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『碧の章』第5話:初めての敵意

 雷の矢印が一瞬光を増して消える。合わせて妖精がこちらに一度振り返り、姿を消した。前には、部屋への入り口が見える。あの中に目的であるアグロギアがありそうだ。


 恐る恐る中を覗くと、利緒の感覚では体育館程度の広さがある大部屋だった。バスケットコート2面よりは狭いと利緒は推測する。

 中には、崩れ落ちた机や椅子、棚の残骸が散らばっている。


「いくつか石櫃もありますし、アグロギアありそうですね。」


 クーネアもひょっこりと顔だけで部屋を覗き込む。クーネアがそのまま部屋の中へと入っていこうとしたため、利緒はその肩を掴んだ。


「どうかしましたか?」


 不思議そうに利緒を見るクーネア。


 利緒は、この遺跡で手強いガーディアンとの戦闘が起こる可能性がある事を知っている。今までの道中では、特に敵に遭遇する事を初めての、アクシデントが無かったのだが、そのせいでどこか慎重さに欠けているように見えた。魔法による案内が終わったからこそ、注意が必要ではないか。


「遺跡では何が起こるか分からない。目的が近いからこそ慎重に行こう。」

「っと、そうですね。すみません。落ち着いていきましょう。」


 敵を見つけたらまず魔法ですよ、と段取りを決め、2人は周囲を警戒しながら、部屋の中に踏み込んでいった。



 そもそも、利緒はアグロギアについて名前のみでその形を知らない。が、そんなことを今更聞くこともできず、声をかけられないままそれっぽいものを探していた。クーネアは探索に夢中になっており、利緒の挙動がどこか怪しいことに気づかなかった。


 いい事なのか、悪い事なのか、利緒の方ではそれらしきものを見つけることができなかった。


 入り口から調べ初めて、半分を探し終えたあたり、突如として、異音が鳴り響いた。

 重いものを落としたような、ズンという響き。それが段々と近づいていた。


 方向はこれから探索に手をつけようという部屋の奥。

 ガァンと何かが強くぶつかる音の後、壁がガラガラと崩れ落ちた。暗い壁の奥から現れたのは、岩でできた化け物だった。


「あれ、以前この遺跡の探索隊を追い詰めたってゴーレム!?でも、さっきまで魔力反応はなかったですよ!?」


 クーネアは、慌てて杖を構える。クーネアには心当たりがあったように、利緒もその姿を見た記憶がある。


 鎧兜を模した、岩で作られた巨体。

 兜の奥から覗く、碧の1つ目。

 腕に装備された黒い金属の盾。


【《巨壁》フェスタルガンド】


 中〜高コスト帯で中攻撃力、高生命力に加え、スキルカードに耐性のある準切札級の碧のユニットである。



「「鋼砕く狂鬼の纏!」」


 利緒とクーネアは、自身を強化する魔法を唱える。


「リオさん、資料によればあのゴーレムは魔法が効きません!気をつけてください!」

「知ってた!厄介だ!」


 クーネアのアドバイスに、利緒の知るカード効果が再現されている事がわかった。

 碧が得意とする補助魔法というデメリットがあるが、低級ユニットでは高生命力に敵わず、むしろ敵の除去を受けないメリットが大きくなる。

 低級ユニットによる物量か、切り札級のカードを消費させるか、そんな二択が強要できるカードとして高く評価されていた。


(とはいえ、ウィニーで倒せる感じしないんだけどなぁ!)


 カードでは機械的に処理される生命力の減少だが、目の前の巨体は、数を集めただけで倒せるとは思えなかった。

 強化に任せて突っ込もうとしたが、振り下ろされた拳と、腕に付随する盾の圧力を一度体感しただけで利緒は戦意を喪失しかけた。少なくとも相打ち覚悟の特攻は無理だと悟った。

 だからといって一方的に打ち倒せるビジョンも浮かばない。


(魔法さえ通るなら、どうにかなるのに!)


 接敵せずに高火力を出す下地はあるが、敵の耐性がそれを許さない。クーネアも魔法を主体とするためか、ある程度距離をとって攻めあぐねているようだった。

 幸い《巨壁》の動きはそれほど機敏ではなく、安定してその攻撃を避けることができた。巨大な質量が振るわれるたびに、近づこうという意思が刈り取られていくが、距離さえあれば余裕があった。


「クーネア!本当に魔法が効かないか試して見る!」


 こちらにダメージがないとしても、このままでは消耗する一方である。たとえ効かないのだとしても、それを確かめるというだけでも、せめて進展が欲しかった。


 利緒が心に浮かべるのは、碧の最強火力「刻奪う深淵の歪」恐らくブラックホール的な魔法だろうと、利緒は考えている。


 が、それは今までと違い、使える感覚が一切なかった。


(……っ!使えない!?なんで……。いや、そうじゃない、あいつの耐性を確認するのが先だ!)


 想定が崩れたことに戸惑うが、目的は戦況を動かすべく、情報を集めることだと思考を切り替え、他の碧の攻撃スキルを思い起こしていく。


 その中で1つ。ギアが噛み合うような感覚。

 よりによってこれか、と利緒は歯痒んだ。しかし、それ以外に選択肢はなく、仕方なしに魔法が紡がれた。


【碧の魔法「影貫く蛇の弓弩」】


 それは単体ユニットの生命力を最小単位削る効果を持つ、最低級の魔法であった。

 最低級とは言っても、利緒がかつて見た弓道部のそれよりよっぽど破壊力がありそうではあった。しかし《巨壁》へ打ち込まれた魔力の矢は黒い盾に弾かれてそのまま消えてしまった。

稚拙ではありますが、ブックマークしてくださった方がいました。

ありがとうございます。


評価指摘感想等々頂けると励みになります。 

また、誤字脱字などありましたら宜しくお願いします。


2017/08/06「利緒」の名前が「莉緒」になっていた部分の修正。

2017/09/04 レイアウトの調整

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