の死体はグロイし、ささっと帰ろう。






 ※※※※※






 街に帰ると門のところで、なぜかヒスイがいた。


「ちょっと! その傷どうしたの? 休んでって言ったのに、何してたの?」


 言われて気付いたけど、僕の体は血まみれだった。

 ほとんどは魔物の血だが、左腕は大きく切り裂かれていた。スキル【殲滅】の自動行動も万能ではないのだ。


 明らかに格上な魔物でも、魔物の大群でも殲滅はしてくれるが、僕がダメージを負うこともある。というよりも、後に回復することを考慮に入れて動いているとしか思えないような行動をとることもある。


 今回の魔物は、大物だったので実力差がありすぎたのかもしれない。


 いつもなら街に帰ってくる前に、血を洗い流して傷も隠しているのだが、今日は急いでいたから気が回らなかった。茂みの音にビビりすぎたのかもしれない。


「ほら、さっさと腕出して!」


「いや、迷惑だろうし良いよ」


 このくらいの傷ならポーションでどうにか治るのだ。その点は異世界に感謝だ。大きめの傷であってもポーションを使うだけで、すぐに塞ぐことが出来る。さすがに回復魔法より効果は薄いけど、わざわざヒスイの手を煩わせることもない。


「いいから早く腕出して。思ったより荷物が多くなったから、サネくんに持って欲しいの」


「……ああ。そういうことなら、お言葉に甘えてお願いするよ」


 そうして「全くこんな怪我して! なにしてたのよ」などと言うヒスイに傷を治してもらった。


「ありがとう。すっかり治ったよ」


「当たり前でしょ。……色々聞きたいことはあるけど、後で良いわ。せっかく合流したんだから、このまま買い物付き合ってよね」


 回復魔法は傷だけでなく疲労にも効果がある。だから、怪我をした直後であっても、平気で動けるようになる。さすがに精神的な疲労までは治せないけど、そこは気合でカバーだ。


 その後、僕はきっちりとヒスイの荷物運びをさせて頂いた。これが、今の僕の本職だからね。


 今日は色々あって疲れたけど、確実に追放への歩みを進めたな。

 

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